非上場株式の譲渡方法を解説!流れ・メリット・税金の計算方法まとめ!

非上場株式の譲渡は、中小企業や家族経営の企業において、経営権の移動や事業承継を行う際に非常に重要な手段となります。特に、後継者不足や経営者の高齢化が進む現代では、非上場株式の譲渡を通じて企業の存続と成長を確保するニーズが高まっています。本記事では、非上場株式の譲渡方法について、具体的な手続きの流れ、譲渡によるメリット、そして税金の計算方法を解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

非上場株式の譲渡プロセス

非上場株式の譲渡は、上場株式と異なり、特定の法的および手続的要件を満たす必要があります。これらの株式は公開市場で取引されていないため、価格設定や譲渡プロセスが複雑になることが一般的です。以下では、非上場株式の譲渡プロセスの基本手続きを解説します。

株式譲渡の基本手続き

非上場株式の譲渡における基本的な手続きは、譲渡契約の締結、取締役会または株主総会での承認、契約の実行と株主名簿の書き換えの三つのステップに分けられます。これらのステップは、株式の正式な移転と法的な要件を満たすために重要です。

譲渡契約の締結

非上場株式の譲渡プロセスの最初のステップは、譲渡契約の締結です。この段階では、譲渡人(売り手)と譲受人(買い手)が株式の譲渡に関する契約を締結します。契約には、株式の数、譲渡価格、支払条件、譲渡のタイミング、保証や表明に関する条項など、取引の詳細が明記されます。この契約は法的拘束力を持ち、双方の権利と義務を定義します。

取締役会または株主総会での承認

多くの非上場企業では、株式の譲渡には会社の定款に基づく取締役会や株主総会の承認が必要です。これは、不適切な第三者による企業の掌握を防ぎ、既存の株主の利益を保護するための措置です。承認プロセスでは、譲渡の条件と影響が慎重に検討され、場合によっては特定の条件下でのみ承認されます。この承認は、譲渡プロセスの正当性を確保し、会社の運営に潜在的なリスクをもたらす可能性のある取引を管理します。

契約の実行と株主名簿の書き換え

取締役会や株主総会の承認を受けた後、契約は正式に実行され、譲渡に関する全ての財務的取り決めが完了します。代金の支払いが行われ、株式が正式に譲受人に移転されます。株式の所有権移転を完了させるためには、会社の株主名簿に譲受人の名前を新たに記載し、以前の所有者の名前を削除する必要があります。株主名簿の書き換えは、新しい株主が株式に関連する権利を行使できるようにするため、非常に重要です。これにより、会社は現在の株主の正確な記録を保持し、法的な要件を満たすことができます。

以上の手続きを経ることで、非上場株式の譲渡は正式に完了し、両当事者にとって法的な保護と明確な取引条件が保証されます。このプロセスは、特に非上場企業において、株式譲渡がスムーズに行われるための基礎を築くものです。

非上場株式の価格算定方法

非上場株式の価格算定は、その非公開性と市場取引の欠如から複雑で挑戦的なプロセスです。このセクションでは、一般的に用いられる価格算定方法を解説し、非上場株式の評価における課題と実務での対応策を探ります。

一般的な価格算定方法

非上場株式の価格を算定する際には、以下の三つの主要な方法が用いられます。これらの方法は、それぞれ異なるアプローチを提供し、株式の公正な価値を見積もるための基盤を形成します。

類似業種比準方式

類似業種比準方式は、類似する業務を行う上場企業の株価指標を参考にして非上場株式の価値を評価する方法です。この方法では、1株あたりの配当金額、利益金額、純資産価額などの財務指標が利用されます。このアプローチの利点は、市場の客観的データに基づいて株価を導出することができる点にありますが、類似する業種の上場企業が存在しない場合や、業務規模が大きく異なる場合には適用が難しい場合があります。

純資産価額方式

純資産価格方式は、企業が解散した場合に得られると想定される資産の純額に基づいて株式の価格を算定します。具体的には、会社の負債を全て清算した後に残る資産の総額を株式数で割り、1株あたりの価値を導き出します。この方法は、主に資産が多く保有されている会社や、安定した純資産を持つ中小企業に適していますが、企業の将来の成長ポテンシャルや収益性は考慮されません。

