会社清算とは?会社の解散とは違う?手続きや費用も解説!

会社がその活動を終える際、ただ事業を停止するだけでは不十分です。事業の終了は、法的な手続きを伴う解散と清算のプロセスを必要とします。この記事では、会社解散と清算の基本的な概念、手続きの流れ、かかる費用、そして解散や清算を進める際のメリットと注意点について詳しく解説します。会社解散と清算の違いを明確にし、これらのプロセスをスムーズに進めるために必要な情報を提供するのでぜひ参考にしてください。

この記事を監修した人:佐々木太朗(M&A情報館 事業承継推進本部所属)

会社清算とは?

会社清算とは、会社の法人格を消滅させることを目的としたプロセスですが、主として、会社がなくなったあとの会社が保有する財産の分配に焦点があてられています。以下では、経営者であれば知っておくべき会社清算の基本知識を解説していきます。

会社清算の基本的な意味

会社清算とは、解散した会社が持つ資産と負債を整理し、会社の法人格を消滅させるプロセスです。このプロセスでは、会社の不動産や機械などの資産を現金化し、すべての債権を回収して負債を返済します。最終的には、残った資産を株主に分配することで、すべての資産・負債が清算され、会社はその法人としての存在を終了します。

清算の法的意義は、会社が責任を持って債権者や株主に対する義務を果たすために非常に重要です。清算のプロセスを適切に行うことで、会社の責任を清算し、債権者への支払いを確実に行い、株主への適正な資産の分配を保証します。

会社清算の種類

会社清算には大きく分けて「任意清算」と「法定清算」の二種類があります。任意清算は、会社の株主や社員が自発的に決定し実施する清算方法で、特定の条件下でのみ行われます。具体的には、存続期間の満了や株主の同意が得られた場合などが該当します。この種類の清算は、合名会社や合資会社で主に用いられ、財産の処理方法を会社側が任意で決定できる利点があります。ただし、株式会社ではこの方法は用いられず、法定清算が基本となります。

法定清算は、会社の清算が法律に基づいて義務付けられている場合に行われます。これには通常清算と特別清算が含まれます。通常清算は、会社が十分な資産を持っており、負債を全額返済できる場合に適用される手続きです。この場合、裁判所の監督なしに清算人の主導のもとで清算が進められます。一方、特別清算は会社が債務超過の状態、つまり負債を全額返済できない場合に行われ、裁判所の監督下で進行します。特別清算は、破産と似ていますが、会社が選出した清算人が手続きを進める点で異なります。

通常清算と特別清算の主な違いは、財務状態と法的な監督の有無にあります。通常清算は比較的スムーズに進行し、会社の資産が負債を上回っているため裁判所の介入は最小限です。一方で、特別清算は債務超過の状態で行われるため、裁判所がプロセス全体を監督し、清算の公正を保証します。これにより、不透明な財務状態や複雑な債権関係を公正に解決することが可能になります。

会社解散とは?

会社清算と似た言葉に、会社の解散があります。会社の解散とは、清算と同じように、事業活動の停止を意味しますが、取得して会社の財産を分配する前の手続きのことをいいます。以下では、会社の解散について知っておきたい基礎事項を解説します。

会社解散の定義

会社解散とは、会社がその法人格を失い、すべての事業活動を正式に終了させる法的なプロセスです。解散のプロセスは、会社が自らの活動を終了し、清算会社に移行することを意味しますが、この時点では会社はまだ存在しており、その後の清算プロセスを通じて資産と負債の整理が行われます。

解散自体は、あくまで会社活動の終了を宣言する法的な行為であり、その後の清算プロセスが実際の資産処理と負債の清算を担います。したがって、解散は清算に先立って行われる必要があり、清算はその解散を具体的に実行するための手続きとなります。解散が正式に行われると、会社は清算会社としての地位に移行し、この期間中にすべての財務的な義務を清算し、最終的に法人格が消滅します。

会社解散の理由

会社解散には主に二つの形態があります。任意解散と強制解散です。

自主的な解散(任意解散)

任意解散は、会社の株主や社員が自発的に決定する解散です。これにはいくつかの一般的な理由があります。最も一般的なのは、株主総会での決議によるもので、これは株主たちが出席し、賛成多数で解散を決定します。他にも、定款で定められた存続期間が満了した場合や、定款で特定の解散事由が発生した場合などが含まれます。例えば、会社が特定のプロジェクトを完了した後に解散するといった事由を定款に設定している場合です。

