個人事業主の廃業で必要なアクションとは?手続きや費用を解説!

個人事業主として活動を続ける中で、廃業を検討することは誰にとっても大きな決断です。事業の継続が難しくなったり、新たな挑戦を始めるために現在の事業を終了させたりする理由はさまざまですが、廃業をスムーズに進めるためには適切な手続きと計画が不可欠です。廃業には多くの手続きが伴い、これらを正確に実行しないと不要な税金を支払うリスクや、後々のトラブルに発展する可能性があります。本記事では、個人事業主が廃業する際に必要なアクション、具体的な手続きの流れ、そして発生する費用について詳しく解説します。この記事を参考に、計画的に廃業を進め、次のステップに向けた準備を整えましょう。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

個人事業主の廃業とは

個人事業主の廃業とは、個人が営んでいた事業を正式に終了し、関連する法的および税務的な義務を完了することを指します。個人事業主は法人とは異なり、設立や解散といった複雑な手続きは必要ありませんが、廃業する際には一定の手続きが求められます。これには、管轄の税務署や都道府県の自治体に廃業届を提出し、事業を正式に終了することを知らせることが含まれます。

廃業の定義

廃業の定義は、個人事業主が自らの意思で事業活動を終了し、今後の事業活動を行わない状態を指します。廃業は、事業の一時停止や休業とは異なり、事業を再開する予定がないことを意味します。廃業の理由はさまざまで、業績不振、健康上の理由、高齢化、家族の事情、事業転換などが考えられます。

廃業が決定された場合、個人事業主はその事実を税務署および都道府県の自治体に正式に報告する必要があります。この報告は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を通じて行われます。廃業届の提出期限は廃業日から1か月以内であり、この期限を守ることが重要です。

廃業の際には、事業に関連するすべての活動を停止し、事業に関連する税金やその他の義務を清算する必要があります。これには、在庫や設備の処分、従業員の退職手続き、取引先への通知などが含まれます。また、廃業後も一定期間は税務申告を行う義務があります。

廃業届の重要性

廃業届は、個人事業主が正式に事業を終了することを税務署や自治体に知らせるための重要な書類です。廃業届を提出しない場合、事業が継続しているとみなされ、不要な税金を支払わなければならないリスクがあります。具体的には、所得税、消費税、個人事業税などが引き続き課税される可能性があります。

廃業届を提出することで、税務署や自治体はその事業が終了したことを正式に認識し、以降の税金の課税対象から外れることになります。これにより、個人事業主は廃業後の余分な税金の支払いを避けることができます。また、廃業届を提出しないと、確定申告書やその他の通知が引き続き送られてくるため、事業が継続していると誤解されることがあります。

さらに、廃業届は事業主が自らの事業活動を正式に終了したことを示す証拠となります。これは、後々のトラブルを避けるためにも重要です。例えば、廃業後に新たな事業を開始する際や、法人化する際にも、この証拠が役立ちます。

廃業届を提出する際には、廃業に至った理由や廃業日、事業の清算状況などを詳細に記載する必要があります。これにより、税務署や自治体は廃業の状況を正確に把握し、適切な処理を行うことができます。廃業届の記入方法や提出手順については、事前にしっかりと確認し、正確に対応することが求められます。

廃業する際に必要な手続き

個人事業主が廃業する際には、いくつかの重要な手続きを適切に行う必要があります。これには、税務署や都道府県税事務所への書類提出が含まれ、各書類には提出期限が定められています。適切に手続きを行うことで、廃業後の余分な税負担やトラブルを避けることができます。

税務署への提出書類

個人事業主が廃業する際に、まず重要なのが税務署への書類提出です。以下の書類を提出する必要があります。

個人事業の開業・廃業等届出書

個人事業の開業・廃業等届出書は、事業を開始したときと同様に、廃業した際にも提出が必要な書類です。この書類は、廃業の事実を税務署に正式に通知するためのもので、廃業した日から1か月以内に提出しなければなりません。提出期限が土・日曜日や祝日等に当たる場合は、翌営業日が提出期限となります。この届出書を提出しないと、事業が継続しているとみなされ、不要な税金が課される可能性があります。

