SPA(株式譲渡契約書)の記載事項・M&Aでの重要性を解説!

M&A取引において、成功の鍵を握るのが「SPA(株式譲渡契約書)」です。この契約書は、取引条件を明文化し、法的に確定させることで、取引の透明性と信頼性を確保します。

しかし、SPAの内容が曖昧であったり、不備があったりすると、取引後のトラブルを招き、M&Aの成功に影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、SPAの基本的な定義からその重要性、記載事項、作成手順、そして実際に起こり得るトラブル事例までを解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

SPA(株式譲渡契約書)とは?その基本的な定義と役割

株式譲渡契約書(SPA: Stock Purchase Agreement)は、M&A取引において、非常に重要な役割を果たす契約書です。売り手と買い手が合意した条件のもと、株式譲渡の詳細を明確に文書化することで、取引を法的に確定させ、双方の権利と義務を明らかにします。この契約書があることで、後々のトラブルを未然に防ぎ、M&A取引の成功を支える基礎となります。

SPAの定義

SPAは「Stock Purchase Agreement」の略で、日本語では「株式譲渡契約書」と呼ばれます。この契約書は、M&A取引において株式を譲渡する際に締結されるもので、売り手と買い手の間で株式譲渡の条件を明確にするものです。

例えば、売買対象となる株式の種類や数量、価格、支払い方法、契約解除条件、表明保証の範囲など、取引の重要な詳細が記載されます。

SPAの役割は単なる取引の記録にとどまらず、株式譲渡に関する全体的な法的枠組みを提供することにあります。これにより、売り手は株式を適切に譲渡し、買い手は譲渡された株式の所有権を確保する権利を持つことが保証されます。

特に株式譲渡においては、契約書がない場合、譲渡義務の履行が曖昧になる可能性があり、法的紛争が生じるリスクがあります。SPAはそのような事態を防ぐための不可欠な文書です。

また、SPAには売り手が提供する情報の真実性や正確性を保証する「表明保証」条項も含まれることが多く、これにより買い手がリスクを管理しやすくなります。さらに、競業避止義務や秘密保持義務といった条項を追加することで、取引後の事業運営の安定を図ることも可能です。

SPAが必要とされる場面

SPAは主に株式譲渡を伴うM&A取引の場面で必要とされます。

M&Aでは、会社全体の経営権を買収する場合に株式譲渡が利用されることが多いため、SPAはこうした取引の中心的な役割を果たします。売り手と買い手の双方が取引条件に合意した後、この条件を法的に確定させる文書としてSPAが作成されます。

例えば、ある企業が他社を買収する際、その買収の手段として対象企業の株式を購入する場合があります。

このとき、SPAを締結することで、売り手と買い手の間で株式譲渡の条件を詳細に規定し、トラブルを防ぐための取り決めを行います。

こうした条件には、譲渡価格、支払い条件、譲渡対象株式の数量、売り手による表明保証、契約解除条件、損害賠償条項などが含まれます。

DA(最終契約書)との違い

SPAは株式譲渡に特化した最終契約書である一方、DA(Definitive Agreement: 最終契約書)は、M&A全般における正式で最終的な契約書を指します。

つまり、DAはM&Aの手法に応じて内容が異なり、株式譲渡を伴う場合はSPAがDAに該当します。

事業譲渡の場合は事業譲渡契約書がDAとなり、吸収合併の場合は吸収合併契約書がDAとなります。

この違いを理解することで、SPAがM&Aの中で果たす役割をより明確に把握することができます。株式譲渡という手法でM&Aが行われる際、SPAはその取引を成功させるための核心的な文書となるのです。

SPAがM&Aで果たす重要な役割

株式譲渡契約書(SPA)は、M&A取引において不可欠な役割を果たします。単に取引条件を文書化するだけでなく、法的拘束力を持つ契約書として、取引の信頼性を高め、リスクを軽減する枠組みを提供します。