法律による強制解散

強制解散は、法的な規定や裁判の結果として会社が解散を余儀なくされる場合に行われます。この種の解散は、会社が破産手続きを開始した場合、違法な活動が発覚した場合、または特定の法律に基づく解散要因が生じた場合に実施されます。例えば、12年以上登記が行われていない休眠会社は、会社法に基づいて解散されることがあります。また、裁判所が会社の活動が社会に害を及ぼしていると判断した場合、解散を命じることもあります。

これらの解散は、会社の自主的な意志によるものではなく、外部の圧力によるものであるため、通常、会社にとっては不利な結果を招くことが多いです。それにもかかわらず、これらの手続きを通じて、会社はその法的責任を終了させ、債権者や株主に対して清算を行うことが可能になります。

会社清算と解散の手続き

会社は、解散手続きを経たのち、清算手続きを行うことになります。以下では、その流れを解説します。

解散の手続きの流れ

解散の手続きは、解散の原因が発生した直後に始まり、以下のステップを通じて進行します。

  • 解散決議の採択

会社の解散を進める最初のステップは、株主総会での解散決議の採択です。これは特別決議により実施され、通常、出席している株主の過半数以上の賛成が必要です。

  • 解散登記の実施

解散決議が成立した後、会社は解散登記を行います。この登記は会社が解散されたことを法的に公式に記録するために必要です。

  • 清算プロセスの開始

解散登記が完了すると、清算人は清算プロセスを開始します。このプロセスには上述の清算の手続きが含まれます。

  • 清算結了後の登記と届出

すべての清算プロセスが完了した後、清算人は清算結了の登記を行います。この登記によって、会社は法的に消滅します。また、清算完了後には税務署やその他の関連公的機関に対して清算結了の届出を行う必要があります。

清算の手続きの流れ

会社清算の手続きは、解散が決定した後に開始されます。このプロセスは、主に清算人の選出から始まり、清算の完成に至るまでの複数のステップを含みます。

  • 清算人の選出

解散決議がなされた後、清算人を選出します。清算人は、通常、会社の元取締役や外部の専門家(弁護士や公認会計士など)が務めることが多いです。清算人の主な役割は、会社の資産の整理と負債の清算、および最終的な資産の分配を行うことです。

  • 財産目録の作成

清算人は会社の財産目録を作成し、資産と負債を詳細に記録します。これには、不動産、在庫、未回収の売掛金など、すべての資産項目が含まれます。

  • 債権者保護の手続き 清算人は債権者を保護するための手続きを行います。これには二つの主要な活動が含まれます。 ・公告: 清算人は官報に公告を行い、債権者に会社が解散したことを知らせ、債権申告を求めます。 ・催告: 清算人は、会社の債務記録に基づき、既知の債権者に対して個別に通知を送り、債権申告を促します。
    • 債権の回収と債務の清算

清算人は会社の債権を回収し、負債を返済します。これには、未払いの債権の回収や、ローンの返済などが含まれます。

  • 残余資産の分配

債権者への支払いが完了した後、残った資産は株主に分配されます。

  • 清算の完成

全ての清算活動が完了し、最終的な決算報告が株主総会で承認された後、清算は正式に完了します。

これらの手続きが適切に完了することで、会社はその法人格を正式に終了し、すべての法的責任から解放されます。全てのステップは法的要件を満たす必要があるため、しばしば専門家の助けを借りて進められます。

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清算と解散の費用

会社清算と解散のプロセスは、それぞれ特有の費用を伴います。これらの費用を詳しく理解することは、事前の計画と準備に役立ちます。以下に、清算と解散に関連する主な費用を解説します。

清算にかかる費用

会社の清算プロセスは複数の段階を含むため、異なる種類の費用が発生します。主に登記費用と専門家への依頼費用が中心です。

  • 清算結了の登記費用

清算が完了した後、法人としての会社が消滅するための清算結了の登記が必要です。この登記には通常、登録免許税として2,000円が必要です。ただし、支店がある場合は、その登記に追加で費用がかかることがあります。

  • その他の実費

清算プロセス中には、財産の評価や売却に関連する費用、また債権者への通知や公告に関連する官報公告の費用が必要になります。官報公告費用は公告内容によって異なりますが、一般的には約3万円程度が目安です。

  • 専門家への依頼費用

清算プロセスは複雑であるため、通常、司法書士や税理士といった専門家に依頼します。これらの専門家への費用は、業務の内容や範囲に応じて異なりますが、一般的には数万円から数十万円の範囲です。例えば、司法書士による登記業務は約7万円から、税理士による税務申告は約8万円からとなります。

