会社売却とは?流れ・注意点・メリットを分かりやすく解説!

会社売却は、経営者にとって大きな決断であり、また企業の未来を大きく左右する重要なプロセスです。近年、後継者不足や経営課題の解決、新たな成長戦略の一環として、会社売却やM&Aが中小企業を中心に活発化しています。

しかし、「会社売却をどのように進めるべきか」「売却のメリットや注意点は何か」といった疑問を持つ経営者も少なくありません。

本記事では、会社売却の基本概念やプロセスをわかりやすく解説し、そのメリットや注意点についても詳しく紹介します。また、価格算出方法や成功のポイントを踏まえたうえで、会社売却をスムーズに進めるための具体的な手順をお伝えします。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

会社売却とは?その基本概念を理解しよう

会社売却は、近年注目を集める経営戦略の一つです。特に中小企業では、後継者不足や成長の限界といった課題を解決するため、会社売却を選択肢に加えるケースが増えています。このセクションでは、会社売却の定義、近年の売却動向、中小企業が会社売却を検討する主な理由について詳しく解説します。

会社売却の定義

会社売却とは、自社の株式、事業、資産などを第三者に譲渡し、その対価として金銭を得ることを指します。このプロセスにおいて、経営権や所有権が買い手企業へ移転する点が特徴です。

会社売却は「M&A(Mergers and Acquisitions)」の一環として行われることが多く、特に中小企業では「株式譲渡」という手法が一般的に用いられます。

会社売却は単なる「売る行為」ではなく、譲渡後の企業価値の維持や従業員、取引先への影響を最小限に抑えることが重要です。また、適正な売却価格の算定や契約条件の調整など、専門的な対応が求められるため、M&A仲介会社や弁護士などの専門家の協力が欠かせません。

近年の会社売却動向

近年、会社売却の件数は増加傾向にあります。中小企業庁が発表したデータによれば、2020年度には中小企業のM&A件数が2,000件を超え、2013年度の約10倍に達しています。この増加の背景には、以下の要因が挙げられます。

  • 後継者不足:少子高齢化による後継者不在の課題。
  • 事業承継ガイドラインの普及:中小企業庁による支援策やガイドラインの提供。
  • コロナ禍の影響:事業環境の変化により事業整理や撤退を考える経営者が増加。

一方で、従来は「敵対的買収」というネガティブなイメージが強かったM&Aですが、現在では「事業承継」や「成長戦略」の一環として肯定的に捉えられるようになっています。また、M&A仲介会社やマッチングサービスの普及により、赤字企業や地方企業でも売却が現実的な選択肢となってきました。

これにより、廃業を選ばず、事業を次世代に引き継ぐ経営者が増えています。

中小企業が会社売却を検討する主な理由

中小企業が会社売却を検討する理由はさまざまですが、以下の4つが主な理由として挙げられます。

1. 後継者不足の解消

中小企業では、経営者の高齢化に伴い後継者が見つからないケースが増えています。日本の中小企業の約半数が後継者問題を抱えていると言われており、事業承継のために第三者への会社売却を選ぶ例が増えています。

2. 成長の限界に対応

単独での成長が困難になる中、他社との連携や売却による成長戦略が注目されています。特に、大企業や成長中の中堅企業の傘下に入ることで、資金やノウハウの提供を受けられ、企業価値の向上を図ることができます。

3. 経営者のリタイアや健康問題

経営者自身が引退を考える際に、会社売却が有効な選択肢となります。売却により、まとまった資金を得られるだけでなく、引退後の生活資金としても活用できます。

4. 経営環境の変化への対応

市場環境や経営環境の変化が激しい昨今、変化に対応するために会社を売却するケースが増えています。コロナ禍による事業再編やデジタルトランスフォーメーションの推進がその例です。

会社売却の主なメリット

会社売却は、事業や経営者、従業員にとってさまざまなメリットをもたらします。特に中小企業では、後継者問題や経営資源の限界を乗り越えるために、売却を選択するケースが増えています。このセクションでは、会社売却による具体的なメリットを詳しく解説します。

