会社をたたむ手続きとは?最終検討ポイントやかかる費用を解説!

会社をたたむ、つまり廃業することは、経営者にとって非常に重い決断です。しかし、後継者不足や業績悪化など、様々な事情からその決断を迫られることがあります。廃業には、法的な手続きや費用、そして従業員や取引先への影響など、考慮すべき点が数多く存在します。

この記事では、会社をたたむとは具体的にどういうことなのか、廃業前に検討すべきポイント、そして具体的な手続きや費用について詳しく解説します。

廃業という選択肢だけでなく、事業再生や事業承継といった道も視野に入れながら、後悔のない決断をするための情報を提供するのでぜひ参考にしてください。

1. 会社をたたむ(廃業)とは?

会社を「たたむ」という言葉は、日常会話では様々な意味合いで使われますが、法的な観点から見ると、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。ここでは、「会社をたたむ」ということの定義や、その背景にある理由について詳しく解説します。

会社をたたむとはどういうことか?

会社をたたむとは、法的な手続きを経て、法人格を消滅させ、事業活動を完全に終了させることを意味します。会社は、設立登記を行うことで、法律上の人格として認められ、権利や義務を有するようになります。この法人格が消滅するということは、会社が法律上の人として存在しなくなることを意味し、同時に、事業活動も完全に停止することになります。

会社をたたむ方法は、大きく分けて「廃業」「解散」「倒産」の3つがあります。それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要です。

  • 廃業

経営者の意思によって自主的に事業を終了させることを指します。一般的に、負債を返済できる余力がある場合に選択されます。

  • 解散

法律で定められた手続きに従って会社を清算し、消滅させることを指します。株主総会での決議や合併など、様々な理由で解散が行われます。

  • 倒産

債務超過や支払い不能などの状況に陥り、法的な手続きによって事業を終了させることを指します。破産や民事再生などがこれに該当します。

なぜ会社をたたむのか?

会社をたたむ理由は企業によって様々ですが、ここでは代表的な理由をいくつか紹介します。

経営者の高齢化や後継者不足

中小企業の多くは、経営者個人の能力や人脈に頼って事業を運営しているケースが多く見られます。そのため、経営者が高齢になり引退を考えるようになったり、後継者が見つからないといった状況に陥ると、会社をたたむという選択肢が浮上してくることがあります。

経営不振や業績悪化

会社の業績が悪化し、赤字が続いたり、債務超過に陥ったりした場合、事業の継続が困難になることがあります。このような状況では、倒産を避けるために自主的に廃業を選択するケースもあります。また、市場環境の変化や競争の激化などにより、事業の先行きが見通せなくなった場合も、廃業を検討する理由となります。

その他の理由(事業転換、病気など)

上記以外にも、経営者が別の事業に転換したい、病気やケガで事業継続が困難になったなど、様々な理由で会社をたたむことがあります。

会社をたたむ決断は、経営者や従業員、取引先など、多くの人々に影響を与える重大な決断です。そのため、廃業を選択する前に、事業再生や事業承継など、他の選択肢についても慎重に検討する必要があります。

2. 廃業前に検討すべき重要なポイント

会社をたたむ(廃業する)という決断は、経営者にとって非常に重いものです。しかし、後継者不足や業績悪化など、様々な理由から廃業を検討せざるを得ない状況に直面することもあるでしょう。廃業には多くのデメリットが存在するため、安易に決断するのではなく、まずはその影響をしっかりと把握し、会社を存続させるための選択肢がないか検討することが重要です。

会社をたたむデメリット

廃業は、会社にとってだけでなく、従業員や取引先、そして社会全体にも大きな影響を及ぼします。

従業員や取引先への影響

廃業は、従業員の解雇を伴うことが多く、彼らの生活に大きな影響を与えます。突然の収入源の喪失は、従業員とその家族にとって経済的な打撃となるだけでなく、精神的な負担も大きくなります。また、取引先企業も、突然の取引停止によって事業に支障をきたす可能性があります。長年築き上げてきた関係が一瞬にして崩れてしまうことは、精神的にも経済的にも大きな痛手となるでしょう。

築き上げてきた信用やブランドの喪失

会社がこれまで築き上げてきた信用やブランドは、廃業によって失われてしまいます。これは、将来的な事業展開や再起を図る際に大きな足かせとなる可能性があります。一度失った信用を取り戻すことは容易ではなく、再スタートを切る際には、以前よりも多くの努力が必要となるでしょう。