所得税の青色申告の取りやめ届出書

青色申告を行っている個人事業主は、廃業する際に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。この届出書の提出期限は、青色申告を取りやめようとする年の翌年3月15日までです。ただし、廃業届と同時に提出するのが一般的です。記入欄には「青色申告書を取りやめようとする理由」として、「廃業のため」と記載します。

事業廃止届出書

消費税を支払っていた課税事業者は、「事業廃止届出書」を提出する必要があります。この届出書は、事由が発生してから速やかに提出しなければなりません。消費税の課税事業者であった場合、廃業後も速やかにこの書類を提出することで、消費税の納税義務を正式に終了させることができます。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

従業員や事業専従者に給与を支払っていた個人事業主は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出する必要があります。この書類の提出期限は、廃止から1か月以内です。この届出書を提出することで、源泉所得税の納税義務が廃止されることになります。

所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

所得税を予定納税している個人事業主が廃業する場合、所得税や復興特別所得税の見積額が予定納税基準額より少なくなることが予想される場合には、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出することができます。この申請書は、第1期分及び第2期分の減額申請が7月1日から7月15日まで、第2期分のみの減額申請が11月1日から11月15日までに提出する必要があります。

都道府県税事務所への提出書類

個人事業主は、税務署への提出書類に加えて、所轄の都道府県税事務所にも廃業届を提出する必要があります。各都道府県で使用する様式や提出期限が異なるため、事前に確認することが重要です。

提出様式と期限の違い

都道府県税事務所への廃業届の提出には、各都道府県によって様式や提出期限が異なります。例えば、東京都の場合、「事業開始(廃止)等申告書」を廃業の日から10日以内に提出する必要があります。一方、大阪府では「事業開始・変更・廃止申告書」を廃業した日から遅滞なく提出しなければなりません。このように、都道府県ごとに提出期限や書類の様式が異なるため、事前に各都道府県の公式ホームページで確認することが重要です。

廃業に伴う費用の種類

個人事業主が廃業を決断する際には、さまざまな費用が発生することを考慮する必要があります。これらの費用は、事業の性質や規模によって異なりますが、一般的には以下のような費用が含まれます。廃業に伴う費用を正確に見積もり、適切に予算を確保することが重要です。

設備の処分費用

設備の処分費用は、事業を廃止する際に発生する主要なコストの一つです。特に、製造業や飲食業など、大型の設備や機器を使用している事業では、処分費用が高額になることがあります。使用していた設備が古く、売却が難しい場合は、廃棄処分費用が必要になります。

具体的な処分費用の目安としては、以下のようなケースがあります。

• 小型設備の処分

一台あたり数千円から数万円

• 大型設備の処分

一台あたり数万円から数十万円

• 専門業者による廃棄

業者によっては、設備の搬出や分解費用が追加されることもあり、合計で数十万円から百万円以上になる場合もあります

また、処分費用を抑えるために、中古品として売却する方法も検討できます。ただし、売却には時間がかかることがあるため、事前に計画的に進めることが重要です。

従業員の退職金

従業員を雇用している場合、廃業に伴い退職金を支払う必要があります。退職金の支払いは、法律で義務付けられている場合と、事業主が自主的に設定した退職金制度による場合があります。退職金を支払うための資金を確保しておくことが重要です。

具体的な退職金の目安としては、以下のようなケースがあります。

• 勤続年数が短い場合(数年)

数十万円から百万円程度

• 勤続年数が長い場合(10年以上)

数百万円以上

• 中小企業退職金共済制度を利用している場合

共済からの給付金を活用して退職金を支払うことが可能

事前に退職金制度を整備し、中小企業退職金共済制度などを利用して計画的に資金を積み立てておくと、廃業時の負担を軽減できます。

在庫処分費用

物販業や製造業など、商品在庫を持つ事業では、在庫処分費用が発生します。在庫をそのまま廃棄する場合や、大幅な値引きをして販売する場合が考えられます。在庫の価値を最大限に引き出すために、計画的に在庫を減らしていくことが重要です。

