アプリ業界のM&A最新トレンドと事例紹介【2024年更新】

アプリ(開発)業界は、さまざまな企業がアプリ開発に取り組んでいるため、競争が激しい業界です。

そうした状況にあるアプリ業界においては、競争力を高めるために自分の会社をスピーディに成長させることを目的に、M&A(Mergers and Acquisitions)が積極的に活用されています。

本記事では、アプリ業界のM&A最新トレンドと事例について詳しく紹介していきます。

本記事を読むことで、アプリ業界において、どのような理由でM&Aが進んでいるのかを実際の最新事例を通じて理解できるようになるので、是非参考にしてください。

日本のアプリ開発業界が抱える課題

日本のアプリ開発業界は、技術進化の速度、プラットフォームの多様化、ユーザー体験の重要性、セキュリティリスク、グローバル市場への適応、開発プロセスの効率化、サブスクリプション経済への対応など、多岐にわたる課題に直面しています。

1. 技術進化とスキルギャップ

アプリ開発技術は急速に進化しており、新しいプログラミング言語やフレームワークが続々と登場しています。しかし、これらの新技術への迅速な対応とスキルの習得が間に合わず、技術革新の波に乗り遅れる企業や開発者が出てきています。

2. プラットフォームの多様化と対応の難しさ

スマートフォンのiOS/Androidだけでなく、ウェアラブルデバイス、スマートホームデバイス、さらには車載システムまで、アプリを展開するプラットフォームが多様化しています。これらの異なるプラットフォームへの対応を行うことは、開発リソースや専門知識の面で大きな課題となっています。

3. ユーザー体験(UX/UI)の重要性の高まり

ユーザー体験の質がアプリの成功を左右するようになり、単に機能的に優れたアプリを開発するだけでは不十分になっています。デザイン思考やユーザーセントリックなアプローチの欠如は、アプリの市場での競争力を低下させます。

4. セキュリティリスクとプライバシー保護の課題

サイバーセキュリティの脅威は増加の一途をたどっており、アプリ開発ではユーザーデータの保護やプライバシー対策が重要な課題です。特に、個人情報を取り扱うアプリでは、セキュリティ対策の不備がビジネスリスクに直結します。

5. グローバル市場への適応

国内市場だけでなく、グローバル市場への展開を目指す場合、文化的な違いや言語の多様性、各国の法規制への対応が求められます。国際競争力を持つアプリを開発するためには、多文化への理解と柔軟な対応戦略が必要です。

6. 開発プロセスの効率化とアジャイル開発の実践

開発サイクルの短縮と効率化は、迅速に市場のニーズに対応するために重要です。しかし、アジャイル開発メソッドやDevOpsの実践には、組織文化の変革や新たなツールへの適応が伴い、これが課題となることがあります。

7. サブスクリプション経済への対応

サブスクリプションモデルが主流となる中、一度の購入ではなく継続的なサービス提供と収益化モデルへのシフトが求められています。これにより、顧客維持とエンゲージメント向上のための戦略がより重要になっています。

これらの課題に対処するためには、技術革新への迅速な対応、ユーザー中心の開発アプローチ、セキュリティとプライバシー保護への徹底、多文化対応の強化、効率的な開発プロセスの確立、ビジネスモデルの革新など、多方面での取り組みが必要です。

アプリ開発業界におけるM&Aの役立ち

アプリ開発業界におけるM&Aの役立ち

アプリ開発業界におけるM&A(合併・買収)は、企業にとって多くの利点をもたらし、様々な課題を解決するための有効な手段となり得ます。以下では、アプリ開発業界でのM&Aがどのように役立つかを示すポイントを紹介します。

1. 技術力とイノベーションの加速

M&Aにより、先進的な技術や特許を持つ企業を買収することで、自社の技術力を短期間で大幅に向上させることが可能です。また、新しいアイデアやイノベーションの源泉を社内に取り込むことで、製品開発の加速が見込めます。

2. 市場シェアの拡大と新市場への進出

他社を買収することによって、その企業が持つ既存の顧客基盤や市場シェアを獲得できます。また、異なる地域やセグメントに特化した企業を買収することで、新しい市場への進出が容易になります。

3. 人材の獲得とチーム能力の向上

優秀な開発者、デザイナー、プロジェクトマネージャーなど、高い専門性を持つ人材を含む企業を買収することで、即戦力となる人材を確保できます。また、異なる背景を持つチーム間の知識交流により、全体としての開発能力や創造性が向上します。

