入札方式のM&Aとは?メリット・仲介方式との違いを解説!

近年、M&Aは大企業のみならず、中小企業にとっても重要な成長戦略や事業承継の手段として注目を集めています。その中でも「入札方式」と呼ばれる方法は、買い手候補間の競争を促進し、売り手側にとって有利な条件を引き出す有力な選択肢となっています。

しかし、入札方式は仲介方式とは異なる特性を持ち、独自のメリットやデメリットが存在します。

本記事では、入札方式の基本概要からその特徴、仲介方式との違い、さらには成功に導くためのポイントまでを解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

入札方式のM&Aとは?

M&Aを検討する際、売り手企業にとって重要なのは、自社に最も適した買い手を見つけることです。そのための方法として「入札方式」が注目されています。入札方式は、複数の買い手候補を募り、提示された条件を比較検討しながら最適な相手を選定するプロセスを特徴としています。

ここでは、まず入札方式の基本的な仕組みやその重要な形式である「クローズドビッド形式」について解説します。また、仲介方式との違いを明らかにし、どのような場面で入札方式が有効なのかを理解するための基礎を提供します。さらに、入札方式の具体的な流れやステップについても見ていきます。

入札方式を選択する際のポイントを知ることで、M&Aプロセスを成功に導くための判断材料を得ることができます。では、まず入札方式の概要から見ていきましょう。

入札方式とは何か?

入札方式とは、売り手企業が複数の買い手候補を募り、それぞれの企業が提示する条件や価格を比較して最も適した買い手を選定する方法です。この方式では、競争環境が生まれるため、買い手候補は売却価格だけでなく、M&A後の経営方針や従業員の雇用条件など、売り手が求める条件を満たすために最善の提案を行う必要があります。

入札方式の最大の特徴は、公開範囲を調整しながら進行する「クローズドビッド形式」が一般的であることです。この形式では、秘密保持契約(NDA)の締結や意向表明書の提出といったフェーズごとに、開示する情報の範囲を少しずつ広げていきます。

これにより、売り手企業の機密情報が不要なリスクにさらされるのを防ぎながら、買い手候補に必要な情報を提供できます。

一方、クローズドビッド形式には情報管理の手間や工程が多いという課題もあります。しかし、この方式を活用することで、売り手企業は条件を公正かつ透明性の高いプロセスで比較検討できるという利点が得られます。

仲介方式との違い

入札方式に対して、仲介方式(相対方式)は、M&Aを専門とする仲介業者が買い手候補と売り手の間に立ち、1対1の交渉を進める方法です。この方式では、主に仲介業者のネットワークを活用して適切な買い手候補を探し出し、双方の条件が一致する相手との交渉が行われます。

仲介方式の最大の特徴は、情報公開範囲が限定される点にあります。買い手候補1社に対してのみ情報が開示されるため、情報漏えいリスクが低く、売り手の企業価値や競争力に悪影響を与えるリスクが抑えられるのが特徴です。

一方で、入札方式では複数の買い手候補が条件を提示するため、価格競争が生まれやすく、売り手にとって有利な条件を引き出しやすい傾向があります。

競争環境があることで、買い手候補は金額面だけでなく、売り手の要望に真剣に向き合う必要があり、より良い条件が引き出せる可能性があるといえるでしょう。

情報公開の範囲とアプローチ方法の違いにより、売り手企業にとって適切な方式を選択することがM&Aの成否を左右する重要なポイントとなります。

入札方式の流れ

入札方式によるM&Aは、以下のプロセスに沿って進行します。

プロセスレターとIMの配布

まず、売り手企業は秘密保持契約(NDA)を締結した買い手候補に対して、入札に関する詳細なルールやスケジュールを記載した「プロセスレター」と、売り手企業の詳細な情報をまとめた「インフォメーションメモランダム(IM)」を配布します。

プロセスレターには、入札の進め方、応募条件、必要な書類、スケジュールなどが明記されています。一方、IMには企業名、事業概要、財務データ、設備状況など、買い手候補が入札を検討するための重要な情報が含まれています。