会社の存続を可能にする

会社売却の最も重要なメリットの一つは、会社自体を存続させることができる点です。中小企業において、経営者の引退や後継者不在の問題に直面する場合、廃業を選択する企業も少なくありません。しかし、会社売却を選ぶことで、親族や従業員に後を継ぐ人がいなくても、第三者による事業承継が可能となります。

売却後は、新しい経営者のもとで会社が存続するため、これまで築き上げてきた事業基盤やブランド、顧客との関係を維持できます。また、友好的なM&Aが実現すれば、従業員の雇用や取引先との関係も守られるケースが多く、会社全体の安定性を保ちながら未来へ繋げることができます。

事業成長の促進

会社売却は、新しい経営リソースを活用することで事業成長を加速させるチャンスを提供します。売却後、譲渡先の企業が持つ資金力や人材、技術、ノウハウを活用することで、自社単独では実現が難しかった成長を遂げられる場合があります。

例えば、譲渡先の親会社が持つ強固なブランド力や流通網を利用することで、新規市場への参入が容易になります。また、買い手企業とのシナジー効果によって、業務の効率化や収益性の向上も期待できます。特に、大手企業の傘下に入ることで、資金調達の面での安定が得られ、将来の投資計画も柔軟に実行可能になります。

売却利益の獲得

会社売却のもう一つの大きなメリットは、売却対価としてまとまった金銭を得られることです。この売却利益は、経営者個人の引退後の生活資金、次の事業展開への投資、あるいは借入金の返済など、さまざまな用途に活用できます。

例えば、株式譲渡による売却では、売却対価が直接経営者の手元に入ります。その資金を新たな事業の立ち上げや、家族との余暇に使うことで「第二の人生」を充実させることができます。また、事業譲渡の場合は、売却で得た資金をもとに経営資源を整理し、他の主要事業に集中することも可能です。

経営者の個人保証からの解放

中小企業の経営者が頭を悩ませる問題の一つに、「個人保証」の存在があります。会社が銀行などから融資を受ける際、経営者が個人保証人になるケースがほとんどです。このため、経営者個人が会社の債務に対して無限責任を負うことになり、事業のリスクが経営者自身やその家族にまで及びます。

会社売却を行うと、通常は譲渡先の企業が債務や個人保証を引き継ぐため、経営者はその責任から解放されます。これにより、経営者の精神的な負担が大幅に軽減され、引退後の生活や新たな挑戦に集中することが可能になります。

従業員や取引先への影響を最小限に抑えられる場合も

会社売却のもう一つの利点は、従業員や取引先への影響を最小限に抑えながら事業を存続させられる点です。多くの場合、買い手企業は売却後も従業員の雇用を維持し、これまで築き上げてきた取引先との関係を続けることを目指します。

特に、買い手企業が同業種の場合、既存の従業員のスキルやノウハウがそのまま活用されることが多く、雇用条件も大きく変更されないケースが多いです。また、取引先にとっても、会社の存続はビジネスを安定させる要因となるため、売却による関係悪化を回避できる可能性が高いです。

さらに、売却契約に「雇用条件や業務内容を一定期間変更しない」といった条項を盛り込むことで、従業員の安心感を高めることができます。このような取り組みを通じて、売却後も会社の良好な運営を維持できるでしょう。

会社売却の注意点

会社売却は経営戦略や事業承継の一環として有効な手段ですが、成功に至るまでにはいくつかの注意点があります。売却プロセスにはリスクや課題が伴い、それらを事前に把握しておくことで、スムーズな進行と良好な結果が得られる可能性が高まります。このセクションでは、会社売却における主要な注意点を解説します。

売却先探しに時間がかかる場合がある

会社売却では、最適な売却先を見つけるまでに予想以上の時間を要することがあります。これは、売却先の条件や希望価格、事業規模、業種、立地などが合致する買い手を探す必要があるためです。特に中小企業の場合、買い手企業が限られるため、交渉相手が見つかるまでに数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。

さらに、買い手が見つかっても、その後の交渉が長引くケースもあります。価格の妥協点や売却後の経営方針、従業員の雇用条件など、詳細な取り決めが求められるため、プロセスが複雑化することがあるからです。そのため、会社売却を検討する際は、時間に余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。

