事業承継における不動産の扱いは?注意点・デメリットや対処法を解説!

事業承継は多くの企業にとって重要な転機となるものですが、これを円滑に実行するためには多くの計画と戦略的な意思決定が必要です。特に不動産は、企業資産の中でも大きな割合を占めることが多く、その扱い方によっては事業承継の成功に直接影響を及ぼします。不動産の適切な管理と活用は、税負担の軽減、資金調達、そして経営の継続性を確保するために不可欠です。本記事では、事業承継における不動産の扱い方、注意すべき点とデメリット、およびこれらの課題に対処する方法について詳しく解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

事業承継と不動産の基本

事業承継は、経営者が後継者に自身のビジネスを引き継ぐプロセスを指します。これは単に経営権の移動だけでなく、企業の文化、理念、および戦略的資産の継承を含む包括的な活動です。効果的な事業承継は、企業が持続可能な成長を遂げるうえ特に重要であり、特に中小企業や家族経営の企業においては、企業の存続自体がこのプロセスにかかっていると言っても過言ではありません。適切な後継者の選定、事業の継続性を確保する戦略の策定、そして移行期間中のリスク管理が重要な焦点となります。不動産は多くの企業にとって最も価値のある資産の一つです。企業が保有する不動産は、収益の源泉であると同時に、企業の安全性を担保するものでもあります。

事業承継を計画する際、不動産の戦略的な管理と活用は、税務負担の軽減、資金調達の機会の創出、そして経営の効率化を図るための重要な要素となるものです。不動産の適切な評価と利用は、事業承継の成功に直接的に寄与します。例えば、未利用の土地を有効活用することで新たな収益源を開拓することが可能ですし、不動産の売却やリースによって得られる資金は、事業の拡張や後継者の育成に充てることができるでしょう。さらに、不動産を戦略的に活用することで、会社の資産評価を適正化し、相続税や贈与税の負担を軽減することも可能です。

事業承継プロセスにおいては、不動産の法的な側面も無視できません。不動産の所有権の移転は複雑であり、税法、会社法、地方自治体の規制など、多岐にわたる法的要件を満たす必要があります。したがって、事業承継を検討する企業は、不動産に関連する法的課題を理解し、適切な法的アドバイスを求めることが必須となります。

事業承継における不動産の取り扱い

事業承継において不動産の取り扱いは、保有主体によって異なります。不動産が会社のバランスシートに記載されているか、個人の資産として持たれているかによって、承継プロセスと税務上の取り扱いが大きく変わるため、これを理解することは非常に重要です。

会社保有の不動産の場合

会社が不動産を保有している場合、事業承継は通常、企業の株式とともに、その不動産の所有権も後継者に移行します。この不動産は会社の資産として、会社の全体的な価値を形成する一部と見なされます。したがって、事業承継プロセスでは、自社株の評価に直接影響を及ぼすため、非常に重要な要素です。

不動産を活用した資金調達やリスク管理が可能であり、不動産の価値が高い場合には、自社株の価値を向上させることができます。一方で、この不動産に関連する固定資産税や維持管理費用も企業の負担となるため、これらのコストを効果的に管理することが求められます。

経営者個人保有の不動産の場合

経営者が個人的に不動産を保有している場合、事業承継の文脈でその取り扱いはより複雑になります。この不動産は個人の資産として扱われるため、会社の資産とは区別され、通常、相続や贈与の形で後継者に移されます。このプロセスには、相続税や贈与税が発生する可能性があるため、税務計画が非常に重要になります。

個人が保有する不動産の活用方法としては、事業用不動産を賃貸に出して収入を得る、または売却して事業資金に転用するなどが考えられます。これらの選択は、不動産の立地や市場価値、さらには事業の将来計画によって左右されます。

不動産の保有形態による税務処理の違い

不動産の保有形態が異なると、税務処理にも大きな違いが生じます。会社が保有する不動産の場合、その評価額や負担する税金は企業の財務報告に影響を与えます。対照的に、経営者個人が保有する不動産は、個人の税務申告の対象となり、相続や贈与の際に適用される税率や控除の対象が異なります。