これらの資料は、売り手企業の魅力を十分に伝える内容である必要があり、専門家の協力のもと作成されることが一般的です。

1次入札と候補者の絞り込み

1次入札では、複数の買い手候補が意向表明書(LOI)を提出します。この意向表明書には、買収希望価格やM&A後の経営方針、従業員の雇用条件などが記載されています。売り手企業はこれをもとに条件を比較し、2~3社程度の候補に絞り込みます。

この絞り込みは、売り手企業にとって効率的な選定を行うと同時に、情報漏えいリスクを最小化するためにも重要です。

デューデリジェンスと最終入札

候補に絞られた買い手企業は、デューデリジェンス(DD)を実施します。このプロセスでは、財務、法務、税務、人事などの多角的な調査を通じて、売り手企業のリスクや価値を詳細に評価します。

デューデリジェンスの結果を受けて、最終入札書を提出し、売り手企業は提示された条件を精査して最適な買い手を選定します。選定においては、提示金額だけでなく、経営方針や買収後の展望など、売り手の価値観や要望を反映できるかどうかが重視されます。

最終的に契約内容が確定し、クロージングが行われることでM&Aは完了します。プロセス全体を通じて、売り手・買い手ともに専門家の支援を受けることが、円滑な取引の実現につながります。

入札方式のメリット

入札方式には、売り手企業にとって有利な条件を引き出しやすいという大きな特徴があります。複数の買い手候補を募ることで競争環境が生まれ、価格や条件の提示において各候補者が最善を尽くす状況が作られるためです。

また、入札方式では公正かつ透明性の高いプロセスが確保され、最終的に売り手の希望に最も合致した買い手を選ぶことが可能です。ここでは、入札方式の具体的なメリットについて見ていきます。

高額入札を期待できる競争環境

入札方式の最大の魅力の1つは、買い手候補同士が競争することで、高額な入札を引き出しやすくなる点です。

買い手候補にとって、競争相手が存在することは大きなプレッシャーとなります。自社が提示する条件が他社よりも劣る場合、選定されないリスクが高まるため、できるだけ有利な条件を提示しようとする心理が働きます。

この競争環境は、売り手にとって高額な入札を得るための強力な要素となります。単なる価格競争にとどまらず、買収後の経営方針や従業員の雇用条件といった非金銭的な要素でも、他の候補者より優位に立とうとする動きが期待できます。

さらに、入札方式ではプロセスが公正かつ透明性を持って進行するため、買い手候補はルールを遵守した上で最善の提案を行う必要があります。このように、公正な競争環境が整うことで、売り手企業にとって最も有利な条件を引き出すことが可能となるのです。

売り手の要望に真剣に向き合ってもらえる

入札方式のもう1つの大きなメリットは、買い手候補が売り手の要望に真剣に対応する姿勢を示す点です。多くの売り手企業にとって、M&A後の従業員の雇用維持や企業の経営方針の継続は、単なる金銭的条件以上に重要な要素です。

入札方式では、こうした売り手の要望が重要な比較ポイントとなるため、買い手候補はこれに応えるための具体的な提案を行わざるを得ません。

例えば、従業員の雇用継続や賃金条件の維持、または地域経済への貢献といった非金銭的な要素は、売り手の経営者が特に重視するポイントです。

入札方式では、買い手候補が競争相手と差別化を図るため、こうした要望を満たす具体的な計画を提示することが求められます。結果として、売り手の希望に真剣に向き合う買い手候補が選ばれる可能性が高まるのです。

適切な買い手選定が可能

入札方式では、売り手が事前に買い手候補を選定するための比較項目を明確に設定できるため、条件の比較が効率的に行われます。例えば、入札時に提出される意向表明書には、買収希望価格、M&A後の経営計画、従業員の雇用条件など、売り手が重視する項目を具体的に記載させることが可能です。

このように比較項目が明確になることで、売り手は各候補の条件を効率的に精査し、最も適切な買い手を選定することができます。また、1次入札で候補を2~3社に絞り込むことで、最終的な判断にかかる負担や情報漏えいのリスクを軽減することもできます。