ここでは、株式譲渡の法的保証、透明性の確保、取引条件の明確化という観点から、SPAがM&Aにおいて果たす重要性を解説します。

株式譲渡の法的保証

株式譲渡契約書(SPA)は、株式譲渡の成立を確実にするための法的な根拠を提供します。

特にM&Aでは、企業の経営権が株式の売買を通じて移転することが多く、これを正式に確定させるには明文化された契約が必要です。

SPAを締結することで、売り手は株式譲渡の義務を負い、買い手は譲渡された株式を受け取る権利を得ます。この明確な権利義務の設定により、取引の実効性が保証されます。

例えば、SPAが存在しない場合、売り手が株式を譲渡しないといった状況が発生した際、買い手は法的に履行を請求することが難しくなります。

しかし、SPAに基づけば、買い手は売り手に対して履行義務を主張できるため、取引を強制的に成立させることが可能です。これにより、M&Aのスムーズな進行が確保されます。

また、SPAは譲渡される株式が適法であることを保証するための手段でもあります。

売り手は、自身が譲渡対象となる株式を適法に所有しており、譲渡の権利があることを表明保証しなければなりません。このように、SPAは取引の法的基盤を強化する役割を果たしています。

トラブル回避のための透明性の確保

M&Aでは、取引後にトラブルが発生するリスクを最小化することが極めて重要です。

SPAは、契約条項を通じて透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐための仕組みを提供します。その中心的な役割を果たすのが「表明保証」と「違反時の補償条項(インデムニティ)」です。

表明保証とは、売り手が買い手に対して、提供する情報の正確性や信頼性を保証する契約条項です。

例えば、財務諸表の内容に誤りがないことや、未解決の法的リスクが存在しないことを売り手が表明します。

これにより、買い手は取引に伴うリスクを明確に把握でき、予期せぬ事態に備えることができます。

違反時の補償条項は、契約内容が遵守されなかった場合や、表明保証が虚偽であった場合に備えたものです。

例えば、買い手が株式譲渡後に予期しない負債を抱えた場合、売り手に補償を求めることが可能になります。これにより、契約違反や情報の非開示に伴う損害から買い手を保護する仕組みが構築されます。

このような条項を盛り込むことで、SPAはM&A取引における透明性を高め、取引後の紛争リスクを大幅に減少させる役割を担います。

取引条件の明確化

SPAのもう一つの重要な役割は、取引条件を詳細に記載し、それを法的に確定することです。

M&A取引では、株式の数量、価格、支払い条件など、双方にとって非常に重要な要素が含まれます。これらを曖昧にしたまま取引を進めると、後に紛争の原因となる可能性が高まります。

具体的には、SPAには以下のような項目が記載されます。

  • 譲渡対象株式の数量と種類: どの種類の株式が何株譲渡されるのかを明確にします。
  • 譲渡価格: 株式1株当たりの価格、総額、価格算定の根拠が含まれます。
  • 支払い条件: 支払い方法(銀行振込や分割払いなど)、支払期限、遅延時のペナルティなどを詳細に記載します。

これらの取引条件を明確化することで、取引における双方の誤解を防ぎ、公平性が確保されます。また、取引後の検証やトラブル解決においても、SPAが重要な根拠資料として機能します。

SPAはM&A取引における信頼性と透明性を確保し、リスクを軽減するための不可欠な契約書です。

その役割は単なる取引条件の文書化にとどまらず、法的基盤の構築、トラブルの未然防止、取引条件の明確化といった多面的な効果を発揮します。

これにより、SPAはM&A取引の成功にとって欠かせない存在となっています。

SPAに記載される主な内容

株式譲渡契約書(SPA: Stock Purchase Agreement)は、M&Aにおける株式譲渡の詳細を文書化した重要な契約書です。

SPAに記載される内容は、取引の透明性を確保し、リスクを最小化するために重要な意味を持ちます。

ここでは、SPAに記載される具体的な項目について、基本構造、契約履行に関連する項目、リスクと義務に関する取り決め、特殊な条項の4つの観点から解説します。

SPAの基本構造

SPAの基本構造は、取引の根幹を成す内容を明確に記載することに重点が置かれます。この項目は、契約の全体像を理解する上での骨組みとなるものです。

譲渡対象株式の特定

SPAでは、譲渡の対象となる株式を明確に特定します。具体的には以下の情報が含まれます。  

  • 株式の種類(普通株式や優先株式など)  
  • 株式の数量  
  • 株式の証券コード(該当する場合)  