会社保有の不動産を事業承継する際には、企業評価を適正に行い、税務効果を最大化するための戦略を立てる必要があります。一方で、個人保有の不動産を承継する場合には、相続税の評価額を適切に抑え、可能であれば税負担を軽減するための計画が重要です。

注意点とデメリット

事業承継において不動産を活用することは多くのメリットを提供しますが、それに伴ういくつかのリスクやデメリットも理解しておく必要があります。特に、不動産価格の変動、周辺環境の変化、財務負担および流動性の問題は、事業承継計画における重要な考慮事項です。

不動産価格の変動リスク

不動産価格は市場の経済状況に大きく依存するため、価格の変動リスクは避けられません。事業承継を計画する際に不動産を資産として計上する場合、市場の不況やその他の経済的要因により、不動産の価値が予期せず低下する可能性があります。このような価値の低下は、事業の総資産価値に影響を及ぼし、後継者に引き継がれる資産の価値を減少させる可能性があります。さらに、不動産価格が下落すると、それを担保にした借入金の返済条件が変更されることがあり、追加の財務負担を負うことになるかもしれません。

周辺環境の変化による影響

不動産の価値はその立地に強く影響されるため、周辺環境の変化は特に注意が必要です。例えば、不動産の近くに大型の商業施設が建設されれば、地価が上昇する可能性がありますが、逆に工業施設や不快な施設が建設された場合は地価が下落することもあります。また、地域の経済状況、人口動態の変化、政策の変更なども不動産の価値に影響を及ぼします。これらの変化は予測が困難であり、計画していた事業戦略や財務計画に深刻な影響を与えることがあるので注意が必要です。

財務負担と流動性の問題

不動産は流動性の低い資産であり、必要な時に迅速に現金化することは困難です。これは、緊急の資金需要が生じた際に不動産を容易に売却できない可能性があることを意味します。さらに、不動産の維持管理にはコストがかかり、これが事業のキャッシュフローに悪影響を及ぼすことがあります。事業承継を進める過程で不動産を取得または維持することは、特にキャッシュフローが限られている小規模企業にとって大きな財務負担となる可能性があります。

税務対策と節税のポイント

事業承継においては、税務対策と節税は重要な考慮事項です。特に不動産を利用することで、節税効果を最大化し、事業承継のコストを効率的に管理する方法がいくつか存在します。これには、小規模宅地等の特例の活用、自社株の評価引き下げにつながる不動産の活用法、および賃貸物件としての不動産利用が含まれます。

小規模宅地等の特例の活用

小規模宅地等の特例は、相続税の負担を軽減するための重要な手段です。この特例を利用することで、事業用宅地や居住用宅地の相続税評価額を大幅に減少させることが可能です。具体的には、「特定事業用宅地等」として分類される宅地であれば、相続税の評価額から最大80%まで減額することができます。この特例を適用するためには、一定の条件を満たす必要があり、事業承継を行う前にこれらの条件が満たされているかどうかを確認し、適切な計画を立てることが重要です。

自社株評価の引き下げにつながる不動産活用法

不動産を事業資産として効果的に利用することで、自社株の評価を引き下げることができます。不動産の購入や開発は、企業のバランスシートにおける資産総額を増加させる一方で、適切な方法で資産が活用されれば、不動産の評価額を実際の市場価値よりも低く抑えることが可能です。特に、不動産を購入してから3年以上経過することで、土地の評価額は路線価を基に算定されるため、しばしば市場価値よりも低く評価されることがあります。これにより、自社株の評価額も低く抑えられ、相続税や贈与税の節税に繋がります。

賃貸物件としての不動産活用

賃貸物件として不動産を活用することは、定期的な収入源を確保しつつ、不動産の価値を維持または増加させる効果的な手段です。賃貸物件としての利用は、不動産が生み出すキャッシュフローを通じて企業の財務安定性を向上させることができるため、事業承継計画において重要な役割を果たします。さらに、賃貸物件としての運用は、物件の運用コストをカバーし、税負担を最小限に抑えるための費用控除を可能にします。賃貸市場の需要を把握し、適切な物件選びと管理が成功の鍵となります。

不動産活用以外の事業承継対策

中小企業や家族経営の事業では、資産の管理や税務対策が成功の鍵となることが多いです。不動産の活用だけでなく、その他の戦略も事業承継計画には不可欠です。ここでは、事業承継をスムーズに進めるための幾つかの主要な手段を解説します。