具体的な在庫処分費用の目安としては、以下のようなケースがあります。

• 在庫の廃棄費用

廃棄業者への依頼費用として、数万円から十万円程度

• 値引き販売による損失

商品によって異なりますが、元の販売価格の30%〜70%程度の値引きが一般的

在庫を早めに減らすためのセールや特売を実施し、廃業に向けて計画的に在庫を管理することが推奨されます。

店舗・工場などの現状回復費用

店舗や工場を借りていた場合、退去時には原状回復義務が生じます。現状回復費用は、契約内容や物件の状態によって異なりますが、大規模な改修が必要な場合は高額になることがあります。

具体的な現状回復費用の目安としては、以下のようなケースがあります。

• 小規模な店舗(数十平方メートル)

数十万円程度

• 中規模な店舗や事務所(数百平方メートル)

数十万円から百万円程度

• 大規模な工場や倉庫

数百万円以上

現状回復費用を抑えるためには、契約時に条件をしっかりと確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。また、早めに計画を立てて修繕や清掃を進めることが、コスト削減に繋がります。

廃業のタイミングと注意点

個人事業主が廃業を決断する際には、適切なタイミングと注意点を十分に考慮することが重要です。廃業の手続きにはいくつかの重要なステップがあり、それぞれのステップには適切なタイミングが求められます。さらに、廃業後の税務申告や経費計上についても注意が必要です。

廃業届提出のタイミング

廃業届の提出は、事業を正式に終了するために必須の手続きです。個人事業主は、廃業した日から1か月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出しなければなりません。この届出書は、廃業の事実を公式に通知するものであり、これを怠ると事業が継続しているとみなされ、不要な税金が課されるリスクがあります。

提出期限が土日や祝日に当たる場合は、翌営業日が期限となります。廃業届の提出を忘れると、税務署から確定申告書やお知らせのハガキが引き続き送られてくるため、廃業が正式に認識されません。また、廃業届を提出しても、その廃業年度に税額が発生している場合は確定申告が必要です。

確定申告の必要性

廃業後も確定申告は必要です。事業を運営している個人事業主は、毎年確定申告を行い、前年度の事業所得に対する納税額を確定させます。事業を廃業しても、廃業日までの事業所得については申告義務があります。確定申告の対象期間の所得が20万円以下の場合は申告義務が免除されることがありますが、青色申告を行っていた場合は特別控除の関係で確定申告が必要です。

廃業後に発生する所得についても注意が必要です。廃業後も売掛金の回収などで所得が発生する場合があります。これらの所得も確定申告に含める必要があります。適切な確定申告を行わないと、特別控除が受けられなくなり、税負担が増える可能性があります。

廃業後の経費計上の注意点

廃業後もいくつかの経費が発生する可能性があります。設備の処分費用、現状回復費用、従業員の退職金などが代表的なものです。しかし、廃業届に記載した廃業日以降に発生した経費は、原則として事業の必要経費として計上することができません。

ただし、一部の経費については例外があります。例えば、売上債権の貸倒損失や、商品在庫の値引きや廃棄に伴う損失などは、特例として経費計上が認められる場合があります。しかし、これらの経費も税務署の判断によるため、事前に確認し、必要な手続きを行うことが重要です。

経費計上のタイミングも重要です。廃業前に発生する経費は事業経費として計上できるため、廃業を決断した際には、できるだけ廃業前に必要な経費を計上するように計画を立てることが推奨されます。例えば、設備の処分や現状回復のための費用は、廃業前に手配し、支払いを完了しておくと良いでしょう。

廃業以外の選択肢

廃業を考えている個人事業主には、必ずしも事業を完全に終了する以外の選択肢があります。事業を一時的に停止する「休業」や、事業を他の企業に譲渡する「M&A」などの方法を検討することができます。これらの選択肢にはそれぞれメリットとデメリットがあり、事業の状況や将来の計画に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。

休業の選択

休業とは、事業を一時的に停止することを指します。休業期間中は事業活動を停止しますが、将来的に事業を再開する可能性を残しておくことができます。

休業のメリット・デメリット

休業を選択するメリットは、事業を再開する際の手続きが簡便である点です。廃業してしまうと、再度事業を開始する際には新たに開業届を提出する必要がありますが、休業の場合はその手続きが不要です。また、休業中は事業税や消費税、住民税の負担が軽減されることがあります。