これらの情報を明記することで、取引における曖昧さを排除し、双方が取引対象について共通認識を持つことができます。特に非上場企業の場合は、株式の種類や所有権の明確化が重要です。

価格と支払い条件

株式譲渡の価格とその支払い条件も、SPAの基本構造に含まれます。これには、以下のような情報が記載されます。

  • 株式1株当たりの価格
  • 総額の支払い金額
  • 支払い方法(銀行振込、一括払い、分割払いなど)
  • 支払い期限

支払い条件の明記により、買い手がどのように代金を支払うべきかが明確になり、トラブルの防止につながります。また、支払い遅延が発生した場合に備えたペナルティ条項が含まれることもあります。

契約履行に関連する項目

契約履行に関連する項目は、株式譲渡が法的に有効となるための手続きを明確にします。これには、株式名簿の名義書き換えや譲渡承認手続きが含まれます。

株式名簿の名義書き換え手続き

株式名簿の名義書き換えは、株式譲渡を完了させるための重要な手続きです。SPAには、株式名簿に記載された名義を新しい株主のものに変更する取り決めが含まれます。この手続きを迅速に行うことが、買い手の権利を確保するために不可欠です。

特に非公開会社の場合、株式名簿の変更が株式譲渡の効力発生要件となる場合があるため、SPAにはこれを適切に反映することが重要です。

譲渡承認手続きの取り決め

会社法では、譲渡制限株式の取引には会社の承認が必要です。SPAには、この承認手続きをどのように進めるかが記載されます。  

具体的には以下が含まれることがあります。

  • 株主総会や取締役会での承認要件  
  • 承認が得られなかった場合の代替措置  

これにより、手続きがスムーズに進行し、取引の円滑な履行が確保されます。

リスクと義務に関する取り決め

SPAは、リスクと義務を明確にし、双方の利益を保護する役割を果たします。

表明保証

表明保証は、売り手が買い手に対して、譲渡する株式や会社に関する情報の正確性を保証する条項です。例えば以下が記載されます。

  • 財務諸表に誤りがないこと
  • 株式が法的に有効であること
  • 未解決の法的問題がないこと

これにより、買い手は取引後に発生する可能性のあるリスクを事前に把握し、必要に応じて補償を求めることができます。

契約解除条件

契約解除条件は、取引が成立しなかった場合や重大な契約違反が発生した際に適用されます。SPAには、契約解除の条件やその際の対応策が記載されます。  

例えば以下のようなケースが含まれます。

  • 売り手が株式を引き渡さない場合  
  • 買い手が代金を支払わない場合  

これにより、取引の円滑な進行が妨げられた場合でも、解決策が明確になります。

損害賠償請求

損害賠償請求は、契約違反が発生した場合に備える条項です。例えば、表明保証に虚偽があった場合、買い手は売り手に対して損害賠償を請求する権利を持ちます。一方、売り手は賠償金額の上限を設定することで過度な負担を防ぐことが可能です。

特殊な条項

特殊な条項は、取引後のトラブルを未然に防ぐために重要です。

競業避止義務

競業避止義務は、売り手が取引後に同じ業種で競争相手になることを防ぐ条項です。これにより、買い手が市場での競争力を維持しやすくなります。例えば以下が記載されます。

  • 競業避止の期間
  • 適用される地域や業種

この条項は、買い手企業の事業基盤を守るために不可欠です。

秘密保持義務

秘密保持義務は、取引中や取引後における情報漏洩を防ぐための条項です。これには、売り手と買い手が共有した機密情報を第三者に公開しないことが含まれます。この条項により、取引の安全性が向上します。