事業承継税制の活用

事業承継税制は、相続や贈与が発生した際に、一定の条件を満たす事業について税負担を軽減する制度です。この税制を活用することにより、事業の持続可能性を高めることができ、経済的負担を大幅に削減することが可能です。事業承継税制は、非公開株の取得時に納税が猶予され、特定の要件を満たすことで贈与税が完全に免除される場合もあります。経営者は、この税制の適用を受けるために必要な条件を事前に確認し、計画的に事業承継を進めることが推奨されます。

生前贈与の活用

生前贈与は、経営者が生存中に後継者に資産を移転する方法です。この手法を利用することで、相続時の税負担を軽減し、より多くの資産を効果的に後継者に渡すことが可能になります。年間110万円以下の株式贈与であれば、贈与税が課税されないため、計画的に資産移転を行うことができます。ただし、大規模な贈与を行う場合は、税務上の影響を慎重に評価する必要があります。

M&Aを通じた事業承継

中小企業の場合、適切な後継者がいない場合や、事業拡大を目指す場合には、M&Aが有効な手段となることがあります。他の企業との合併や買収を通じて、事業を承継する方法です。M&Aは、新たな資本を導入し、事業の新たな展開を図る良い機会を提供します。また、M&Aを利用することで、事業の競争力を保つとともに、より広い市場での活動が可能になります。

事業承継成功のための不動産戦略

事業承継において不動産は単なる資産ではなく、戦略的なツールとして活用できます。成功へ導くためには、経営者と後継者が共に理解し、適切な戦略を練る必要があります。ここでは、経営者と後継者へのアドバイス、不動産を利用した資金調達戦略、および法的規制とその対策について解説します。

経営者と後継者へのアドバイス

経営者として事業承継を計画する際には、自身が保有する不動産の現状評価を行い、これを戦略的に活用する方法を検討することが重要です。不動産は事業承継において、資金調達の源泉や税務対策の一環として利用可能ですが、これを最大限に活用するためには、早期からの計画が必要です。また、後継者には不動産管理の知識とスキルを身に付けさせ、不動産の評価や市場動向を理解させることが必要です。不動産を効果的に管理し、その価値を維持または向上させる能力は、事業の長期的な成功に直結します。

不動産を利用した資金調達戦略

不動産は、事業承継に必要な資金を調達するための重要な資産です。例えば、不動産を担保にしてローンを組むことで、事業承継のための資金を得ることができます。また、不動産をリースバックすることで、現金を手に入れつつ、使用権を保持する方法もあります。これにより、事業承継の初期段階で大きな資金を確保しつつ、事業の運営に必要な施設や土地を継続して利用することが可能となります。しかし、これらの戦略にはリスクも伴うため、財務状況を慎重に分析し、将来のキャッシュフローを考慮に入れる必要があります。

法的規制と対策

事業承継と不動産活用には、様々な法的規制が伴うので注意してください。たとえば、不動産の売買や譲渡には、契約書の法的要件や税法に基づく報告義務(確定申告)が求められます。また、不動産を事業の一部として後継者に譲渡する場合、相続税や贈与税の計算に影響を与える可能性があります。法的要件を適切に理解するうえでは、不動産法、税法、企業法の専門家と連携することが必要です。専門家の助言を受けることで、法的リスクを避け、税負担を最適化し、事業承継をスムーズに進行させることができます。

事業承継を成功に導くためには、不動産の戦略的な活用が鍵となります。経営者と後継者は、不動産の価値を適切に評価し、その潜在的な利益を最大限に引き出すための計画を立てることが求められます。

不動産の事業継承は慎重に!

事業承継において不動産を扱う際には、その価値を正確に評価し、戦略的な活用法を考慮することがとても重要です。不動産価格の変動リスクや周辺環境の変化など、様々な外部要因が事業承継プロセスに影響を与え得るため、これらのリスクに対しては事前の準備と迅速な対応が求められます。また、法的規制を遵守し、節税効果を最大化するための戦略も重要です。事業承継は単なる経営の移行ではなく、企業の持続可能性を左右する重要なプロセスです。不動産の適切な管理と活用により、スムーズで効果的な事業承継が可能となるでしょう。

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