一方、休業のデメリットは、事業が停止している間も確定申告が必要になることです。青色申告を行っている個人事業主は、2期連続で申告を行わないと青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。また、事業が再開されないまま長期間休業状態が続くと、結果的に廃業せざるを得なくなる可能性もあります。

必要書類と手続き

休業を選択する場合、正式な「休業届」というものは存在しません。代わりに「異動届出書」を提出し、休業の旨を記載します。また、従業員がいる場合は「給与支払事務所等の廃止届出書」を提出し、消費税の納税義務者でなくなる旨の届出書も必要になります。社会保険に加入している場合は、健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届も提出します。

これらの書類の提出には期限が設けられていないため、早めに対応することが重要です。休業を選択することで、将来的に事業を再開する余地を残しつつ、現在の事業活動を停止することができます。

M&Aの検討

M&A(Mergers and Acquisitions)は、事業を他の企業に譲渡する方法です。個人事業主にとって、M&Aは廃業以外の有力な選択肢の一つです。事業を引き継ぐ企業が見つかれば、事業を継続させることができ、従業員の雇用も守ることができます。

M&Aのメリットとデメリット

M&Aのメリットは、事業を継続させることができる点にあります。事業の買収側企業は、既存の顧客基盤やノウハウ、設備を活用できるため、スムーズに事業を引き継ぐことができます。また、個人事業主自身も事業の譲渡により資金を得ることができ、廃業時の経済的な負担を軽減できます。

一方、M&Aのデメリットとしては、譲渡先を見つけるのが難しい場合がある点や、譲渡条件の交渉に時間と労力がかかる点が挙げられます。また、M&Aが成立しない場合には、再度廃業を検討しなければならないこともあります。

M&Aで需要の高い個人事業

M&Aで特に需要が高いのは、以下のような個人事業です:

• 設備や施設のある事業

製造業や介護施設、日本語学校など、設備や施設が必要な事業は、M&Aの対象として需要があります。

• 伝統的な技術のある事業

和菓子屋や伝統工芸品の製作など、長い歴史と技術を持つ事業は、ブランド価値が高く、M&Aで引き継がれることが多いです。

• 特定の許認可が必要な事業

建設業や旅館業、運送業など、特定の許認可が必要な事業も、許認可を引き継ぐことでM&Aがスムーズに進む場合があります。

許認可の継続が可能な業種

M&Aによって許認可の継続が可能な業種には、以下のようなものがあります。

• 旅館業

宿泊施設の運営に必要な許認可は、M&Aによって引き継ぐことができます。

• 建設業

建設業の許認可も、適切な手続きを行うことで譲渡が可能です。

• 一般旅客自動車運送事業

タクシーやバスなどの運送業の許認可も引き継ぐことができます。

• 一般貨物自動車運送事業

物流業の許認可も、M&Aを通じて継続することができます。

• 火薬類製造業・火薬類販売業

特定の条件下で許認可を引き継ぐことが可能です。

• 一般ガス導管事業

ガス供給の許認可もM&Aによって引き継ぐことができます。

これらの業種は、許認可を取得するための手間や費用が大きいため、M&Aによって既存の許認可を引き継ぐことで、スムーズに事業を継続させることができます。事業の譲渡を検討している個人事業主は、自身の業種が許認可の引き継ぎが可能かどうかを確認し、適切な手続きを行うことが重要です。

廃業以外の選択肢を検討することで、事業の将来性を確保し、従業員の雇用や顧客のニーズを継続して満たすことができます。適切な選択肢を見つけるためには、専門家の助言を受けることが有効です。

廃業する際の具体的な手順

個人事業主が廃業する際には、いくつかの具体的な手順を踏む必要があります。これらの手順を正確に実行することで、廃業後のトラブルを避け、スムーズに手続きを完了することができます。以下では、廃業の手続きの流れと各ステップについて詳しく解説します。