合意管轄

合意管轄は、取引後に紛争が発生した場合、どの裁判所で解決を図るかを決定する条項です。専属的合意管轄を設定することで、紛争解決の効率性が高まります。

SPAを作成する手順とプロセス

SPA(株式譲渡契約書)の作成は、M&A取引を円滑かつ成功裏に進めるための重要なステップです。

SPAを作成する過程には、ターゲット企業の調査や承認手続き、契約の作成と締結、株主名簿の更新と証明書発行といった手順が含まれます。

これらのプロセスを正確に進めることで、取引の透明性と信頼性が向上し、後のトラブルを未然に防ぐことができます。

M&Aターゲット企業の調査(デューデリジェンス)

M&Aにおけるデューデリジェンスは、ターゲット企業の財務状況や法的リスク、事業運営の実態を詳細に把握するための調査プロセスです。この段階では、企業の価値やリスクを評価し、SPAに反映すべき条件を見極めます。

企業の財務状況やリスクの把握

買い手は、ターゲット企業の財務諸表、税務申告書、負債状況を精査し、財務リスクを確認します。これには、企業の収益性やキャッシュフロー、未払金や未収金の状況を分析することが含まれます。

さらに、法務面では、未解決の訴訟、契約上の義務、知的財産権の状況を調査します。

デューデリジェンスの結果を反映したSPA作成の重要性

調査で明らかになったリスクや課題は、SPAの条項に反映されます。

例えば、売り手による表明保証の範囲を設定する際、デューデリジェンスの結果に基づき、情報の正確性や法的リスクについて具体的な保証を要求することができます。

このように、デューデリジェンスの結果を適切に活用することで、契約後のトラブルを防ぎ、取引の信頼性を確保します。

株式譲渡の承認手続き

M&A取引が法的に有効となるためには、株式譲渡に関する承認手続きが必要です。この手続きは、取引に関連するすべての当事者が取引条件を認めるための重要なステップです。

株主総会・取締役会の承認プロセス

譲渡制限株式を扱う企業では、会社法に基づいて株主総会または取締役会の承認を得る必要があります。例えば、臨時株主総会を開催し、譲渡に関する決議を行います。この際、定款に基づいて承認プロセスが進められます。

承認が得られない場合、取引そのものが成立しないリスクがあるため、承認手続きは非常に重要です。特に非公開会社では、株式譲渡の効力が承認の取得に依存するため、迅速かつ確実な手続きを行う必要があります。

SPAの作成と締結

SPAの作成と締結は、M&A取引の正式な成立に向けた重要なプロセスです。このステップでは、契約条件を詳細に記載し、双方が合意のもとで契約を締結します。

専門家のサポートを受けた条項の策定

SPAの作成には、法律やM&Aの専門知識が必要です。弁護士やM&Aアドバイザーの支援を受けて、取引条件に応じた契約条項を策定します。

例えば、譲渡価格や支払い条件、表明保証、契約解除条件などを盛り込みます。専門家の関与により、契約内容が法的に問題なく、双方の利益を保護するものとなります。

契約成立までの具体的な流れ

SPAの作成プロセスでは、以下の流れをたどります。

  1. デューデリジェンスの結果をもとにドラフトを作成。  
  2. 双方で条項を協議し、修正を重ねる。  
  3. 最終版を確定し、契約書に署名・押印。  

このプロセスを通じて、取引が法的に有効となり、正式なM&A契約が成立します。

株主名簿の更新と証明書発行

SPA締結後、株主名簿の更新と証明書の発行は、株式譲渡が正式に完了するための最後のステップです。

株主名簿には、譲渡後の新しい株主の情報を記載します。この手続きを行うことで、買い手が正式な株主として法的に認められます。名簿の更新が完了した後、株式譲渡証明書が発行され、取引が完全に成立したことを示します。

この最終手続きにより、株式譲渡は正式に完了し、M&A取引が締結から実行の段階に移ります。

SPAを作成する手順とプロセスは、M&Aの成功を左右する重要な要素です。各ステップを慎重に進めることで、リスクを最小限に抑え、双方にとって円満な取引を実現することができます。