思い通りの条件で売れないリスク

会社売却では、必ずしも経営者の希望通りの条件で売却が成立するとは限りません。譲渡価格が期待より低くなる、従業員の待遇が変更される、経営方針が買い手側に大きく影響を受けるなどのリスクがあります。

例えば、売却価格は市場環境や買い手企業の評価、デューデリジェンス(買収監査)の結果など、多くの要因に左右されます。また、買い手が経営方針の大幅な変更を望んだ場合、経営者が希望する形での売却が難しくなることも考えられます。

これらのリスクを軽減するためには、売却の優先順位を明確にし、どこで妥協するのかを事前に検討しておくことが重要です。また、交渉においては専門家の助言を得ることで、適切な妥協点を見つけやすくなります。

従業員の雇用条件や処遇の変化

会社売却によって、従業員の雇用条件や処遇が変化する可能性がある点にも注意が必要です。特に、事業譲渡の場合は、従業員と新たに雇用契約を結ぶ必要があるため、契約条件の変更や雇用継続が懸念されます。

中小企業庁の調査によると、M&Aを実施した企業の多くが従業員の雇用を維持しているものの、売却後に給与や雇用形態が変更されるケースも存在します。これが従業員の不安を引き起こし、結果的に退職につながるリスクもあります。

従業員の雇用条件を守るためには、売却契約書に「雇用条件を一定期間変更しない」といった条項を盛り込むことが有効です。また、従業員とのコミュニケーションを密に取り、売却後の状況について十分に説明し、理解を得る努力が求められます。

取引先や顧客との信頼関係の維持

会社売却は取引先や顧客との関係にも影響を与える可能性があります。特に、売却に伴う経営方針や担当者の変更が、取引条件や信頼関係に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

取引先や顧客にとって、事業の安定性は重要な要素です。そのため、売却後の体制や取引条件について適切に情報共有を行い、信頼関係を維持することが必要です。事前に主要な取引先や顧客との対話を行い、売却の目的や新体制のメリットを説明することで、不安を軽減させることができます。

秘密保持の重要性

「M&Aは秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われるほど、情報の管理は会社売却の成否を左右する重要な要素です。売却交渉が進む中で、従業員、取引先、競合企業に情報が漏れると、事業運営に深刻な影響を与えるリスクがあります。

例えば、売却の噂が広まると、従業員の士気低下や顧客の離脱、取引条件の変更などが起こり得ます。また、買い手企業が上場企業である場合、インサイダー取引のリスクも考慮する必要があります。

秘密保持を徹底するためには、売却先候補と秘密保持契約(NDA)を締結し、情報管理のプロセスを明確にすることが重要です。また、情報を共有する範囲を必要最小限にとどめ、進捗状況に応じて適切に情報開示を行うことが求められます。

会社売却の流れ

会社売却には多くのステップが存在し、各ステップで適切な準備と進行が求められます。このセクションでは、会社売却のプロセスを大まかに9つの段階に分け、それぞれの概要を解説します。

1. 初期相談と準備

会社売却を成功させるためには、最初の準備段階が非常に重要です。このフェーズでは売却の目的や理由を明確化し、必要な専門家やサポート体制を整えます。

売却の目的を明確化

売却を進めるためには、何を達成したいのかを明確にする必要があります。目的が不明確だと、売却先の選定や交渉が複雑化し、最終的なゴールが曖昧になってしまいます。

M&A仲介会社や専門家への相談

売却プロセスは専門性が高いため、M&A仲介会社や弁護士、会計士などの専門家に相談することが不可欠です。これにより、売却全体の流れを把握し、適切な戦略を立てることが可能になります。