4. セキュリティとプライバシー対策の強化

セキュリティ対策やプライバシー保護に関して優れた技術やノウハウを持つ企業を買収することで、自社の製品やサービスのセキュリティレベルを向上させることができます。これは顧客の信頼を獲得し、ビジネスの持続可能性を高める上で非常に重要です。

5. 経営資源の最適化とコスト削減

M&Aにより、同業他社やサプライチェーンの一部を統合することで、経営資源の最適化やコスト削減を図ることが可能です。規模の経済を実現することで、より競争力のある価格設定や利益率の向上が期待できます。

6. 研究開発(R&D)への投資と多様性の促進

M&Aを通じて得た資金やリソースを新たな研究開発に投資し、長期的な成長基盤を築くことができます。また、異なる文化や視点を持つ企業の統合により、多様性が促進され、より幅広い顧客ニーズに応える製品開発が可能になります。

7. グローバル競争力の強化

海外のアプリ開発企業を買収することで、国際市場でのプレゼンスを高め、グローバルな競争力を強化できます。また、異なる市場でのビジネス運営ノウハウを獲得し、世界各地の顧客ニーズに対応できる体制を整えることが可能です。

M&Aはアプリ開発業界において、技術革新、市場拡大、人材獲得、セキュリティ強化など、多方面での成長と課題解決の手段となり得ます。

アプリ開発業界における最近のM&A事例

アプリ開発業界における最近のM&A事例

ここからは、アプリ開発業界における最近のM&A事例を紹介していきましょう。

アプリ開発業界においては、以下のようなM&Aが近年では行われています。

  1. ライブドアによるWeb3グルメアプリ事業の取得
  2. ウエルシアホールディングスによるエクスチェンジの完全子会社化
  3. アルゴグラフィックスによるワイドソフトデザインの子会社化
  4. ジェイックによるエフィシエントの子会社化
  5. フルキャストホールディングスによる求人検索アプリ会社を傘下に持つAppXの買収
  6. CASAによるGoldKeyの子会社化

以下では、アプリ開発業界におけるそれぞれのM&A事例について、各社のM&Aの狙いを解説していきます。

ライブドアによるWEB3グルメアプリ事業の取得

ミンカブ・ジ・インフォノイドの子会社であるライブドアは、2023年2月14日にGINKANが運営するWeb3グルメアプリ事業「シンクロライフ」を譲り受けると発表しました。この取得は、ライブドアがグルメ情報分野でのサービス展開を強化し、メディア事業のWeb3化戦略を加速させる狙いがあります。

「シンクロライフ」は、ユーザーがレビュー投稿を通じて情報提供を行うことがデジタル資産化される、Eat to earn型のプラットフォームです。このビジネスモデルは、加盟店に対してエンドユーザー向けアプリ連動型の顧客分析ツール(CRM)を提供し、顧客のロイヤルティ化、PR、来店促進等のDX化を支援します。これは、現在のグルメサイトが採用するビジネスモデルとは一線を画し、新たな顧客体験を提供することが特徴です。

ライブドアは「シンクロライフ」の事業を取り込むことにより、グルメ情報分野においてメディアサービスの拡充を図ります。さらに、「ライブドアニュース」の拡散力や「ライブドアブログ」を含む他のメディアとの連携を通じて、「シンクロライフ」のユーザー増加を目指します。これにより、ミンカブグループは、トークンエコノミーを活用した新たな顧客体験の提供やユーザーロイヤルティの向上という、グループ全体のWeb3化戦略に沿った世界観を実現していくことになります。

この取引は、ミンカブ・ジ・インフォノイドとその子会社ライブドアが、メディア事業における新たな価値提供とサービスの多様化を図る戦略の一環です。Web3技術の利用を通じて、ユーザーと加盟店双方にとってメリットのあるサービスの提供を目指し、メディア業界におけるイノベーションを加速させることを期待しています。この取得により、「シンクロライフ」のユニークなビジネスモデルとライブドアのメディア力が融合し、グルメ情報分野における新しい顧客体験の創出とメディア事業の成長が促進されることが予測されます。

出典: https://global-assets.irdirect.jp/pdf/tdnet/batch/140120230213509863.pdf

ウエルシアホールディングスによるエクスチェンジの完全子会社化

ウエルシアホールディングスは、2024年1月17日にソフトウェアの受託開発を行うエクスチェンジの全株式を取得し、同社を完全子会社化すると発表しました。この取得により、ウエルシアグループは情報システムの整備を強化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる体制を構築することを目指します。取得は3月15日に完了し、取得価格は非公開です。