さらに、プロセスの透明性が確保されているため、株主や従業員といった利害関係者に対しても、選定過程を説明しやすい点も大きなメリットです。

このように、売り手企業は条件比較の効率性と公平性を両立させることで、適切な買い手を選定できるのが入札方式の大きな魅力といえるでしょう。

入札方式のデメリット

入札方式は、売り手企業にとって多くのメリットをもたらす一方で、いくつかのデメリットも存在します。この方式の特性上、買い手候補の選定や情報管理に大きな労力が必要であり、対応する専門家が限られるといった課題が挙げられます。これらのデメリットを理解し、適切に対応することで、入札方式を成功に導く可能性を高めることができます。以下に、具体的なデメリットとその対応策について解説します。

買い手選定に時間と労力がかかる

入札方式では、複数の買い手候補が意向表明書を提出するため、それぞれの内容を精査し、比較する作業が必要です。このプロセスには、提示された価格や条件だけでなく、買収後の経営方針や従業員の雇用計画など、さまざまな要素を考慮する必要があります。

買い手候補が多いほど、これらの精査と対応にかかる時間と労力が増加します。

特に意向表明書には、多岐にわたる条件が記載されているため、それらを正確に比較するには専門的な知識と十分な時間が求められます。さらに、1次入札で候補を絞り込んだ後も、デューデリジェンスや最終交渉などのプロセスが続きます。

これらの工程を効率的に進めるためには、事前に評価基準を明確に設定し、プロセス全体を計画的に進めることが重要です。

売り手企業が自社のみで対応しようとすると、プロセスが停滞するリスクが高まるため、M&A仲介会社やアドバイザーといった専門家のサポートを受けることが推奨されます。こうした専門家の協力を得ることで、選定作業の負担を軽減し、スムーズな進行が期待できます。

情報漏えいリスクが高い

入札方式では、複数の買い手候補に対して企業の情報を提供する必要があるため、情報漏えいリスクが高まります。特に、売り手企業が持つ重要な機密情報が外部に漏れると、企業のイメージ低下や取引先からの信頼喪失といった重大な影響を及ぼす可能性があります。

このリスクを最小限に抑えるために、多くの入札プロセスでは「クローズドビッド」形式が採用されます。この形式では、秘密保持契約(NDA)を締結した後、買い手候補の絞り込みに応じて情報の開示範囲を段階的に広げていきます。

例えば、初期段階では企業概要や財務の基本情報に限定し、最終段階で詳細なデューデリジェンスを許可する形が一般的です。

また、買い手候補が多くなるほど情報漏えいのリスクが高まるため、候補者を2~3社程度に絞り込むことも重要です。さらに、情報管理を徹底するために、売り手企業内でアクセス権限を限定し、入札プロセスに関与するメンバーを必要最小限に抑えることが推奨されます。

適切な情報管理を行うことで、リスクを抑えながら安全にプロセスを進めることが可能です。

対応できる専門家が限られる

入札方式には、買い手候補の募集や条件比較、デューデリジェンスの調整といった高度な専門性が求められるため、対応できるアドバイザーや仲介会社が限られるという課題があります。特に中小企業のM&Aにおいては、入札方式を熟知した専門家の数が少なく、適切なサポートを得ることが難しい場合もあります。

この課題を克服するためには、入札方式に精通したアドバイザーや仲介会社を慎重に選定することが重要です。選定の際には、過去の実績や専門性、対応可能な業種や取引規模、そして具体的なサポート内容を確認することが推奨されます。

また、事前に複数の候補者と面談を行い、自社のM&Aに最適な専門家を見極めることが必要です。

さらに、専門家を選定した後も、プロセス全体を任せきりにするのではなく、売り手企業が主体的に関与し、アドバイザーと密に連携することが成功の鍵となります。こうした連携を通じて、専門性の高いアドバイザーと共にプロセスを進めることで、入札方式の課題を効果的に克服することができます。

仲介方式との詳細な比較

M&Aを成功に導くためには、自社に適した取引方式を選択することが重要です。入札方式と仲介方式は、それぞれに異なる特徴を持ち、適した場面や企業のニーズが異なります。