解散にかかる費用

解散プロセスもまた、登記と公告に関連する費用が主です。

  • 解散登記の費用と清算人選任登記の費用

解散登記を行う際には、登録免許税として解散登記に3万円、清算人選任登記に9,000円が必要です。合計で39,000円の費用がかかります。これにより、会社が解散されたことが公的に記録されます。

  • 官報公告の費用とその重要性

解散の際には、債権者保護のために官報に解散公告を出す必要があります。この公告は債権者に解散を知らせ、彼らが権利を主張する機会を提供します。官報公告の費用は内容によって変わりますが、約36,000円(1行あたり約3,600円、10行想定)が目安です。この公告は法的要件を満たすために不可欠であり、適切に実施しないと法的な問題が生じる可能性があります。

これらの費用は必要不可欠であり、会社の解散や清算を考える際には、これらの費用を計画に含めておく必要があります。専門家と相談しながら、適切な手続きを進めることが望ましいです。

会社清算と解散のメリットと注意点

会社の清算や解散は重大な決断であり、その過程にはさまざまなメリットと注意点が存在します。以下で、それぞれのプロセスにおける主要な利点と考慮すべき事項を説明します。

清算のメリットと注意点

まずは、会社清算の場合のメリットと注意点を解説していきます。

メリット

  • 債務の解消

清算は会社の全資産を現金化し、全ての負債を返済するプロセスです。これにより、債務超過の状態から抜け出し、債権者への責任を清算することが可能になります。

  • 税負担の軽減

清算が完了すれば、法人としての活動が停止するため、将来の法人税やその他の税金の納付義務がなくなります。

  • 株主への責任の履行

清算を通じて、残った資産は株主に公平に分配されます。これにより、株主に対する最終的な責任が果たされます。

注意点

  • 手続きの複雑さ

清算プロセスは多くの法的要件を含むため、非常に複雑です。専門家のアドバイスなしに進めることは困難であり、誤った手続きは法的な問題を引き起こす可能性があります。

  • 時間とコスト

清算は時間がかかるプロセスであり、登記費用や公告費用など、多額の初期コストが必要です。これに加え、専門家への依頼費用も発生します。

  • 債権者の権利

清算中は債権者の権利を保護するための公告が必要です。債権者からの異議申し立てがある場合、清算プロセスに遅延や変更が生じる可能性があります。

解散のメリットと注意点

次に、会社を解散する場合のメリットと注意点を解説していきます。

メリット

  • 事業の合理的終了

解散を通じて、会社はその事業活動を正式に終了させることができます。これは、事業が不採算または目的を達成した場合に適切な選択です。

  • 法的清算の開始

解散決議が行われると、法的に清算プロセスが開始されます。これにより、会社はその責任を終結させるための手続きに入ります。

  • 債務超過の回避

早期の解散決議により、債務が増大することを防ぎ、債務超過に陥るリスクを避けることができます。

注意点

  • 清算人の責任と義務

解散後、清算人は資産の処理や債務の支払いなど、多くの責任と義務を負います。清算人の選任とその業務の適正な実行は、解散プロセスの成功に不可欠です。

  • 法的要件の遵守

解散手続きは会社法に厳格に従う必要があり、特に解散登記や債権者保護の公告には注意が必要です。手続きの違反や遅延は、法的なリスクを生じさせる可能性があります。

  • 解散のタイミング

解散のタイミングを誤ると、不必要な税金が課されたり、債務超過に陥るリスクが高まります。適切な時期に解散を実行するためには、会社の財務状況を正確に評価し、専門家の意見を参考にすることが重要です。

会社の清算と解散は、それぞれが持つ固有のメリットとリスクを把握し、適切なプロセスを進めることが極めて重要です。専門家と十分に協議し、計画的に手続きを進めることが推奨されます。

まとめ: 事業を畳むには解散と清算はセット!

会社解散と清算は、会社が事業活動を終了する際に避けて通れない重要な手続きです。解散が会社活動の終了を意味するのに対し、清算は解散した会社の資産と負債を整理し、法人格を完全に消滅させるプロセスです。この記事では、解散や清算の手続きの流れ、必要な費用、そして手続きを進める際のメリットと注意点を詳しく説明しました。正しい知識と計画をもってこれらの手続きに臨むことで、法的な義務を果たし、未来への影響を最小限に抑えることが可能です。

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