廃業する会社を買う方法は?メリットや注意点・手続きの流れを解説!

後継者不足・業績悪化・経営者の高齢化などの理由で廃業する企業は、実は新たな事業機会としての価値を秘めており、廃業する会社を買うことは多くの戦略的利益をもたらす可能性があります。この記事では、廃業する会社を買収する方法、その際に享受できるメリット、および注意すべきリスクと手続きの流れについて詳細に解説します。

この記事を監修した人:藤本昇也(M&A情報館 管理本部所属)

廃業する会社を買う方法は?

廃業する会社を買収する際には、通常のM&A(Mergers and Acquisitions)のプロセスに従いますが、特定のアプローチや考慮すべき点がいくつか存在します。廃業予定の会社は、特に経営状態や市場の位置づけが影響するため、慎重な評価と戦略的なアプローチが必要です。このセクションでは、廃業する会社の買収手法を解説し、どのようにして適切な買収対象を見つけ、交渉を進めるかについて詳しく掘り下げます。

M&Aの基礎知識

M&Aは、「合併」と「買収」を意味する言葉であり、一般的には企業が他の企業を経営統合するプロセスを指します。M&Aの目的は多岐にわたりますが、主に経営資源の強化、市場シェアの拡大、競争力の向上などがあります。廃業する会社を買収する場合、これらの一般的な目的に加え、特有の理由が存在することが一般的です。例えば、廃業を考慮している会社は、後継者不足、経営困難、または市場からの撤退を考えている場合が多く、これらの会社は比較的安価で買収が可能です。

廃業する会社の買収においては、買収後の統合プロセスも異なります。通常のM&Aでは、事業の成長と拡大を目指して統合が行われますが、廃業会社の場合、特定の資産や人材を移行させることが主目的となることが多いです。また、これらの会社からノウハウや特許などの知的財産を獲得することも一つの目的となり得ます。

廃業する会社の見つけ方

廃業する会社を見つけるには、特定の方法やツールを利用することが効果的です。一つの方法は、業界のニュースレターや専門誌を定期的にチェックすることです。これらの出版物は、市場の動向や特定企業の経営状況に関する洞察を提供するため、潜在的な買収候補を早期に見つける手がかりとなります。

また、M&A専門の仲介業者やアドバイザリーサービスを利用する方法もあります。これらの専門家は、市場内の売却可能な企業を把握しており、特に廃業を検討している企業の情報にアクセス可能です。仲介業者を通じて、買収候補となる企業の財務状況や事業内容の詳細な評価を行い、買収に向けた交渉の仲介を依頼することができます。

さらに、オンラインのM&Aマッチングプラットフォームも有用です。これらのプラットフォームは、買い手と売り手を繋ぐデジタルマーケットプレイスを提供し、ユーザーが自らの条件に合った買収対象を効率的に検索できるようになっています。利用者は、地域、業種、企業規模など、多岐にわたるフィルターオプションを設定して、最適な買収候補を見つけることが可能です。

これらの方法を組み合わせることで、廃業を検討している企業を効果的に見つけ、適切な買収機会を創出することができるでしょう。

廃業する会社を買うメリット

廃業予定の会社を買収する際には多くの利点があります。これらの利点を理解することは、戦略的なM&Aアプローチを計画し、実行する上で非常に重要です。以下では、廃業する会社を買収することによる主なメリットを、具体的な例と共に解説します。

コスト削減の機会

廃業する会社を買収する最大のメリットの一つは、顕著なコスト削減です。一般的に、廃業を予定している会社は、資産を売却しようとする際に市場価格よりも低い価格でオファーされることが多いです。このため、買い手は通常よりもはるかに低いコストで企業を手に入れることが可能になります。これにより、初期投資コストを大幅に削減でき、その資金を他の事業拡張や改善のために再配分することができます。

また、廃業を考慮している会社の所有者は通常、迅速な取引を望んでいます。そのため、買収に関する交渉や手続きがスピーディーに進むことが多く、これにより買収に関わる管理コストや時間の節約にもつながります。さらに、廃業に向けた手続きの一環として、既に法的な清算プロセスが始まっている場合があり、これにより買い手は追加的な法的費用を回避できることもあります。