ここでは、両方式のメリットとデメリットを比較するとともに、それぞれが適しているケースを具体的に解説します。適切な方式を選択するための判断材料として活用してください。

メリットとデメリットの比較

入札方式と仲介方式には、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。以下では、いくつかの重要な観点から両方式を比較します。

仲介方式の短期間での成約実現

仲介方式は、売り手と買い手の1対1の交渉を基本とするため、比較的短期間で成約を実現しやすい点が特徴です。M&A仲介会社が売り手の希望条件に基づいて買い手を絞り込み、交渉を進めるため、入札方式に比べてプロセスが簡素化されます。

短期間での成約は、売り手企業の財務状況が悪化している場合や市場環境の変化を懸念している場合に特に有利です。一方で、入札方式は複数の買い手候補を相手にプロセスを進めるため、条件比較やデューデリジェンスに時間がかかり、成約までに長い期間を要する傾向があります。

情報漏えいリスクの違い

情報漏えいリスクに関しては、仲介方式が優れています。仲介方式では、M&A仲介会社を通じて限定された買い手候補に情報を提供するため、情報漏えいのリスクを抑えやすい仕組みとなっています。提供する情報が交渉相手のみに限定されるため、売り手企業の機密情報が外部に広がる可能性が低くなります。

一方、入札方式では、複数の買い手候補に情報を共有するため、情報漏えいリスクが高まる可能性があります。このリスクを軽減するため、クローズドビッド形式や秘密保持契約(NDA)の締結が推奨されますが、それでも仲介方式ほどリスクを抑えることは難しい場合があります。

売却価格の差異

売却価格に関しては、入札方式が優れている場合が多いです。入札方式では、複数の買い手候補が競い合うことで価格が上昇しやすい環境が生まれます。

買い手候補は他の競争相手を意識し、自社が選ばれるために限界に近い高値を提示する傾向があるためです。

これに対し、仲介方式では、買い手候補が競争環境にさらされないため、比較的低い価格で交渉が成立する可能性があります。特に独占交渉権が付与された場合、売り手は他の候補と交渉することができず、不利な条件を受け入れるリスクが高まります。

どちらを選ぶべきか?

入札方式と仲介方式のどちらが適しているかは、売り手企業の状況やM&Aの目的に応じて異なります。以下に、各方式が適しているケースを具体的に示します。

入札方式が適しているケース

  1. 高額な売却価格を希望する場合

複数の買い手候補が競争することで、入札方式は価格が上昇しやすい傾向があります。売却価格を最大化したい場合に適しています。

  1. 複数の買い手候補が想定される場合

業界内外で広く注目されている売り手企業の場合、複数の買い手候補を募ることで、有利な条件を引き出しやすくなります。

  1. 売り手の要望を重視したい場合

従業員の雇用継続や地域貢献といった非金銭的条件も重視する場合、買い手候補が真剣に要望に応える競争環境が整いやすい入札方式が適しています。

仲介方式が適しているケース

  1. 迅速な成約を目指す場合

仲介方式は短期間で成約を実現しやすく、財務状況が厳しい企業や市場環境の変化を懸念している場合に適しています。

  1. 情報漏えいリスクを最小限に抑えたい場合

機密情報の流出を防ぎたい場合、情報公開範囲を限定できる仲介方式が安全です。

  1. 特定の買い手候補と交渉したい場合

事業シナジーを見込める買い手が特定されている場合、1対1の交渉を基本とする仲介方式が有効です。

入札方式によるM&A成功のポイント

入札方式を採用したM&Aを成功させるためには、売り手側・買い手側それぞれが適切な準備と対策を講じることが不可欠です。

この方式では複数の候補者間で競争が行われるため、その環境を最大限に活用しつつリスクを管理することが求められます。

ここでは、売り手側と買い手側の双方の注意点を解説し、入札方式によるM&Aを成功に導くための具体的なポイントを説明します。

売り手側の注意点

売り手側は、入札方式のプロセスを円滑かつ有利に進めるために、競争環境の維持や情報管理を徹底し、スケジュールを明確化する必要があります。

競争状態の維持と情報管理

入札方式の成功には、買い手候補間の競争状態を維持することが最も重要です。競争が失われると、買収条件が売り手にとって不利になる可能性が高まります。競争状態を維持するためには、以下のような取り組みが求められます。