手続きの流れ

廃業の手続きには、事前準備、書類の作成、税務署や自治体への提出という主なステップがあります。それぞれのステップを順を追って説明します。

事前準備

廃業を決断した際には、まず事前準備を行うことが重要です。この段階では、以下の点に注意して準備を進めます。

1. 事業資産の整理

事業に関連する設備や在庫を整理し、必要に応じて処分や売却を計画します。特に、大型の設備や多量の在庫がある場合は、早めに処分方法を決定し、計画的に実行することが求められます。

2. 従業員の処遇

従業員を雇用している場合は、退職金の準備や退職手続きを進めます。従業員には事前に廃業の意向を伝え、適切なサポートを提供することが重要です。中小企業退職金共済制度を利用している場合は、退職金の手続きを確認します。

3. 取引先への通知

取引先に対して廃業の通知を行います。取引先との契約や支払い条件を確認し、未払いの債務や売掛金の回収を整理します。誠実な対応を行うことで、信頼関係を保つことができます。

4. 税務署や自治体との確認

廃業手続きに必要な書類や提出期限を確認します。事前に税務署や自治体に問い合わせを行い、具体的な手続きを確認することが推奨されます。

書類の作成

事前準備が整ったら、次に必要な書類を作成します。個人事業主が廃業する際には、以下の書類を作成し、提出する必要があります。

1. 個人事業の開業・廃業等届出書

廃業日から1か月以内に提出する必要があります。書類には、納税地、氏名、事業主の生年月日、個人番号、職業、屋号などの基本情報を記入し、廃業理由や廃業日を記載します。

2. 所得税の青色申告の取りやめ届出書

青色申告を行っている場合は、廃業届と同時に提出します。青色申告書を取りやめる理由として「廃業のため」と記載します。

3. 事業廃止届出書

消費税を支払っていた課税事業者の場合、事由が発生してから速やかに提出します。この書類を提出することで、消費税の納税義務を正式に終了させます。

4. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

従業員や事業専従者に給与を支払っていた場合、廃止から1か月以内に提出します。これにより、源泉所得税の納税義務が廃止されます。

5. 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書

所得税を予定納税している場合、見積額が予定納税基準額より少なくなる場合に提出します。第1期分及び第2期分の減額申請は7月1日から7月15日まで、第2期分のみの減額申請は11月1日から11月15日までに提出します。

税務署・自治体への提出

書類が整ったら、税務署や自治体への提出を行います。以下の手順で提出を進めます。

1. 税務署への提出

廃業届を含む必要な書類を税務署に提出します。提出方法には、直接提出、郵送、電子申告(e-Tax)があります。郵送の場合、書類の控えと返信用封筒を同封し、控えに受付印を押してもらうよう依頼します。

2. 自治体への提出

所轄の都道府県税事務所にも廃業届を提出します。各都道府県で提出様式や期限が異なるため、事前に確認し、適切に対応します。例えば、東京都の場合は廃業の日から10日以内に、また大阪府の場合は廃業した日から遅滞なく提出する必要があります。

3. 提出後の確認

提出後、税務署や自治体からの確認通知を受け取り、必要な手続きが完了したことを確認します。特に、所得税や消費税の納税義務が正式に終了したことを確認することが重要です。

これらの手続きを適切に行うことで、個人事業主はスムーズに廃業を完了することができます。各ステップを慎重に進め、必要な書類を正確に作成し、期限を守って提出することで、廃業後のトラブルを避けることができます。事前に計画を立て、専門家の助言を受けながら進めることが、成功する廃業手続きの鍵となります。

個人事業主が廃業する際の注意点

個人事業主が廃業する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらの注意点をしっかりと把握し、適切に対応することで、廃業後の生活や事業の清算をスムーズに行うことができます。以下では、特に重要な注意点について詳しく解説します。

借入金の処理

個人事業主が廃業する際、事業に伴う借入金が残っている場合、その処理が重要な課題となります。借入金を適切に処理しないと、廃業後に個人の信用情報に悪影響を及ぼす可能性があります。

まず、事業の借入金は廃業後も個人の借入金として返済義務が残ります。廃業によって収入が途絶えることを考慮し、返済計画を見直す必要があります。以下の手順で借入金の処理を進めることが推奨されます。