SPAを作成する際の注意点

SPA(株式譲渡契約書)の作成は、M&A取引における最重要プロセスの一つです。

取引条件を明確にし、双方の権利と義務を規定するSPAは、後のトラブルを防ぐために慎重に作成する必要があります。

しかし、作成過程での不備や確認不足は重大な問題を引き起こす可能性があるため、以下のポイントに特に注意を払うことが求められます。

記載内容の詳細な確認

SPAには、M&A取引におけるすべての重要事項が詳細に記載されるため、その内容を十分に確認することが不可欠です。誤解や曖昧な条項が含まれている場合、後にトラブルの原因となる可能性があります。

誤解や曖昧な条項を避ける方法

  • 条項の具体化  

曖昧な表現を避け、条項の内容を具体的かつ簡潔に記載します。例えば、支払い条件や契約解除の要件については、具体的なスケジュールや明確な基準を記載することが重要です。

  • レビューの徹底  

SPA作成後には、各条項を慎重に読み直し、誤解の余地がないか確認します。また、条項が双方の意図を正確に反映しているかを確認し、必要に応じて修正を行います。

  • 相手方との事前確認  

書類作成の段階で相手方とのすり合わせを行い、双方が認識を共有することも重要です。特に重要な条項については、別途議事録や確認書を用意すると良いでしょう。

契約条件の慎重な確認

SPAに記載される契約条件は、取引の根幹を成すものであり、これを適切に設定することがリスクを最小化する鍵となります。買い手と売り手の双方が条件を十分に理解し、納得していることが不可欠です。

買い手と売り手双方のリスクを最小化する手法

  • 譲渡対象と価格の確認  

売り手側は譲渡対象となる株式の数量や種類が正確に記載されているか確認し、買い手側は価格が適切に算定されているか精査します。

  • 表明保証の範囲設定  

表明保証は、売り手が買い手に対して正確な情報を提供する責任を負うものです。売り手は表明保証の範囲を過剰に広げないよう注意し、買い手はリスクを適切にカバーするために必要な項目を含めるべきです。

  • 契約解除条件の明確化  

どのような場合に契約が解除されるか、具体的な条件を明記します。例えば、支払い遅延や表明保証違反などの具体的なシナリオを列挙し、曖昧さを排除します。

  • 損害賠償条項の明示  

契約違反時の補償内容や賠償金額の上限を明記します。これにより、万が一のリスクが発生した場合でも、双方が納得できる範囲で対応可能です。

専門家の関与の重要性

SPAの作成には、法律やM&A取引に関する専門的な知識が不可欠です。弁護士やM&Aアドバイザーの関与が、契約内容の適正化と取引全体の成功に直結します。

弁護士やM&Aアドバイザーの活用

  • 契約書の精査  

弁護士は、契約書の条項が法的に問題ないかを確認し、必要に応じて適切な修正案を提案します。また、法令違反やリスクを伴う内容が含まれていないかをチェックします。

  • 交渉サポート  

M&Aアドバイザーは、買い手と売り手の双方の利益を考慮しながら、契約条件に関する交渉をサポートします。これにより、合意形成が円滑に進むとともに、契約が双方にとって公平なものとなります。

  • リスクヘッジ  

専門家は、SPAに記載すべきリスクヘッジの条項を提案します。例えば、競業避止義務や秘密保持義務の適用範囲を適切に設定し、取引後のトラブルを防止します。

SPAを作成する際には、記載内容の確認、契約条件の設定、専門家の活用が重要なポイントとなります。これらを徹底することで、取引リスクを最小限に抑え、M&Aの成功を確実なものとすることができます。

実際のSPAにおけるトラブル事例

SPA(株式譲渡契約書)は、M&A取引における重要な契約書であり、その記載内容は取引の成功に直結します。しかし、SPAの作成や実行に不備がある場合、取引後のトラブルや取引自体の破綻を招くことがあります。