  1. 情報の適切なコントロール
    売り手企業内で、入札プロセスに関与するメンバーを限定し、情報の管理を徹底する必要があります。秘密保持契約(NDA)を締結し、情報開示を段階的に行う「クローズドビッド形式」を採用することで、情報漏えいリスクを抑えることができます。
  2. 従業員との接触管理
    デューデリジェンスの過程で、買い手候補が従業員と接触する場面が生じる場合があります。この際、従業員から競合情報が漏れる可能性を防ぐため、事前に情報開示の範囲や接触方法を慎重に設定し、従業員に注意を促すことが重要です。

入札スケジュールの明確化

プロセスが長引くと、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 企業価値の低下(事業の劣化や競争環境の変化)
  • デューデリジェンスの結果の陳腐化
  • 候補者の関心の喪失

これらを防ぐためには、プロセス全体のスケジュールを明確に設定し、各段階の期限を厳守することが重要です。プロセスレターに具体的なスケジュールを記載し、それを基に進行を管理することで、プロセスの効率性と透明性を確保できます。

買い手側の注意点

買い手側は、入札方式で成功を収めるために、リスクの正確な把握と買収基準の明確化、さらには徹底的なデューデリジェンスを行う必要があります。

リスクの把握と買収基準の明確化

入札方式では、他の買い手候補よりも有利な条件を提示することが求められるため、事前に売り手企業の情報を的確に把握し、リスクを評価することが重要です。以下の取り組みが推奨されます。

  1. リスクの評価
    売り手企業が抱える潜在的な問題(例: 簿外債務、法的リスク、財務リスク)を正確に把握し、それに応じた条件提示を行います。特に初期段階で収集できる情報を最大限に活用し、リスクを見逃さないことが重要です。
  2. 買収基準の明確化
    買収の目的や期待するシナジー効果に基づき、財務面、事業面、法務面などの具体的な基準を設定します。これにより、条件提示時に一貫した判断が可能となり、入札における成功確率を高めることができます。

デューデリジェンスの重要性

デューデリジェンスは、最終入札の条件提示や意思決定に直結する重要なプロセスです。入札方式では、短期間で集中的に行われる場合が多いため、以下の点に留意する必要があります。

  1. 多角的な調査
    財務、法務、人事、IT、環境といった複数の側面から調査を行い、売り手企業の実態を把握します。この段階で問題が発覚した場合は、最終入札で条件を修正するか、撤退を検討することも必要です。
  2. 調査チームの連携
    専門家を含む調査チームを編成し、効率的かつ詳細な調査を行います。チーム間での情報共有を徹底し、調査結果を基に最適な条件提示を行うことが成功の鍵となります。
  3. 売り手とのコミュニケーション
    デューデリジェンスの過程で売り手との信頼関係を築き、疑問点や懸念事項を直接解消することで、交渉をスムーズに進めることができます。

入札方式で成功するための準備

入札方式を成功に導くためには、事前の準備が鍵となります。

売り手が提示する資料の質やプロセスの進め方は、買い手候補に与える印象を大きく左右し、結果的に条件交渉にも影響を与えます。また、入札方式の複雑なプロセスを適切に管理するためには、専門家の支援が欠かせません。

ここでは、プロセスレターやインフォメーションメモランダム(IM)の作成ポイントと、専門家への相談の重要性について解説します。

プロセスレターとIMの質を高める

入札方式において、プロセスレターとインフォメーションメモランダム(IM)は買い手候補との最初の接点となる重要な資料です。これらの資料の質が高ければ、買い手候補に好印象を与え、競争意欲を高める効果が期待できます。