1. 借入金の全額把握

まず、事業に関連するすべての借入金を把握します。金融機関からの借入金、取引先からの掛け売り、クレジットカードの未払いなど、すべての負債をリストアップします。

2. 返済計画の再検討

収入が減少または途絶えることを見越して、現実的な返済計画を再検討します。必要に応じて、金融機関と相談し、返済条件の変更やリスケジュールを依頼することも検討します。

3. 事業資産の処分

設備や在庫などの事業資産を売却し、得られた資金を借入金の返済に充てます。事業資産の売却に際しては、最良の条件で売却できるよう、複数の買い手と交渉することが重要です。

4. 専門家の助言を受ける

借入金の処理については、専門家の助言を受けることが有効です。税理士やファイナンシャルプランナーなど、財務の専門家に相談することで、適切なアドバイスを得られます。

廃業後の生活設計

廃業後の生活設計も重要なポイントです。廃業によって収入が途絶えることを前提に、生活費の見直しや新たな収入源の確保を計画する必要があります。

1. 生活費の見直し

まず、現在の生活費を見直し、必要最低限の支出を把握します。無駄な支出を削減し、収入が減少した場合でも生活を維持できるようにします。

2. 新たな収入源の確保

廃業後の収入源を確保するために、新たな仕事や副業を探します。これには、再就職、フリーランスとしての活動、副業の開始などが含まれます。早めに行動を開始し、廃業後すぐに収入を得られるように準備することが重要です。

3. 退職金や貯蓄の活用

従業員として勤務していた場合や退職金制度を利用していた場合、退職金を生活費の一部として活用します。また、これまでの貯蓄を計画的に取り崩しながら生活を維持します。

4. 社会保障の確認

廃業後も国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。廃業後の生活設計において、これらの社会保障費用も考慮することが重要です。

取引先や従業員への配慮

廃業に伴い、取引先や従業員に対する適切な配慮も必要です。事業関係者との円満な関係を維持することで、廃業後のトラブルを避けることができます。

1. 取引先への通知

取引先には廃業の事実を早めに通知し、未払いの債務や未収金の精算を行います。取引先との信頼関係を保つため、誠実な対応を心掛けましょう。特に、重要な取引先には個別に連絡を取り、廃業に至った経緯を丁寧に説明します。

2. 従業員への通知とサポート

従業員には廃業の決定を早めに伝え、退職金の支払い手続きや再就職のサポートを行います。退職金制度がある場合は、適切な手続きを踏んで支払いを完了させます。また、従業員の再就職を支援するため、求人情報の提供や推薦状の作成なども行います。

3. 顧客への対応

顧客に対しても廃業の通知を行い、未納品の注文や保証対応について説明します。顧客からの信頼を失わないよう、最後まで誠実に対応することが大切です。

4. 契約の整理

廃業に伴い、リース契約やサプライ契約などの各種契約を整理します。契約解除に伴う違約金や解約手続きについても確認し、円滑に処理します。

以上のように、個人事業主が廃業する際には、借入金の処理、廃業後の生活設計、取引先や従業員への配慮など、多くの注意点があります。これらのポイントをしっかりと把握し、適切に対応することで、廃業後のトラブルを避け、スムーズに次のステップへ進むことができます。廃業の手続きや計画を進める際には、専門家の助言を受けることも検討し、より良い選択を行うようにしましょう。

まとめ

個人事業主が廃業する際には、多岐にわたる手続きと費用が発生します。適切なタイミングで廃業届を提出し、確定申告や経費計上に注意を払うことで、税務上のトラブルを避けることができます。また、事前に借入金の処理や廃業後の生活設計、取引先や従業員への配慮を行うことも重要です。廃業以外にも休業やM&Aといった選択肢を検討することで、事業の継続や再開の可能性を残すこともできます。これらのプロセスを通じて、個人事業主としての責任を全うし、円滑に事業を終了させることができます。廃業を考えている方は、この記事を参考に計画的に手続きを進め、次のステップに向けた準備をしっかりと整えてください。専門家の助言を受けることも検討し、最善の方法で廃業を完了させましょう。

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