費用と時間

廃業には、様々な手続きや費用がかかります。従業員への退職金の支払い、在庫や設備の処分、事務所の原状回復、そして法的な手続き費用など、多額の費用が必要となるケースも少なくありません。また、手続きには時間もかかり、精神的な負担も大きいため、廃業は決して簡単な決断ではないと言えるでしょう。

会社を存続させるための選択肢

廃業という決断を下す前に、会社を存続させるための選択肢を検討することが重要です。ここでは、代表的な選択肢を3つ紹介します。

事業再生の道

経営不振に陥った場合でも、まだ事業を立て直せる可能性は残されています。

経営改善計画の策定

専門家のアドバイスを受けながら、抜本的な経営改革を行い、事業の収益性を改善する計画を策定します。コスト削減、売上向上策、新規事業の開発など、あらゆる角度から検討し、実行に移すことが重要です。

金融機関との交渉

資金繰りが悪化している場合は、金融機関との交渉によって返済条件の見直しや追加融資を検討することも可能です。

事業承継

後継者不足が廃業の理由である場合、事業承継という選択肢があります。

親族内承継、従業員への承継

親族や従業員の中から後継者を選び、事業を引き継いでもらう方法です。事業への理解が深く、スムーズな引継ぎが期待できます。

M&A(第三者への事業売却)

M&Aによって、外部の企業や個人に事業を売却する方法です。会社の価値を最大限に評価してもらい、資金調達や事業拡大につなげることができます。

休眠会社という選択肢

事業を一時的に停止したい場合や、将来的な事業再開を検討している場合は、「休眠会社」という選択肢もあります。

休眠会社のメリット・デメリット

休眠会社は、事業活動を停止している間、法人税などの維持費用を抑えることができます。しかし、役員変更登記などの手続きは必要であり、事業再開には一定の準備期間が必要となります。

休眠会社にするための手続き

休眠会社にするためには、税務署や関係機関への届出が必要です。また、事業再開時には、改めて事業開始の届出を行う必要があります。

3. 会社をたたむ(廃業)手続きの流れ

会社をたたむ(廃業する)には、法的な手続きが必要です。手続きは、株式会社と個人事業主で異なります。ここでは、それぞれの廃業手続きの流れを詳しく解説します。

株式会社の場合

株式会社の廃業手続きは、複雑で時間がかかる場合があります。以下のステップを順番に進める必要があります。

株主総会での解散決議

株式会社を廃業するためには、まず株主総会を開催し、特別決議によって解散を決議しなければなりません。特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要となります。

清算人の選任と登記

解散決議と同時に、会社の財産や債務を整理する清算人を選任します。清算人は、通常、会社の取締役が務めますが、株主総会で別の人を選任することも可能です。清算人が選任されたら、2週間以内に解散登記と清算人選任登記を法務局で行う必要があります。

債権者への通知と官報公告

清算人は、会社の債権者に対して、会社の解散と債権の申出を求める通知を行う必要があります。また、官報に公告を掲載し、広く一般に解散を知らせることも義務付けられています。この公告期間は2ヶ月以上と定められており、この期間中は債権者からの債権の申し出を受け付けなければなりません。

財産目録の作成と確定申告

清算人は、解散時点での会社の財産と負債を記載した財産目録を作成し、確定申告を行う必要があります。確定申告は、解散日から2ヶ月以内に行わなければなりません。

資産の売却と債務の弁済

清算人は、会社の資産(現金、売掛金、不動産など)を売却し、得られた資金で債務を弁済していきます。もし、資産を全て売却しても債務を完済できない場合は、破産手続きに移行することになります。

残余財産の分配と清算結了登記

債務の弁済が完了し、残った財産(残余財産)がある場合は、株主総会の決議を経て、株主に分配します。残余財産の分配が完了したら、清算結了登記を法務局で行います。これにより、会社は完全に消滅することになります。

個人事業主の場合

個人事業主の廃業手続きは、株式会社に比べて比較的シンプルです。

廃業届の提出

個人事業主が廃業する場合は、税務署に廃業届を提出する必要があります。廃業届は、廃業した日から1ヶ月以内に提出することが求められます。

税務署や関係機関への届出

廃業届の提出に加えて、都道府県税事務所、市区町村役場など、関係機関への届出も必要です。また、青色申告をしていた場合は、青色申告の取りやめ届出書も提出する必要があります。