魅力的な資料作成のポイント

1. プロセスレター

  • 明確な手続きの提示

プロセスレターには、入札方式のスケジュールや手続きの詳細、買い手候補に求める提出物(意向表明書、最終契約書案など)を明確に記載します。具体的な情報が不足すると、買い手候補が混乱し、入札に参加しづらくなるため、ルールや期限を簡潔かつ正確に伝えることが重要です。

  • 公正性の確保
    全ての候補者に対して公平な条件を提示することで、競争環境を適切に維持できます。公正性を担保することで、買い手候補からの信頼を得ることが可能になります。

2. インフォメーションメモランダム(IM)

  • 魅力的な企業情報の提供
    IMは売り手企業の詳細を伝える資料であり、会社概要、事業内容、財務データ、資産状況、設備情報などを網羅的に記載します。ただし、単なる事実の羅列ではなく、売り手企業の魅力や成長可能性をアピールする内容を盛り込むことが重要です。
  • 誇張や不正確な記載を避ける
    過剰に楽観的な情報や不正確なデータを含めると、デューデリジェンスの段階で信用を損ねるリスクがあります。正確かつ魅力的な情報提供を心掛けましょう。
  • 視覚的な要素を活用
    グラフや図表を活用し、視覚的にわかりやすい資料を作成します。これにより、買い手候補が情報を迅速に理解しやすくなります。

IMとプロセスレターは、売り手企業の第一印象を決定づける重要な資料です。これらの質を高めることで、入札プロセス全体が円滑に進み、より多くの有力な買い手候補を惹きつけることが可能になります。

専門家への相談の重要性

入札方式は、プロセスが複雑であり、適切な計画と管理が求められるため、専門家の支援が不可欠です。特に、専門知識と実務経験を持つアドバイザーの協力は、プロセスを成功させるための大きな要素となります。

対応可能なアドバイザーの見極め

1. 専門家の役割

  • 戦略的サポート
    専門家は、売り手企業の強みや魅力を効果的に伝えるための資料作成やプロセスの設計をサポートします。また、買い手候補との交渉戦略を立案し、条件交渉を円滑に進める役割も果たします。
  • 情報管理と調整
    クローズドビッド形式の採用や、秘密保持契約の適切な運用を通じて、機密情報の保護を徹底します。さらに、買い手候補間の競争環境を維持するための調整も重要な業務です。

2. アドバイザー選定のポイント

  • 経験と実績の確認
    入札方式のM&Aに関する経験が豊富で、過去の成功事例を持つアドバイザーを選ぶことが重要です。特に、売り手企業の業界や規模に精通した専門家を選ぶことで、より具体的なアドバイスが期待できます。
  • コミュニケーション能力
    アドバイザーは売り手企業だけでなく、買い手候補とのコミュニケーションも担当します。明確かつ効果的なコミュニケーション能力を持つ専門家を選びましょう。
  • 費用対効果の検討
    成功報酬型の料金体系を採用する専門家が多いため、費用対効果を考慮して選定することが重要です。

3. 専門家との協力の利点

  • プロセス全体の計画と管理を専門家に任せることで、売り手企業の負担を軽減できます。
  • アドバイザーのネットワークを活用し、適切な買い手候補を効率的に発見できます。
  • デューデリジェンスや契約書作成など、細かな実務においても専門的な支援を受けられます。

まとめ:入札方式を活用してM&Aを成功に導こう!

入札方式は、買い手候補間の競争を利用して有利な条件を引き出すことができる一方で、プロセスの複雑さや情報漏えいのリスクなど、特有の課題も抱えています。

本記事で解説した通り、入札方式のメリットを最大限に活用するためには、プロセスレターやIMの質を高めること、適切なスケジュール管理を行うこと、さらに専門的な知識を持つアドバイザーを活用することが重要です。

また、仲介方式との比較を通じて、自社の目的や状況に合った選択を行うことが、M&A成功への近道となります。

最適な取引方式の選定と入念な準備により、売り手・買い手双方が満足できる結果を実現することが可能です。入札方式を検討する際は、本記事で紹介したポイントを参考にしながら、自社に最適なアプローチを模索してください。

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