人材派遣会社・紹介業のM&A動向とは?売却事例や流れを解説

近年、人材派遣会社や人材紹介業界では、競争力の強化や市場シェアの拡大、サービスの多様化を目指してM&A(合併・買収)が盛んに行われています。労働市場の変化やデジタルトランスフォーメーションの進展に伴い、企業は新たなニーズに応えるため、または戦略的な事業拡大を図るためにM&Aを活用しています。この動きは、業界の再編や成長加速に大きく寄与しており、人材業界の構造変化を牽引していると言えるでしょう。本記事では、人材派遣会社・紹介業に関する近年の動向を紹介していきます。

人材派遣会社・紹介業の概要

人材派遣業界は、労働者派遣法に基づき運営される許可・登録制の事業であり、企業のニーズに応じて派遣スタッフを提供し、その対価として派遣料金を徴収するシステムを持っています。

人材派遣会社・紹介業界では、人材派遣会社が雇用者の立場にあり、派遣されるスタッフは顧客企業において指示に従って働きます。2022年6月1日現在の派遣労働者数は前年比10.4%増の約186万人に上り、このうち無期雇用派遣労働者は10.3%増の約74万6661人、有期雇用派遣労働者は10.4%増の111万4913人となっています。特に製造業で働く派遣労働者数は14.0%増の約41万人というデータがあります。

1986年の派遣法成立以来、派遣可能業務は特定されてきましたが、1999年には派遣業務が原則自由化され、人材派遣市場は急速に拡大しました。改正労働者派遣法の施行により、有期雇用の派遣社員が同一事業所で働ける期間が3年に統一されましたが、特定の条件下では派遣先での無期限雇用も可能となっています。

海外展開においては、パーソルホールディングス、パソナグループ、リクルートホールディングスなどの大手がアジアを中心に拠点を展開しています。しかし、人材派遣が法制上認められていない国もあり、そうした場所では人材紹介事業が主流となっています。リクルートホールディングスは、欧米やオーストラリアの派遣会社の買収や子会社化を進め、派遣事業の国際化を図っています。

出典: 労働者派遣事業の令和3年6月1日現在の状況(速報)

人材派遣会社・紹介業の市場動向

リーマンショック後の景気後退や労働者派遣を巡る規制強化の影響で、2009年以降人材派遣市場は大きく縮小しました。

しかし、その後の市場は再び増加傾向にあり、矢野経済研究所によると2022年度の人材派遣業市場は前年度比7.6%増の8兆8600億円となっています。特にITエンジニアなどIT関連職種の需要が伸びていることがこの成長を支えています。

派遣法の遵守が強化されたことで、派遣先企業も事務系派遣の採用に慎重になりました。2012年10月の改正労働者派遣法では、30日以内の短期派遣が原則禁止され、2015年9月の改正では派遣先企業が3年ごとに派遣社員を交代させる必要があります。しかし、人手不足の影響で、派遣社員の確保が困難になるという懸念が強まっています。

この問題に対処するため、派遣会社は就業先の有無に関わらず給与が保証される無期雇用の派遣社員を増やす動きを見せています。2018年4月からは、改正労働契約法に基づき、勤続年数が5年を超える有期雇用の希望者は無期雇用への転換を申し入れることが可能となりました。これにより、人材派遣大手は一般事務派遣の料金を1~3割引き上げ、コスト増加分を転嫁しています。

加えて、政府は大手銀行などの人材を地方の中小企業に派遣する仕組みを検討しており、2021年春にも本格的に始動する予定です。これは経営や財務に詳しい人材をリスト化し、中小企業の要望に応じて紹介するというものです。この取り組みは、地方経済の活性化や中小企業の支援を目的としています。

人材派遣業界は、リーマンショックやコロナ禍などの大規模な経済的ショックを経てもなお、変化し続ける労働市場のニーズに応え、市場を拡大しています。IT関連職種の需要増加や改正労働者派遣法による制度の変更、さらには無期雇用派遣の普及などが、この業界の成長を支える要因となっています。

一方で、規制強化や人手不足などの課題も存在し、業界全体でこれらの問題に対応するための戦略が求められています。未来に向けて、人材派遣業界はこれらの挑戦にどのように対処し、成長を持続させていくかが注目されています。