2. 資料の準備と企業価値評価

売却に向けた準備段階では、会社の魅力を的確に伝えるための資料作成や、適切な企業価値の評価が必要です。これにより、買い手に対して説得力のある情報を提供できます。

必要資料の整理と作成

買い手企業が売却対象を適切に評価できるよう、決算書や契約書などの資料を整理・作成します。資料の正確性は、交渉のスムーズさを左右します。

株式価値評価の実施

企業価値を算出することで、売却価格の目安を明確にします。このプロセスでは、複数の評価アプローチが活用されます。

3. 売却先候補の選定と打診

売却先を見つけるためには、ノンネーム資料を活用して広く情報を公開し、適切な候補を絞り込むプロセスが行われます。

ノンネーム資料の活用

匿名化された情報を使い、売却先候補を探します。この方法により、売却対象企業の特定を防ぎつつ、幅広い興味を引き出すことができます。

売却先候補の絞り込みとマッチング

ノンネーム資料に興味を示した企業を絞り込み、最適な売却先候補を選定していきます。このプロセスは、M&A仲介会社のネットワークと専門知識が大いに役立ちます。

4. トップ面談と条件調整

経営者同士の直接的な対話を通じて、相互理解を深めるトップ面談が実施され、その後具体的な条件交渉が進められます。

経営者同士の会談

トップ面談は、経営者同士が理念や将来のビジョンを共有し、信頼関係を構築する重要な機会です。

条件交渉の進め方

面談後、売却価格や従業員の処遇など、具体的な条件について交渉を行います。ここでは、M&A仲介会社が重要な役割を果たします。

5. 基本合意書の締結

条件が大筋で合意に至ると、次のステップとして基本合意書が締結され、独占交渉権が付与されます。

独占交渉権と条件の確定

基本合意書では、売却価格やスケジュール、独占交渉権などが取り決められます。この段階で大まかな条件が確定します。

6. デューデリジェンス(買収監査)

基本合意書の締結後、買収先企業はデューデリジェンス(買収監査)を実施します。この段階では、売却対象の会社が抱えるリスクや課題を正確に把握するための詳細な調査が行われます。

財務・法務・事業リスクの調査

デューデリジェンスでは、財務、法務、人事、事業運営に関する多角的な調査が行われます。具体的には、財務データの整合性、未払い税金や訴訟リスクの有無、契約書の内容確認などが含まれます。このプロセスは、外部の専門家(弁護士や公認会計士など)によって実施されるため、売却側は資料やデータの提供を迅速に行う準備が求められます。

デューデリジェンスの結果は最終的な契約内容に影響を与えるため、売却側としては不備のない対応が必要です。

7. 最終契約の締結とクロージング

デューデリジェンスが完了し、売却条件が最終的に合意に至った場合、最終契約書を締結し、クロージング(取引の完了)が行われます。

契約内容の最終確認

最終契約書では、売却条件が詳細に規定されます。株式譲渡の場合、譲渡する株式数や売却価格、支払いスケジュール、違約時の対応などが明記されます。売却側は契約内容を慎重に確認し、不利な条件が含まれていないか専門家のサポートを受けながら確認を進めます。

株式や資産の引渡し

最終契約書の調印後、株式や資産の引渡しが行われます。これには、売却価格の受け取りや株主名簿の書き換えなど、手続き上の処理が含まれます。これをもって、正式に会社の売却が完了します。

8. ディスクロージャー(情報開示)

売却が成立した後、関係者への情報開示(ディスクロージャー)が重要なステップとなります。適切なタイミングで、関係者に情報を共有することで混乱や不安を最小限に抑えることができます。

社員や取引先への説明

売却の詳細が確定した後、社員や取引先に対して説明を行います。この際、売却の理由や今後の事業方針、従業員への影響などを丁寧に説明し、不安を払拭することが重要です。取引先には、取引条件の変更がない場合や、事業の継続性が保たれることを伝えることで、信頼関係を維持します。

情報発表のタイミング

ディスクロージャーは、タイミングを慎重に計画する必要があります。早すぎる情報公開は市場や従業員に混乱を招く可能性があるため、M&A仲介会社や広報担当と相談しながら進めます。

9. PMI(経営統合)

会社売却は、売却手続きが完了した後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)が成功の鍵となります。売却後のシナジー効果を最大限に発揮するためには、計画的かつ段階的な統合が必要です。

売却後の統合プロセスの実行

PMIでは、売却先企業と譲渡企業の組織や文化の統合、従業員の処遇、システムやプロセスの調整が行われます。これにより、売却先企業が計画していた経営目標を実現しやすくなります。統合プロセスをスムーズに進めるためには、売却前の段階からPMI計画を策定しておくことが望ましいです。