債務の整理と取引先への対応

個人事業主も、廃業する前に債務の整理を行う必要があります。取引先に対しては、廃業の旨を伝え、未払いの代金などを速やかに支払うようにしましょう。

4. 会社をたたむ際にかかる費用

会社をたたむ(廃業する)には、様々な手続きが必要となり、それに伴い費用も発生します。費用の種類や金額は、会社の規模や状況によって異なりますが、事前に把握しておくことで、資金計画を立てやすくなります。ここでは、会社をたたむ際にかかる主な費用について詳しく解説します。

各種登記費用

会社をたたむ場合には、以下のような登記費用が必要となります。

解散登記

会社の解散を法務局に登録するための費用です。登録免許税として3万円が必要となります。

清算人選任登記

解散と同時に、会社の財産や債務を整理する清算人を選任し、その登記を行います。登録免許税として9,000円が必要です。

清算結了登記

清算手続きが完了したことを法務局に登録するための費用です。登録免許税として2,000円が必要です。

官報公告費用

会社の解散を官報に公告するための費用です。官報は、国が発行する機関紙であり、会社の解散を広く一般に知らせるために利用されます。公告費用は、掲載する内容の文字数によって異なりますが、一般的には3万5,000円~3万6,000円程度かかります。

税理士や司法書士への報酬

廃業手続きは、法律や税務の専門知識が必要となるため、税理士や司法書士に依頼することが一般的です。これらの専門家への報酬は、手続きの内容や会社の規模によって異なりますが、一般的には数十万円程度かかることが多いです。

従業員の解雇に伴う費用(退職金など)

従業員を解雇する場合、退職金を支払う必要があります。退職金の金額は、就業規則や労働契約の内容によって異なりますが、法律で定められた最低限の金額を下回ってはいけません。また、退職金とは別に、特別手当や慰労金を支払う場合もあります。

事務所や設備の撤去費用

賃貸物件を借りている場合は、原状回復義務があります。内装や設備を撤去し、元の状態に戻すための費用が必要です。また、自社所有の設備や機械を処分する場合も、撤去費用や廃棄費用がかかることがあります。

その他の費用(在庫処分、原状回復など)

上記の費用のほかに、以下のような費用が発生することもあります。

  • 在庫処分費用

商品や原材料などを処分するための費用です。

  • 原状回復費用

賃貸物件を借りている場合、元の状態に戻すための費用です。

  • 弁護士費用

債権者との交渉や訴訟などが必要になった場合に発生します。

  • 引っ越し費用

事務所や工場を移転する場合に発生します。

会社をたたむ際には、これらの費用を事前に見積もり、資金計画をしっかりと立てることが重要です。また、専門家に相談することで、不要な費用を抑えたり、手続きをスムーズに進めたりすることができます。

5. 廃業後の手続きと注意点

会社をたたむ際には、廃業手続きが完了した後にも、いくつかの手続きや注意点があります。これらの手続きを怠ると、後々思わぬトラブルに発展する可能性もあるため、しっかりと確認しておきましょう。

税務上の手続き

会社をたたむ場合、税務上は次のような手続きが必要となります。

清算確定申告

会社を解散した場合、解散時から清算が完了するまでの期間を「清算期間」と呼びます。清算期間中の会社の所得に対しては、通常の法人税とは別に「清算所得に対する法人税」が課税されます。

清算確定申告は、この清算所得に対する法人税を申告するための手続きです。清算期間中に発生した所得や費用を計算し、清算所得を確定させます。清算確定申告は、清算が完了した日から1ヶ月以内に行う必要があります。

消費税の還付

会社が解散した場合、原則として、課税事業者としての登録は自動的に抹消されます。しかし、解散前に仕入れた商品やサービスにかかった消費税は、還付を受けることができます。

消費税の還付を受けるためには、清算確定申告書に「消費税の還付申告書」を添付して提出する必要があります。還付申告は、清算が完了した日から2ヶ月以内に行う必要があります。

社会保険・労働保険の手続き

税務上の手続きに加えて、従業員に関する手続きも必要です。

健康保険・厚生年金保険の脱退

会社が解散した場合、従業員は健康保険・厚生年金保険から脱退することになります。清算人は、従業員の資格喪失手続きを行う必要があります。手続きは、解散日から5日以内に行うことが原則です。