エクスチェンジは、2003年設立以来、情報システムの設計・開発・運用、ソフトウェアの受託開発を主力事業としています。特にWeb系サーバーシステムやアプリケーション開発において高い技術力と豊富な実績を持ち、保守・運用も含めたサービスを提供しています。エクスチェンジの2023年9月期の売上高は15億7300万円、営業利益は1億3000万円でした。

ウエルシアホールディングスは、ドラッグストア業界において「地域No.1の健康ステーション」としての位置づけを目指し、調剤、カウンセリング、深夜営業、及び介護を軸にした独自のビジネスモデルを展開しています。同グループは関東を中心に北海道から九州・沖縄まで国内2,800店舗を運営し、少子高齢化が進む中で、生活必需品の供給や健康寿命延伸に向けたサービスを提供する責任を果たしています。

この子会社化により、ウエルシアグループはエクスチェンジの技術力をグループ内に取り込み、デジタル技術とデータの活用を通じて顧客に新たな価値を提案し、持続可能な企業価値の向上を目指します。ウエルシアモデルの進化に寄与し、グループ全体のメディア事業や顧客サービスのWeb3化戦略の加速が期待されます。この動きは、業界内での競争が激化する中で、ITインフラやDX推進能力の強化を通じて、グループの競争力を高め、新たな成長領域への拡大を促進する戦略的な一歩として位置づけられます。

出典: https://data.swcms.net/file/welcia/ja/news/auto_20240117516105/pdfFile.pdf

アルゴグラフィックスによるワイドソフトデザインの子会社化

アルゴグラフィックスは2023年12月22日に、ワイドソフトデザインの株式を取得し、これを完全子会社化することを発表しました。この取引により、アルゴグラフィックスは2024年1月15日にワイドソフトデザインの代表取締役らから300株、すなわち議決権所有割合100%の株式を取得します。取得価額については非開示とされています。

ワイドソフトデザインは、オリジナルの3Dエンジン「VENUS」を基盤としたアプリケーション開発や、マルチデバイス対応のゲームエンジン「UnrealEngine」を使用したCGコンテンツ制作など、VRを中心とした多岐にわたる可視化ソリューションを提供しています。同社は、23年6月期に売上高1億9843万円、営業利益740万円を記録していました。

アルゴグラフィックスは、ワイドソフトデザインのVR関連ソリューションとそのスキル・ノウハウを活用することで、製造業での高度なシミュレーションへの対応を図ることを目的としています。この子会社化は、アルゴグラフィックスが製造業のお客様に提供するサービスの質を向上させるだけでなく、グループ全体のシナジーを高め、ビジネスの拡大を加速させることを期待されています。

この動きは、テクノロジーを駆使した新しいビジネス機会の探求というアルゴグラフィックスの意思を示しており、VR技術を活用した製造業のニーズに対応するための重要なステップとなります。ワイドソフトデザインの持つ技術力とアルゴグラフィックスの事業展開能力の組み合わせにより、両社は今後、より革新的なソリューションの提供を目指していくことでしょう。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/7595/tdnet/2375481/00.pdf

ジェイックによるエフィシエントの子会社化

ジェイックは2023年12月19日、AIやIoT技術を用いたシステム開発やDX推進に特化したエフィシエントの株式を100%取得し、これを子会社化することを発表しました。この子会社化は、2024年2月1日に実施され、取得する140株によって議決権所有割合が100%となります。取得価額は1億円です。

エフィシエントは、自社オリジナルのAI解析技術やビッグデータ活用によるプロダクト開発、IoTやAI技術を活用した受託システム開発、及びSES事業を展開している企業です。特に、AIを利用して動画の音声データと表情データを解析し、ユーザーの話し方や表情を評価する技術に関する特許を持っており、この技術を基にジェイックと共同開発したAI面接練習アプリ「steach」や自己PRや志望動機の文章をAIが作成するサービス「就活AI」など、新たな就職・採用支援ツールを提供しています。

ジェイックは、「教育融合型人材紹介事業」を通じて、主に既卒者や大学中退者などを対象にした就職支援を行い、これまでに約30,000名の面接会参加者と約6,000社の就職・採用支援を実施してきました。ジェイックのミッションは、「企業のホームドクター、人材のメンターとなり、人と組織の限りない可能性に貢献し続ける」であり、今回のエフィシエントの子会社化によって、テクノロジーの進化に対応しながら、効率性を重視する求職者にも選ばれる支援サービスの提供を目指します。