会社売却の流れは多くのステップを伴いますが、それぞれの段階で適切な準備を行うことで、スムーズかつ成功につなげることができます。専門家の助けを借りながら、各プロセスにしっかりと取り組むことが重要です。

会社売却の価格算出方法

会社を売却する際に適正な価格を設定することは、成功するM&Aの鍵を握る重要な要素です。価格算出には「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つの主要な方法があり、それぞれ異なる視点で企業価値を評価します。ここでは、それぞれの特徴、メリット、注意点について詳しく解説します。

コストアプローチ

コストアプローチは、企業の現在の純資産価値を基に価格を算出する手法です。貸借対照表上の資産や負債を再評価し、差し引いた純資産を企業価値として算出します。この方法は、特に中小企業やスタートアップなど、将来収益の予測が難しい企業に適している場合があります。

特徴とメリット

  • シンプルで客観的: コストアプローチは、財務諸表に基づいて計算を行うため、計算がシンプルで、客観性が高い点が大きな特徴です。特に、貸借対照表上の数値が正確である場合、この手法は信頼性のある結果を提供します。
  • 実態財務状況の把握: 資産と負債を時価評価することで、企業の現在の実態財務状況を明確に把握することができます。
  • 無形資産の評価も可能: 時価純資産法を活用することで、特許、ブランド価値、技術力、従業員スキルなどの無形資産も評価対象に含められます。

注意点

  • 収益性が考慮されない: コストアプローチは、現在の資産価値にのみ着目するため、将来の収益性や成長性が評価に反映されません。将来の事業拡大が見込まれる場合、この方法だけでは不十分です。
  • 市場動向を反映しない: 他社の動向や市場の需要と供給を考慮しないため、市場価値と大きく乖離する可能性があります。
  • 帳簿の正確性に依存: 帳簿上の数値が不正確な場合、企業価値も正確に評価されないリスクがあります。特に簿外債務などの存在には注意が必要です。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、類似企業や業界内の取引価格を基に企業価値を評価する方法です。このアプローチでは、他の企業の取引データや市場トレンドを参考にして、相場感覚に基づいた価格設定を行います。

特徴とメリット

  • 市場価格を反映: 同業種や類似規模の企業の市場取引データを用いるため、企業価値が市場実勢価格に近くなります。これにより、投資家や買収側の納得感を得やすい評価が可能です。
  • トレンドに敏感: 業界全体の成長や経済状況を反映できるため、現在の市場トレンドを捉えた価格設定が可能です。
  • 買い手に馴染みやすい: 市場基準で算出された価格は、買い手側の理解を得やすく、交渉をスムーズに進める助けになります。

注意点

  • 類似企業の選定が困難: 特に中小企業やユニークなビジネスモデルを持つ企業では、適切な比較対象を見つけるのが難しくなります。比較対象の選定次第で評価結果が大きく変わる可能性があります。
  • 中小企業には不向きな場合も: 非上場企業や特殊な業界では、参考データの入手が難しいため、この手法が十分な精度を発揮できない場合があります。
  • 主観が入りやすい: 類似企業を選ぶ際に主観が入り込み、評価が偏るリスクがあります。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、企業の将来的な収益(キャッシュフロー)を現在価値に割り引いて価格を算出する方法です。この手法は、事業計画や将来の収益予測を基に企業価値を評価するため、成長が期待される企業に適しています。

特徴とメリット

  • 将来収益を反映: 将来のキャッシュフローを評価の基準とするため、企業の成長性や収益性を的確に反映できます。
  • 投資判断の基準として最適: この手法は、買い手にとって投資判断を行う際の基準として最も論理的で、投資効率を重視する買収側には特に魅力的です。
  • 柔軟なシミュレーション: 様々な成長シナリオやリスク要因を考慮し、複数の仮説を基に価格を算出できます。

注意点

  • 計画の主観性: 将来のキャッシュフロー予測が不正確であったり、作成者のバイアスが入ると、評価結果が大きく変わる可能性があります。
  • 計算が複雑: 割引率や成長率の設定には専門的な知識が必要で、評価プロセスが他の手法に比べて複雑です。
  • リスクを過大評価・過小評価する可能性: 将来予測に基づくため、不確定要素が多く、リスクを過大評価または過小評価する恐れがあります。