人材派遣会社・紹介業におけるM&Aの現状と課題

近年、人材派遣会社や人材紹介業界では、業界の再編やサービスの多様化を目的としたM&A(合併・買収)が活発に行われています。この流れは、人手不足の解消、新たなサービスの提供、地域や業界でのシェア拡大など、さまざまな目的で推進されており、業界の構造変化や競争力強化に大きく寄与しています。

M&Aの背景と目的

人材派遣・紹介業界におけるM&Aの背景には、労働市場の変化が挙げられます。高齢化社会の進行による労働人口の減少や、産業構造の変化に伴う人材ニーズの多様化が顕著になっています。また、デジタル化の進展により、IT人材など特定分野への需要が高まっているのも特徴です。これらの市場環境の変化に対応し、より幅広い業種や職種での人材ニーズに応えるため、企業間でのシナジー効果を見込んだM&Aが積極的に行われています。

M&Aの流れ

M&Aのプロセスは、一般的にターゲット企業の選定から始まります。人材業界では、特定の地域や業種に強みを持つ企業、あるいは独自の採用ノウハウやIT技術を有する企業が買収対象となることが多いです。買収の意向が固まったら、両社間で詳細なデューデリジェンス(財務・法務調査)を行い、企業価値の評価やリスクの洗い出しを行います。その上で買収価格や条件が交渉され、合意に至れば正式に契約が締結されます。

M&Aによるシナジー効果

人材派遣・紹介業界におけるM&Aの最大のメリットは、シナジー効果の実現にあります。例えば、人材派遣会社がITコンサルティング会社を買収することで、IT人材の派遣だけでなく、顧客企業へのコンサルティングサービスも提供できるようになるケースがあります。また、地域密着型の人材会社を複数買収することにより、全国ネットワークの構築が可能となり、大手企業との取引機会が拡大します。このように、M&Aを通じてサービスの多様化や市場シェアの拡大、業務効率の向上など、多方面でのシナジー効果が期待されます。

M&Aの課題と展望

人材派遣・紹介業界のM&Aは、シナジー効果の実現や市場競争力の強化を目指す一方で、文化や価値観の違いによる統合後の組織調整、従業員のモチベーション管理など、さまざまな課題を伴います。企業文化の違いは特に、人材を主な資源とする業界でのM&Aでは重要なポイントとなり、成功の鍵を握ります。買収後に従業員が離職してしまうと、その知識やネットワークも失われるため、従業員が新しい組織にスムーズに適応できるような環境整備が求められます。

また、M&Aによる急激な組織の拡大は、経営資源の過剰な集中を招くリスクもあります。そのため、買収後の統合プロセスにおいては、新たに加わったビジネスや従業員のマネジメントに十分な注意が払われる必要があります。買収した企業の価値を最大限に活かすためには、経営陣だけでなく、現場の従業員も含めたコミュニケーションが重要です。

展望としては、人材派遣・紹介業界におけるM&Aは、今後も続くと予想されます。特に、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、IT人材の需要は高まる一方であり、この領域での競争力を高めるためにM&Aが活用されるケースが増えるでしょう。さらに、グローバル化が進む中で、海外の人材サービス会社とのM&Aによって、国際的なビジネス展開を加速する企業も現れると考えられます。

総じて、人材派遣・紹介業界におけるM&Aは、業界の成長と多様化を促進する重要な戦略となり得ます。しかしながら、その成功は、買収後の統合管理や文化的適応、そして戦略的な目的の明確化にかかっています。これらの課題を乗り越え、シナジー効果を最大化することが、業界全体の持続可能な発展につながるでしょう。

人材派遣会社・紹介業のM&A事例6選

ここからは、近年行われた人材派遣会社・紹介業のM&A事例を6つ紹介していきます。

ファイズホールディングスによるファインドオンの子会社化

ファイズホールディングス(以下、ファイズHD)は2024年2月1日、東京都千代田区を拠点とする人材派遣企業、ファインドオンの子会社化を発表しました。子会社化のために、ファイズHDはファインドオンの全普通株式490株を1億5400万円で2024年2月28日に取得します。ファイズHDは、サードパーティーロジスティクス(荷主が第三者であるロジスティクス業者に対して物流業務全般を一括して委託すること)を核とするECソリューションの包括的提供者であり、この子会社化を通じて事業領域を拡大します。