ここでは、実際に発生した事例を基に、SPAの曖昧な条項や条件変更が引き起こしたトラブルについて解説します。

条項の曖昧さが引き起こしたトラブル

SPAにおける条項が曖昧である場合、売り手と買い手の間で契約条件の解釈が異なることがあり、これがトラブルの原因となります。

契約条件の詳細が不十分であると、当事者が異なる理解をしたまま取引を進める可能性があり、結果として大きな問題に発展することがあります。

契約条件の解釈違いによる問題

例えば、あるM&A取引において、SPAに「株式譲渡後に売り手が役員としてサポートを行う」と記載されていた場合を考えます。

売り手は「短期間の助言程度」と解釈していた一方、買い手は「フルタイムでの役員業務継続」と理解していたとします。

この解釈の違いにより、取引後に売り手が求められる役割を果たせず、買い手との間で対立が生じました。

このような事例では、SPAにおける「サポート」の範囲や期間、具体的な内容を明確に記載しておけば、トラブルを未然に防ぐことができました。契約条項が曖昧であると、契約内容に基づく対応が困難になり、最終的には訴訟に発展する可能性もあります。

SPA作成時には、曖昧な表現を避け、条項ごとに具体的な取り決めを記載することが重要です。また、双方の合意を文書化して記録しておくことも効果的です。

合意形成の破綻によるM&A失敗事例

SPAの作成過程で条件変更が生じた場合、取引全体が破綻することもあります。M&A取引では、売り手と買い手が長期間にわたり交渉を行い、最終的な合意に至ることが一般的です。しかし、最終段階で一方的に条件を変更すると、信頼関係が損なわれ、取引が失敗に終わるリスクが高まります。

SPA作成時の条件変更による取引破断

あるケースでは、売り手と買い手が数か月にわたり交渉を重ね、最終的な条件で合意しました。しかし、SPA作成段階で買い手が突如として「株式譲渡価格の引き下げ」や「支払い条件の変更」を要求しました。この条件変更により、売り手は買い手の意図に不信感を抱き、交渉自体が破綻してしまいました。

このような事態は、最終契約書であるSPAの作成段階で初めて条件を変更することが問題となった例です。取引を円滑に進めるためには、交渉の段階で条件を確定させ、その条件を元にSPAを作成することが必要です。最終段階での条件変更は、双方の信頼を損ない、結果的に取引が不成立となるリスクを高めます。

合意形成を確実にするためには、以下のポイントが重要です。

  • 交渉の記録を詳細に残すこと: 交渉内容を文書化し、双方が同意した条件を明確にする。
  • 条件変更を避ける: 必要不可欠な変更がある場合は、その理由を明確にし、早い段階で協議する。
  • 専門家のサポートを活用する: 弁護士やM&Aアドバイザーが条件の妥当性をチェックし、交渉プロセスを適切に進める。

SPAはM&A取引の成功において重要な役割を果たしますが、曖昧な条項や条件変更は大きなトラブルを引き起こす可能性があります。

SPAの作成時には、具体的で明確な記載を心掛け、交渉過程での合意を確実に反映することで、これらの問題を未然に防ぐことができます。

まとめ: SPAはM&A取引を安全に進めるために不可欠!

SPA(株式譲渡契約書)は、M&A取引を支える法的な枠組みであり、取引条件を明確にすることで双方の信頼を構築します。

譲渡対象株式の特定や価格、支払い条件、表明保証、契約解除条件など、詳細な内容を記載することで、後のトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。

また、SPA作成の過程では、デューデリジェンスや株主総会・取締役会の承認手続き、専門家のサポートを受けた契約書の作成が重要です。これにより、取引が透明性を保ちながら進行し、リスクが適切に管理されます。

ただし、曖昧な条項や契約作成段階での条件変更は、合意破綻や取引失敗の原因となるため、慎重に対応する必要があります。適切なSPAの作成は、M&A取引の成功に不可欠なプロセスであり、双方の事業発展を支える基礎となることを理解しておきましょう。

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