配当還元方式

配当還元方式は、将来にわたって株主に支払われると予想される配当の現在価値を基に株価を評価します。この方法は、配当支払いの安定性が高い、または配当に大きな重みを置く企業に特に適しています。将来の配当支払い能力を予測し、それに基づいて株価を算定しますが、配当支払いの不確実性や、市場の変動に大きく影響される可能性があります。

評価の課題と実務での対応

非上場株式の評価は、市場価格の不在という固有の課題を持っています。市場での取引が存在しないため、価格を直接観察することができず、その評価は一般に複雑で不確実性が高いものとなります。このセクションでは、非上場株式評価の主な課題と、それに対応する実務的なアプローチについて詳しく解説します。

市場価格の不在

非上場株式の価格評価の最大の課題は、市場価格の不在です。公開市場での取引記録がないため、価格決定に必要な情報が限られています。この問題は、株価の透明性と客観性を損ない、投資家や譲渡者間で価格に対する意見の相違が生じやすくなります。

評価方法の選択とその課題

非上場株式の評価には様々な方法が適用されますが、各方法は特定の条件や業種によって有効性が異なります。例えば、類似業種比順方式は類似する業種の上場企業のデータが豊富な場合に有効ですが、比較対象となる企業が見つからない場合には使用できません。純資産価格方式は、企業が資産重視の業種に属している場合に適していますが、事業の将来性や成長ポテンシャルを反映しにくいです。配当還元方式は、安定した配当を支払う企業で有効ですが、配当の予測が不確実な企業ではリスクが伴います。

実務での対応策

評価の課題に対処するためには、以下の実務的な対応策が考えられます。

  • 複合的な評価アプローチの採用

単一の評価方法に依存するのではなく、複数の方法を組み合わせて使用することで、一つの方法の限界を他の方法が補うことが可能です。例えば、類似業種比順方式と純資産価格方式を組み合わせることで、市場の動向と企業の実質的な資産価値の両方を考慮した価格を導き出すことができます。

  • 専門家との協働

評価は専門的な知識を要するため、経験豊富な評価専門家や財務アドバイザーと協力することが推奨されます。これにより、評価の透明性と客観性を高めるとともに、評価過程でのリスクを最小化することができます。

  • 継続的な市場分析

非上場企業でも、市場動向や業界の発展を継続的に分析し、それを株価評価に反映させることが重要です。業界の新たな動向や競争状況の変化は、企業価値に直接影響を与えるため、定期的な再評価が必要です。

非上場株式の評価は困難であり、様々な課題が伴いますが、適切な評価方法の選択と専門家との協働を通じて、これらの課題を克服することが可能です。投資家や企業にとって公正な価格設定は、透明性の高い取引と持続可能な事業関係の基盤を築くために不可欠です。

非上場株式の譲渡に関わる税金

非上場株式の譲渡は、上場株式の取引とは異なり、独自の税務処理が必要です。ここでは、非上場株式の譲渡に関わる税金、具体的に譲渡所得税の計算方法、適用される税率と譲渡益の計算式、そして特殊なケースでの税金計算について説明します。

譲渡所得税の計算方法

非上場株式の譲渡によって生じる利益は、譲渡所得税の対象となります。譲渡所得税の計算は以下の手順に従います。

  • 総収入金額の確定

譲渡価額が総収入金額となります。

  • 必要経費の計算

取得費と譲渡費用を合算します。取得費には株式を購入した際の金額及び関連費用が含まれ、譲渡費用には売却に直接関連する費用が含まれます。

  • 譲渡所得の算出

総収入金額から必要経費を差し引いた金額が譲渡所得です。

この譲渡所得に対して、所得税と住民税が課されるため、正確な計算が非常に重要です。

税率と譲渡益の計算式

非上場株式の譲渡所得に対する税率は一律20.315%(所得税15.315%と住民税5%)です。譲渡所得の具体的な計算式は次の通りです。

  • 譲渡所得税=譲渡所得×20.315%

たとえば、譲渡価額が5,000万円で取得費が2,950万円、譲渡費用が50万円の場合、譲渡所得は1,000万円(5,000万円 – (2,950万円 + 50万円))となり、その20.315%を税金として支払う必要があります。