ファインドオンは、登録型の一般労働者派遣事業を主軸としており、2023年7月期の売上高は3億8,300万円、営業損益は2,800万円の赤字でした。この買収は、ファイズHDの経営理念「人と人のつながりで『未来のあたりまえ』を創造する」を具現化する戦略の一環として行われます。ファイズHDは、ファインドオンのサービスを利用することで、自社グループ内や提携する取引先に対してより一層の付加価値を提供し、両社の事業展開をさらに強化できると判断しました。

この子会社化によって、ファイズHDは物流業務における人的資源の供給を内製化し、効率的かつ柔軟な人材派遣サービスを展開することが可能になります。これは、特にEC業界や物流業界において、急速に変化する市場環境と消費者のニーズに迅速に対応するために重要です。ファインドオンの専門知識とネットワークを組み込むことで、ファイズHDは顧客に対するサービスの質を高め、新たな価値提案を実現することが期待されます。

この取引は、ファイズHDにとって重要なマイルストーンであり、経営資源を最適化し、企業価値をさらに向上させることに寄与すると考えられます。また、ファインドオンにとっても、ファイズHDグループの一員として、より広い顧客基盤へのアクセスと事業の拡大機会を得ることになり、双方にとって有益な展開が期待されます。このような戦略的パートナーシップは、業界全体のサービス品質の向上や、労働市場における新たな標準の確立に寄与する可能性があります。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/9325/tdnet/2387224/00.pdf

メンタルヘルステクノロジーズによるタスクフォースの子会社化

メンタルヘルステクノロジーズが、2024年2月29日に大阪市に本社を置く医療機関向け人材サービス企業、タスクフォースを子会社化すると発表しました。この取引により、メンタルヘルステクノロジーズはタスクフォースの代表取締役から556株を22億9,500万円で取得し、議決権所有割合を0%から100%へと高めています。メンタルヘルステクノロジーズは、「産業医クラウド」と呼ばれる産業保健関連サービスを提供しており、産業医や産業保健師による役務提供サービスとメンタルヘルスケアサービスをパッケージ化しています。このサービスは、労働環境の改善を目的としたサービスです。

タスクフォースは、医療機関の現場に深く入り込む人材サービスを提供する企業であり、2023年1月期には27億円の売上高と6,900万円の営業利益を記録しています。今回の子会社化により、メンタルヘルステクノロジーズはタスクフォースの専門知識とネットワークを活用して、医療機関向けに特化した労働環境の改善に直接的に取り組むことが可能となります。

メンタルヘルステクノロジーズのビジョン「ウェルビーイングのスタンダードを創る」のもと、タスクフォースの株式取得は、医療機関の労働環境改善という重要な事業課題に対して、より効果的に対応するための戦略的決定です。看護補助者領域における人材サービスのパイオニアであるタスクフォースとの統合により、医療機関における看護師の供給不足や医師の働き方改革に対する需要の増大に効果的に応えることができます。

両社は事業モデルの類似性が高く、「タスクシフティング」の推進を加速するサービスを提供している点で共通しています。この統合により、B2B営業、マーケティング・ブランディング、カスタマーサクセスなどのオペレーショナルエクセレンスを共有し、両社の成長を加速させることが期待されます。また、タスクフォースの経営体制は、医療関連領域における専門性や企業経営のノウハウを持つメンバーを中心に構築され、この統合がより一層の企業価値・株式価値の向上に寄与することでしょう。

今回のM&Aによって、メンタルヘルステクノロジーズとタスクフォースの両社にとって重要なマイルストーンとなり、医療機関向けの人材サービス分野において新たな価値を創出し、労働環境の改善を目指す両社の強みを生かしたサービスの提供が可能になります。この戦略的な統合により、メンタルヘルスと産業保健の分野におけるサービス品質の向上と、医療機関の現場で直面する課題へのより具体的な対策提案が実現されることが期待されています。両社が一体となり、より広範な顧客基盤に対して高品質なソリューションを提供することで、ウェルビーイングの新たなスタンダードを築くことに貢献するでしょう。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/9218/tdnet/2381829/00.pdf