この子会社化により期待されるシナジーは、ジェイックの提供する教育融合型人材紹介事業とエフィシエントの先端技術の融合にあります。AIの活用によるサービス品質の向上やITエンジニアの就職・採用支援サービスの強化、労働集約的なビジネスモデルが中心のジェイックグループにおけるDX推進、収益性の向上、業務効率化など、多角的な面での成長が期待されています。ジェイックとエフィシエントの強力なパートナーシップと革新的な取り組みにより、より幅広いニーズに応える就職・採用支援サービスの提供が加速されることでしょう。

出典: https://www.jaic-g.com/news/news/news-2628/

フルキャストホールディングスによる求人検索アプリ会社を傘下に持つAppXの買収

フルキャストホールディングスは2023年10月23日、求人検索アプリを開発・運営するインプリを傘下に持つAppXの全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。この買収は、日本の経済回復、人手不足の強まり、そして少子高齢化による労働力人口の減少など、社会環境の変化と労働市場の需要の高まりに対応する戦略的な動きとして位置づけられます。

AppXは、その子会社であるインプリを通じ、ハローワークなどの求人情報を提供するアプリの開発・運営により、求職者と求人掲載企業の最適なマッチングを支援してきました。特にインプリの高い集客力と送客力は、求職者の仕事探しや企業の人材確保において不可欠な役割を果たしています。

買収の具体的な条件として、フルキャストHDは2023年10月27日に、AppXの全株式3,800株と新株予約権422個を取得しました。取得価額は25億5,200万円、加えてアドバイザリー費用等の概算額が1億2,300万円です。この取引により、フルキャストHDの議決権所有割合は0%から100%へと変化し、AppXはフルキャストHDの完全子会社となります。

この買収によって、フルキャストHDとインプリの間での相互送客が可能となり、これが両社のシナジー効果の創出につながると見込まれています。これにより、顧客満足度の向上や顧客基盤の拡大が図れるほか、フルキャストHD登録スタッフのキャリアアップにも寄与します。また、正社員などの雇用形態を求める人への最適な機会の創出や、既存事業の採用強化にも影響を及ぼすと予想されています。

この戦略的な買収により、フルキャストHDは、労働市場のニーズに応え、新たな成長機会を追求するとともに、AppXおよびインプリの技術力と市場知識を活用して、さらなる事業拡大とサービスの充実を目指します。

出典: https://www.fullcastholdings.co.jp/assets/upload/2023/10/timelydisclosure_20231023.pdf

CASAによるGoldKeyの子会社化

2023年5月31日、Casaは名古屋市に拠点を置くマンション管理アプリの企画開発を手がけるGoldKeyの株式を追加取得し、同社を子会社化すると発表しました。これにより、Casaの株式保有比率は14.3%から50.5%に増加します。取得日は6月6日で、取得価額は非開示です。Casaは2022年9月に初めてGoldKeyの株式を取得し、Casaの入居者対応サービスとGoldKeyのIT技術力およびリソースを共有することで、少人数の不動産管理会社や自主管理の家主でも入居者対応時間を削減できるサービスやアプリの共同開発を行ってきました。

GoldKeyはオリジナルの3Dエンジン「VENUS」をベースとしたアプリケーションの開発や、マルチデバイス対応のゲームエンジン「UnrealEngine」を利用したCGコンテンツの制作など、VRを中心とした様々な可視化ソリューションを提供しています。CasaはGoldKeyの株式を追加取得することで、これまでの取り組みをさらに深化・加速させる予定です。

この戦略的な動きは、両社の技術やサービスをさらに組み合わせることで、新たな価値を創出しビジネスの拡大を目指します。CasaとGoldKeyの協力により、不動産管理業界ではサービスの効率性が向上し、顧客満足度の増加が期待されます。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/7196/tdnet/2291526/00.pdf

まとめ

2024年のアプリ業界では、技術進化の加速や市場の多様化に伴い、M&Aが戦略的手段として注目されています。

技術スキルギャップの解消、新たなユーザー体験の提供、セキュリティ強化、グローバル市場への進出など、業界が直面する多岐にわたる課題への対応策として、企業間の合併・買収が活発化しています。

具体的には、CASAがGoldKeyの子会社化を通じてマンション管理アプリ分野でのサービスを強化し、フルキャストホールディングスはAppXの買収により、求人検索アプリとの相乗効果を狙います。

また、ジェイックはエフィシエントの技術力を活用して教育融合型人材紹介事業のDXを加速させる戦略を採っています。

これらの事例から、アプリ業界におけるM&Aは、単に市場シェアを拡大するだけでなく、新技術の習得、ビジネスモデルの革新、そして最終的にはサービスの質の向上と顧客満足度の向上を目指す重要な戦略であることがうかがえます。