特殊なケースでの税金計算

非上場株式を市場価値より著しく低い価格で譲渡する場合、特別な税務上の取り扱いが必要になることがあります。このケースでは、譲渡された株式の「時価」が譲渡所得の計算に使用されることがあります。たとえば、実際の取引価格が1,000万円であるにも関わらず、時価が3,000万円の場合、税務当局は3,000万円を売却価格として譲渡所得を計算することがあります。

この場合、買い手には贈与と見なされる可能性があり、贈与税が課されることがあります。売り手にとっては、実際に受け取った金額よりも高い金額で税金が計算されるため、不利な状況になる可能性があります。

非上場株式の譲渡では、市場価値を正確に把握し、税務申告を適切に行うことが重要です。不明な点や計算方法に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

非上場株式譲渡のメリットと戦略的考慮事項

非上場株式の譲渡は、企業の成長や経営戦略、財務計画において重要な役割を果たします。ここでは、非上場株式の譲渡に関するメリットと戦略的考慮事項について詳しく解説します。

経営権の移動と企業戦略

非上場株式の譲渡は、経営権の移動を伴うことが多く、企業戦略に大きな影響を与えます。経営権の移動は、新たな株主が経営に参画することを意味し、企業の方向性や戦略が見直されることがあります。特に、企業が新しい市場に進出する場合や技術革新を進める場合、新しい株主の知識や資本が大きな推進力となります。

また、経営権の移動は企業文化にも影響を与えます。新しい株主が異なる経営スタイルや価値観を持ち込むことで、企業全体のダイナミズムが高まることがあります。しかし、これには慎重な調整が必要です。急激な変化は従業員の士気に悪影響を与える可能性があるため、経営陣は新旧の文化を融合させる努力が求められます。

株式譲渡による事業継承と成長の機会

非上場株式の譲渡は、事業継承の手段としても重要です。中小企業や家族経営の企業では、後継者問題が深刻化しています。株式譲渡により、現経営者がリタイアする際にスムーズな事業継承を実現できます。譲渡を通じて、後継者は経営権を正式に引き継ぎ、企業の安定性と持続可能性を確保することができます。

さらに、株式譲渡は企業の成長機会をもたらすことがあります。新しい株主が持つ資本やネットワークを活用することで、企業は新たな市場への進出や製品開発に資金を投じることができます。これにより、企業の競争力が向上し、長期的な成長が期待できます。

税務計画と財務戦略

非上場株式の譲渡に伴う税務計画と財務戦略は、企業および個人にとって重要な要素です。譲渡益に対する所得税や住民税、贈与税など、様々な税金が発生する可能性があります。これらの税負担を最小限に抑えるためには、事前の計画が不可欠です。

税務計画の一環として、譲渡価格の適正な評価が重要です。譲渡価格が市場価値よりも著しく低い場合、税務当局から贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。また、相続や贈与による株式の取得についても、適切な取得費の計算が必要です。これにより、将来の譲渡時に発生する税負担を正確に予測し、計画することができます。

税務計画を成功させるためには、税理士や財務アドバイザーとの密な連携が重要です。専門家の助言を受けながら、最適な税務戦略を構築することで、企業と個人の財務健全性を維持しつつ、非上場株式の譲渡を成功させることができます。

総じて、非上場株式の譲渡は経営戦略、事業継承、財務計画の観点から多くのメリットを提供します。これらのメリットを最大限に活用するためには、詳細な計画と専門的なアドバイスが不可欠です。適切な準備と戦略的な判断を行うことで、企業の持続可能な成長と安定した経営を実現することができるでしょう。

まとめ: 非上場株式の評価は専門家に任せよう!

非上場株式の譲渡は、単なる資産の売買を超え、企業の将来に大きな影響を与える重要なプロセスです。適切な手続きを踏むことで、経営権のスムーズな移動や事業承継が可能となり、企業の持続的な成長を実現できます。また、税務計画をしっかりと立てることで、税負担を最小限に抑え、財務健全性を保つことができます。本記事で紹介した手続きの流れや価格算定方法、税金の計算方法を参考に、戦略的かつ効率的に株式譲渡を進めてください。専門家の助言を得ることで、より確実な計画を立てることができ、企業の未来を安心して任せることができるでしょう。

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