会社売却を成功させるポイント

会社売却を成功に導くためには、事前の計画や戦略が重要です。単に売却先を見つけて契約を結ぶだけではなく、売却の目的や条件を明確にし、適切な評価と専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。以下では、会社売却を成功させるための具体的なポイントについて詳しく解説します。

売却の目的と条件を明確にする

会社売却のプロセスでは、まず最初に「なぜ売却するのか」という目的を明確にすることが重要です。この目的がはっきりしていないと、売却先を選ぶ基準や条件が曖昧になり、結果として交渉が難航する可能性があります。

売却の目的にはさまざまなものがあります。後継者不在による事業承継、経営資源の集中、新しい経営者による事業の成長、引退後の生活資金の確保などが挙げられます。また、条件の優先順位を設定することで、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。

適切な企業評価を行う

売却価格を設定する際には、企業価値の適切な評価が欠かせません。企業評価が正確でないと、売却価格が過大または過小になり、買い手との交渉に支障をきたすことがあります。

企業価値を評価する際には、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチなど、複数の手法を組み合わせることが推奨されます。それぞれの手法には特徴とメリットがあり、企業の特性や状況に応じて適切な方法を選択します。また、専門家の協力を得て、客観的な視点で評価を進めることも重要です。

法的・税務的なアドバイスを受ける

会社売却は、多くの法的および税務的な手続きが伴うため、専門家のアドバイスを受けることが必須です。契約書の作成や税務処理が適切に行われていない場合、将来的にトラブルが発生するリスクがあります。

弁護士や税理士の支援を受けることで、売却契約におけるリスクを最小限に抑えることが可能です。また、売却に伴う税負担を最適化するためのアドバイスも重要です。たとえば、事業譲渡と株式譲渡の違いにより税務上の影響が異なるため、自社にとって最適なスキームを選ぶ必要があります。

信頼できるM&A仲介会社の選定

M&A仲介会社は、売却先の選定から交渉、契約締結までを一貫してサポートしてくれるパートナーです。特に、中小企業の場合、自社だけで適切な買い手を探すのは難しいため、仲介会社のネットワークと専門知識を活用することが売却成功への近道です。

仲介会社選定のポイント

  1. 実績と専門性: 仲介会社の過去の実績や得意分野を確認しましょう。たとえば、製造業に特化した仲介会社であれば、同業種のネットワークを活用しやすくなります。
  2. 透明な料金体系: 成功報酬制を採用している仲介会社であれば、売却が成立するまで手数料が発生しないため、費用負担を抑えることができます。
  3. コミュニケーション能力: 仲介担当者との信頼関係は非常に重要です。担当者が誠実で、質問や疑問に迅速かつ丁寧に対応してくれるかどうかを見極めましょう。

1社だけに絞らず、複数の仲介会社から提案を受けることで、自社に最適なパートナーを選ぶことが可能になります。仲介会社によって提案内容や得意分野が異なるため、事前にしっかりと比較検討することが重要です。

まとめ: 会社売却は次のステージへの第一歩

会社売却は、経営者や企業にとって、これまでの歩みを見直し、未来への道筋を描く大きなターニングポイントです。この記事では、会社売却の基本的な流れやメリット、注意点を解説し、成功させるための具体的なポイントについて触れてきました。

売却を成功させるためには、まず売却の目的を明確にし、企業価値を適切に評価することが重要です。また、法務や税務の複雑な課題をクリアするためには、信頼できる専門家やM&A仲介会社の力を借りることが必要不可欠です。何よりも、従業員や取引先との信頼関係を大切にし、売却後も企業が存続し成長できる道を見出すことが、経営者としての責任といえるでしょう。

会社売却は終わりではなく、新しいステージの始まりです。未来を見据え、慎重かつ戦略的に行動することで、経営者自身だけでなく、企業に関わるすべての人々にとって有意義な結果を生み出すことができるでしょう。

1分査定を試す

無料で売却額査定

相談する

相談する(秘密厳守)