既存資産の活用

廃業する会社を買収する際のもう一つの大きなメリットは、その会社が持つ既存資産を利用できることです。これには従業員、ノウハウ、顧客基盤、さらには物理的な資産や設備も含まれます。従業員の場合、廃業する会社には既に訓練され、経験豊富なスタッフが揃っていることが多く、これを新しい事業活動にそのまま活かすことができます。このような従業員は、新規事業を立ち上げる際に必要とされる時間とコストの両方を削減する助けとなります。

加えて、買収した会社のノウハウや業界内での立場を利用することで、新しい市場への進出を容易にし、既存の顧客関係を活用して迅速に収益を生み出すことが可能です。たとえば、廃業する会社が持つ特許や技術は、新たな製品開発を加速させることができる貴重な資源です。また、その会社が築いてきたブランド名や市場での評判を利用することで、信頼性と市場への露出を確保できます。

これらの既存資産を活用することにより、新規事業をゼロから始めるよりも速く、効率的に市場に参入し、事業を展開することができます。これにより、投資回収期間を短縮し、事業の持続可能性を高めることが可能になります。

廃業する会社の買収における注意点

廃業する会社の買収は多くのメリットを提供しますが、それには無視できないリスクも伴います。適切な準備と理解がなければ、買収は失敗に終わる可能性があります。ここでは、特に注意を払うべきリスクとその対策について解説します。

簿外債務のリスク

簿外債務は、財務諸表上に明示されていない債務のことを指します。これには退職給付引当金、賞与引当金、未払いの社会保険料、リース債務などが含まれることがあります。簿外債務は、買収後に予期せぬ財務負担となることが多く、これを事前に見逃すと、買収した企業の財務状態が悪化する原因となり得ます。

簿外債務に対処するためには、買収前に徹底的なデューデリジェンス(財務調査)を行うことが重要です。公認会計士や税理士といった専門家を雇い、潜在的な財務リスクを洗い出してもらうことが推奨されます。また、売買契約には表明保証条項を設けることで、隠れた債務が後に発覚した場合には売り手に損害賠償を求めることができるようにするべきです。これにより、簿外債務が明らかになった際のリスクを最小化することが可能になります。

従業員との関係管理

会社の買収に成功した後も、従業員との関係は非常にデリケートな問題です。従業員たちが新しい経営陣に対して持つ不安や疑念は、組織全体の士気や生産性に影響を与えかねません。特に、買収された会社の従業員は、変化に対する抵抗感を感じることがあり、それが職場の雰囲気を悪化させる原因となることもあります。

このような問題を避けるためには、買収が決定した直後から従業員へのコミュニケーションを積極的に行い、透明性を持って情報を共有することが重要です。また、従業員の不安を和らげるために、買収のビジョンや将来の計画、従業員にとってのメリットを明確に説明し、彼らが新体制において重要な役割を担うことを強調する必要があります。さらに、既存の従業員が新しい経営方針や企業文化にスムーズに適応できるよう、適切な研修やサポートプログラムを提供することも考慮するべきです。

従業員との良好な関係を築くことは、買収後の安定した運営と事業の成功に不可欠です。従業員が新しい経営方針に積極的に参加し、会社の目標達成に貢献する意欲を持つようになれば、買収の成果を最大限に引き出すことができます。

廃業する会社を買う4つのスキーム

廃業を検討している会社の買収は、既存の事業を引き継ぐことで新規事業の立ち上げ期間とリスクを軽減できる絶好のチャンスを提供します。ただし、その買収を行う方法やスキームは、目的や状況によって異なります。ここでは、特に効果的な4つの買収スキームについて詳しく解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、廃業する会社の全株式を買収する方法です。この方法では、買収後、会社の法人格がそのまま存続するため、契約の継続性が保たれ、ビジネスの途絶えることなくスムーズに事業を継続することが可能です。株式譲渡は、売り手と買い手が直接交渉し、契約を締結することで成立します。このスキームは、手続きが比較的単純であるため、中小企業においては非常に一般的な方法とされています。

事業譲渡

事業譲渡では、会社の一部または全部の事業を別の企業に譲渡します。この方法の利点は、特定の事業単位だけを選んで買収できるため、買い手は不要な資産や負債を引き受けるリスクを避けられる点です。ただし、新たな事業主体としての設立が必要になるため、許認可の取得や契約の再締結が必要となる場合があります。このスキームは、特に特定の部門や資産を目的とした買収に適しています。