メイホーアティーボによるイギアルホールディングスの子会社化

メイホーホールディングス(メイホーHD)は、2024年1月17日に、その完全子会社であるメイホーアティーボがイギアルホールディングス(イギアルHD、東京・港)を子会社化することを発表しました。この動きにより、メイホーアティーボはイギアルHDの持株会社であり、人材派遣業のレゾナゲート(東京・渋谷)を傘下に持つ企業の議決権所有割合を100%とする1万株を5億3,000万円で取得します。

レゾナゲートは、国内でトップクラスの高水準の給与と完全オンライン化された派遣サービスを提供しており、その結果、業績を拡大してきました。メイホーHDの広範な営業基盤とレゾナゲートの人材派遣事業のマネジメントシステムを組み合わせることにより、両社はさらなる成長と業界全体に大きなインパクトを与える全国展開を目指すとしています。イギアルHDの2023年5月期の連結売上高は22億7473万円、連結営業利益は2,176万円でした。

この株式取得は、「人材関連サービス事業で地域を支える」という経営ビジョンのもと、メイホーアティーボが中間持株会社として、人材派遣事業やカンボジアからの技能実習生送り出しによる人材育成など、継続的かつ安定的な人材供給・派遣に貢献することを目的としています。レゾナゲートの「脱常識で新常識を創る」という理念のもと、最も高い給与水準の提供、派遣スタッフおよびその家族・親族を対象とした健康診断費用の補助、完全オンライン化された派遣サービスなどの革新的な取り組みが、メイホーグループに新たな価値をもたらすと期待されています。

この子会社化により、メイホーアティーボは、人材関連サービス事業セグメントの会社とのネットワークを強化し、経営基盤の安定化に取り組みます。さらに、経済社会環境の変化に対応し、地域の雇用および活性化を目指すことで、社会への貢献を深めていく方針です。この戦略的な統合により、メイホーグループは人材派遣業界において、より競争力のあるポジションを確立し、業績拡大と共に業界に新たな風を吹き込むことを目指しています。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/7369/tdnet/2381708/00.pdf

ヤマトHDによるワールドHD子会社への子会社株式譲渡

宅配便業界のリーダーであるヤマトホールディングス(ヤマトHD)は、2023年7月27日に、人材サービスや業務請け負い事業を手がける100%子会社であるヤマト・スタッフ・サプライ(YSS、東京・千代田)の株式51%を、人材サービス業界の大手であるワールドホールディングス(ワールドHD)の子会社で福岡市に拠点を置くワールドスタッフィング(WSF)に譲渡することを発表しました。この株式譲渡は、双方の業務提携の一環として実施されたものです。

この提携および子会社株式の譲渡は、ヤマトHDとワールドHDがそれぞれの強みを活かし、経営資源の有効活用を図ることで、収益機会の維持や将来的な競争力の確保を進めるとともに、より多くの人が活きる形を創出し、日本社会の持続的な発展に貢献することを目的としています。

ヤマトHDは、サプライチェーンのEnd to Endに対する提供価値の拡大を目指し、事業構造改革に取り組んでおり、YSSのワールドHDへの譲渡は、この目標達成に向けた戦略的なステップの一つとして位置づけられます。一方、ワールドHDは、物流分野を含む幅広い人材ビジネスを展開し、特にサービス領域の中核事業として物流倉庫の一括請負に強みを持っています。

YSSの株式をワールドHDの子会社であるWSFに譲渡することで、ヤマトHDはワールドHDが持つ幅広い業種・職種での人材マネジメントのノウハウを注入し、YSSの事業拡大を目指します。これにより、YSSはワールドHDの連結子会社となり、より多くの人々にとって活躍できる場を提供することが期待されます。

両社はこの提携を通じて、EC化の進展や消費行動・流通構造の変化、労働人口の減少、働き方の多様化など、日本の物流業界を取り巻く様々な変化に対応し、より豊かな社会の実現へ貢献することを目指しています。この動きは、両社の長期的な成長戦略および社会貢献への取り組みの一環であり、業界内外から注目されています。