雇用保険の資格喪失手続き

従業員を解雇する場合、雇用保険の資格喪失手続きを行う必要があります。手続きは、解雇日から10日以内に行うことが原則です。

その他の手続き

会社をたたむにあたっては、次のような手続きが必要となることもあるので注意しましょう。

銀行口座の解約

会社の銀行口座は、清算手続きが完了したら解約する必要があります。口座に残っている資金は、債権者への弁済や株主への分配に充てられます。

リース契約の解約

コピー機や車など、リース契約をしているものは、契約期間が残っていても解約する必要があります。解約時には、違約金が発生する場合があります。

電話やインターネット回線の解約

会社の電話やインターネット回線も、解約する必要があります。解約時には、違約金や撤去費用が発生する場合があります。

6. 専門家への相談

会社をたたむ(廃業する)手続きは、法律、税務、登記など、専門的な知識が必要となる場面が多くあります。そのため、円滑かつ正確に手続きを進めるためには、専門家への相談が不可欠です。ここでは、廃業手続きにおいて特に重要な役割を果たす3つの専門家、弁護士、税理士、司法書士について解説します。

弁護士

弁護士は、法律の専門家として、廃業手続きに関する法的なアドバイスやサポートを提供します。具体的には、以下の様な場面で弁護士の力が必要となります。

  • 債権者との交渉

廃業時には、債権者との間で債務の返済方法や条件について交渉が必要になる場合があります。弁護士は、法的な知識に基づいて交渉を代理し、債務の減額や返済猶予などを実現できる可能性があります。

  • 訴訟への対応

債権者との交渉がまとまらず、訴訟に発展する可能性も考えられます。弁護士は、訴訟の代理人として、会社の権利を守り、不利な状況を回避するための戦略を立てます。

  • 契約書の作成・確認

廃業に伴い、従業員との契約解除や取引先との契約終了など、様々な契約書の作成や確認が必要になります。弁護士は、法的に有効な契約書を作成し、トラブルを未然に防ぎます。

  • 法的手続きのアドバイス

廃業手続きには、様々な法律が関わってきます。弁護士は、これらの法律に関する知識を活かし、適切な手続きのアドバイスを行います。

税理士

税理士は、税務の専門家として、廃業手続きにおける税務に関するアドバイスやサポートを提供します。具体的には、以下の様な場面で税理士の力が必要となります。

  • 清算確定申告

廃業する会社は、清算確定申告を行う必要があります。税理士は、清算所得の計算や申告書の作成を代行し、税務調査への対応も行います。

  • 消費税の還付

廃業前に仕入れた商品やサービスにかかった消費税は、還付を受けることができます。税理士は、還付手続きを代行し、還付額を最大限に確保します。

  • 税務調査への対応

廃業後も、税務調査が入る可能性があります。税理士は、税務調査に立ち会い、会社の権利を守ります。

  • 税務に関するアドバイス

廃業手続きには、様々な税金が関わってきます。税理士は、これらの税金に関する知識を活かし、節税対策や納税に関するアドバイスを行います。

司法書士

司法書士は、登記の専門家として、廃業手続きにおける登記申請を代行します。具体的には、以下の様な場面で司法書士の力が必要となります。

  • 解散登記

会社の解散を法務局に登録するための手続きです。

  • 清算人選任登記

清算人を選任し、その登記を行う手続きです。

  • 清算結了登記

清算手続きが完了したことを法務局に登録するための手続きです。

  • 不動産登記

会社が所有する不動産を売却する場合、不動産登記の変更が必要になります。

司法書士に依頼することで、複雑な登記手続きをスムーズに進めることができます。また、登記に関する法律や手続きについて、専門的なアドバイスを受けることも可能です。

会社をたたむ(廃業する)際には、これらの専門家と連携し、それぞれの専門知識を活かすことで、スムーズかつ正確に手続きを進めることができます。廃業を検討している場合は、早めに専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

7. まとめ: 会社をたたむという決断の前に専門家に相談を

会社をたたむことは、決して簡単な決断ではありません。しかし、正しい知識と準備があれば、スムーズに進めることができます。

廃業前に、会社の状況を客観的に評価し、専門家への相談も検討しましょう。弁護士、税理士、司法書士などの専門家は、法務、税務、登記など、それぞれの専門知識を活かして、廃業手続きをサポートしてくれます。

また、廃業以外の選択肢についても目を向けましょう。事業再生、事業承継、休眠会社など、状況によっては会社を存続させる道も残されているかもしれません。これらの可能性を最大限に模索し、本当に廃業しかないのかどうかを慎重に見極めることが重要です。