会社分割

会社分割は、事業の一部を新設または既存の他の企業に移転する方法です。会社分割には、吸収分割と新設分割の二種類があります。吸収分割は、事業部を他の既存企業が吸収する形式であり、新設分割は新たに法人を設立して事業部を移転する形式です。このスキームは、特定の事業の効率化や、不要な部門を切り離す際に有効です。分割により、事業をより戦略的に再編成することが可能となりますが、株主の同意や詳細な事前準備が必要です。

合併

合併は、二つ以上の企業が一つに統合されるスキームです。廃業を検討している会社が他の会社と合併することで、新しい企業体が誕生します。合併により、リソースの最適化、経営効率の向上、市場での競争力の強化が期待できます。ただし、合併は文化やシステムの統合が必要なため、実行には詳細な計画と調整が必要です。

これらのスキームは、廃業する会社を買収する際に、異なるニーズや状況に応じて選択できます。適切なスキームを選ぶことで、買収の効果を最大化し、未利用の潜在的な価値を引き出すことが可能となります。

買収手続きの流れ

廃業する会社を買収する際には、計画的で体系的なアプローチが求められます。以下では、廃業予定の会社の買収プロセスをステップバイステップで詳しく説明します。このプロセスを理解することで、買収におけるリスクを最小限に抑え、事業の成功確率を高めることができます。

初期評価とデューデリジェンス

買収プロセスの最初の段階は、標的企業の初期評価から始まります。この段階では、買収対象となる会社の財務状況、市場での位置づけ、業務運営の効率性など、基本的なビジネスの健全性を評価します。初期評価には、公開されている財務報告書の分析、業界のベンチマークとの比較、そして潜在的な成長性の評価が含まれます。

初期評価が肯定的であれば、次にデューデリジェンス(詳細な調査)の段階に進みます。デューデリジェンスは、買収を決定する前に必要なすべての情報を明らかにし、隠れたリスクを発見する過程です。この過程では、財務、法務、税務、環境、IT、人事など、多岐にわたる側面から調査が行われます。特に、簿外債務や運営上のリスクがないかを徹底的に調査し、将来的な負のサプライズを避けることが目的です。

デューデリジェンスは専門家やアドバイザーと協力して行うことが一般的であり、この段階を適切に管理することが、買収後の成功を左右します。

契約交渉とクロージング

デューデリジェンスを経て、買収が適切であると判断された場合、次のステップは契約交渉です。この段階では、買収条件、価格、支払い条件、保証や保証条項などの重要事項を定めます。交渉は双方の利益を満たすように進められ、買い手と売り手の間で合意に至る必要があります。契約内容には、簿外債務の負担、運営の継続性、雇用の承継など、様々な側面が含まれるため、法律的なアドバイスが不可欠です。

契約の合意に至った後は、クロージング(取引の完了)のプロセスが始まります。クロージングでは、契約に基づいた資金の移動や法的書類の交換が行われ、企業所有権が正式に移転します。この段階では、関連するすべての規制や法的要件が満たされていることを確認し、最終的な承認を得る必要があります。

クロージングは一連の手続きを経て正式に終了し、新たな所有者としての運営がスタートします。買収プロセスのすべてのステップを適切に管理することで、新しい事業の成功への基礎が築かれます。

まとめ: 廃業する会社を買うならリスクも考慮して!

廃業する会社を買収することは、適切な準備と理解があれば大きな機会を提供しますが、無視できないリスクも伴います。この記事では、廃業する会社を買うメリットとしてコスト削減、既存資産の活用、事業拡張の迅速化などを挙げ、簿外債務の存在や従業員との関係管理といった潜在的なリスクについても議論しました。また、初期評価、デューデリジェンス、契約交渉からクロージングに至る買収プロセスの流れを詳細に説明しました。廃業する会社を買収する際には、これらのステップを慎重に実行し、適切な専門知識とアドバイスをもとに行動することが成功の鍵です。将来的なビジョンと現実的なリスク評価をバランス良く行い、事業拡大の新たな道を模索しましょう。

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