出典: https://www.yamato-hd.co.jp/news/2023/newsrelease_20230727_1.html

ディンプルによるココペリの子会社化

ワールドホールディングスの子会社であるディンプル(大阪市)は、2023年7月1日に、労働者派遣事業と不動産仲介業務を展開するココペリ(東京・港)を新たな子会社としました。この戦略的な動きにより、ディンプルは不動産業界に特化した人材サービスの提供を拡大し、さらにその事業領域を強化することを目指しています。

ディンプルは、これまで全国の百貨店や商業施設におけるインフォメーション運営を通じて、人材採用や活用に関する豊富なノウハウを蓄積してきました。ココペリの子会社化により、この経験と知識を不動産業界に応用し、モデルルーム受付やマンションコンシェルジュ、カスタマーサポートなどの分野で、新たな人材サービスを展開する計画です。この経営統合によって、ディンプルは不動産市場における人材需要に対応し、そのサービスの質を高めることが期待されます。

ココペリは、子会社化に伴い「ディンプルリアルティスタッフ」へと社名を変更します。この名称変更は、ディンプルが不動産業界向けに特化した人材サービスを提供する意志を明確に示すものであり、不動産流通市場における同社のネットワークと専門性をさらに強化することを意味しています。

この子会社化は、ディンプルにとって不動産業界へのさらなる足がかりを作り、業界内での競争力を高める重要なステップです。また、ココペリ(現ディンプルリアルティスタッフ)の不動産に関連する豊富な経験とディンプルの人材サービス運営能力の組み合わせは、不動産業界に新たな価値を提供し、顧客満足度の向上に寄与することが期待されます。このような経営戦略は、両社の持つリソースと強みを最大限に活かし、業務効率の向上と市場での更なる成長を目指すものです。

出典: https://www.dimples.co.jp/news/20230612/

ウィルグループによる子会社ハイブリィド社の株式譲渡

ウィルグループは、2023年3月20日に自社の子会社であるITコンサルティング事業を手がけるハイブリィド(東京・港)の一部株式をHIBパートナーズ(同・東京)へ譲渡すると発表しました。この譲渡は、ウィルグループが持続可能な事業成長と効率的な事業機会の発掘を目的として2015年11月にハイブリィドを子会社化して以来、行われたものです。初回の株式譲渡では、ウィルグループはハイブリィド株97株を譲渡し、これによりウィルグループの議決権所有割合は51.2%から18.7%へと低下しました。この譲渡による益は2億5700万円に上りました。

さらに、2023年6月22日にウィルグループはハイブリィドの残りの全株式をHIBパートナーズへ譲渡すると発表しました。この決定により、ハイブリィドは2023年4月1日からウィルグループの連結子会社の範囲から外れることになりました。この最終的な株式譲渡は2023年6月30日に行われ、ウィルグループは2024年3月期の単独決算において、投資有価証券売却益として1億4000万円を計上する予定です。

ウィルグループはハイブリィドの子会社化により、自社の人材サービスのノウハウとハイブリィドのITコンサルティングの知見を組み合わせ、事業拡大と事業機会の発掘効率を高めることを目指してきました。想定していたシナジーが十分に実現されなかったにも関わらず、ハイブリィドの売上高は大幅に拡大し、グループの業績に寄与するなど、一定の成果を達成したと評価しています。この株式譲渡は、ウィルグループによる事業の選択と集中の戦略の一環として行われ、ハイブリィド及びウィルグループの企業価値向上に資するものと判断されました。

これにより、ハイブリィドは新たな所有者のもとで、その専門性を生かしたサービスをさらに発展させる機会を得ることになります。ウィルグループはポートフォリオのシフトを通じて、より戦略的な事業構造への転換を目指し、企業価値の最大化に努めていく方針です。

出典: https://ssl4.eir-parts.net/doc/6089/tdnet/2253035/00.pdf

まとめ

人材派遣会社・紹介業のM&A動向は、業界内での競争力強化や事業の多様化、そして全国展開や国際的なビジネスの拡大など、企業成長の重要な戦略として位置づけられています。M&Aには多くのチャンスがありますが、成功を収めるには買収後の統合プロセスの管理や、文化的違いの克服など、様々な課題の解決が必要です。今後も人材業界は変化し続けるでしょうが、M&Aによるシナジー効果の最大化が、その変化に対応し、さらなる発展を遂げるための鍵となることは間違いありません。