M&A仲介業者からの営業電話に困っている企業も少なくありません。度重なる電話や強引な営業スタイルに対し、多くの企業が迷惑と感じることが多いですが、これらの電話が必ずしも悪いとは限りません。信頼できる仲介業者からのアプローチは、企業の成長や事業承継の大きなチャンスとなることもあります。しかし、適切な業者を見極めることが不可欠です。特に中小企業庁が運営する「M&A支援機関登録制度」に登録されていない業者には注意が必要です。この記事では、M&A仲介の営業電話に対する信頼性の見極め方や、断るべき業者の特徴、そして効果的な断り方について詳しく解説します。
- この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)
M&A仲介の営業電話:迷惑なのか、それともチャンスなのか?
M&A仲介の営業電話は、多くの企業にとって迷惑と感じられることが多いですが、その一方で企業の成長や事業承継に役立つ有益な情報を提供してくれるケースも存在します。これらの電話の目的は、M&Aを通じて企業の将来を支える提案を行うことですが、実際には受け取り方が企業ごとに異なるため、迷惑と感じる企業も少なくありません。このセクションでは、M&A仲介の営業電話がどのような背景で行われているのか、そしてその内容が企業にとってどのような意味を持つのかについて詳しく解説します。
M&A仲介の営業電話が多発する背景
近年、M&A市場は大きく拡大しており、中小企業の事業承継や成長戦略としてM&Aの利用が増えています。この市場拡大に伴い、多くのM&A仲介業者が新たに参入してきました。特に、大手M&A会社から独立したコンサルタントや新規参入者が増加しており、これにより市場競争が激化しています。中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」によると、M&A支援機関に登録している仲介業者の数は年々増加しており、2022年には2823件だった登録業者数が、2023年には2980件に増加しています。このような競争の激化が、仲介業者による営業電話の多発につながっているのです。営業電話の目的は、契約対象となる企業を見つけるためであり、仲介業者は自社のリストや帝国データバンクなどから購入した情報を元に積極的にアプローチを行っています。
M&A仲介会社からの「御社を買いたい」といったDMや手紙が増えていると感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。しかし…
M&A仲介の営業電話が迷惑とされる理由
M&A仲介の営業電話は、多くの企業にとって迷惑なものとして受け取られることが少なくありません。その理由の一つは、頻繁にかかってくる電話が業務の妨げになることです。特に経営者や担当者が会議中や重要な作業中に電話がかかってくると、生産性が大きく低下してしまいます。また、一方的で強引な営業手法を取る業者も存在し、断りにくい状況に追い込まれるケースもあります。例えば、「社長に重要な話があります」「御社を買いたい会社があります」などといった言葉で取り次ぎを依頼し、経営者の興味を引こうとする手法が見受けられますが、その内容が必ずしも真実とは限りません。
さらに、営業電話の内容に信頼性が乏しい場合も問題です。仲介業者による営業トークは、必ずしも事実に基づいているとは限らず、あいまいな情報や誇張表現が含まれていることが多いため、企業側がそれを信じてしまうと、後々トラブルに発展する可能性があります。例えば、「非常に良い条件での売却が可能です」「すぐに資本提携したい企業がいます」などの主張が、本当に自社にとって有益なものかどうかを慎重に見極める必要があります。
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政府も認識しているM&A仲介の問題点
M&A仲介業者からの営業電話や勧誘活動が増加する中、その手法や信頼性に疑問を抱く中小企業が増えています。これを受け、中小企業庁をはじめとする政府機関もM&A仲介業者による過剰な営業行為や不適切な支援に関する問題を認識し、対策を講じています。政府は、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境を整えるために、様々なガイドラインや支援制度を導入しており、企業の保護に努めています。このセクションでは、政府の対応策や中小企業のためのガイドラインについて詳しく解説します。
中小企業庁のM&A支援機関登録制度とは?
中小企業庁は、M&A仲介業者の支援品質を保証し、中小企業が安心してM&Aに取り組めるようにするために、2021年8月に「M&A支援機関登録制度」を創設しました。この制度は、M&Aの助言や仲介を行うフィナンシャルアドバイザー(FA)や仲介業者を中小企業庁のデータベースに登録する仕組みで、登録された業者は一定の基準を満たしていることが求められます。
登録制度の主な目的は、仲介業者の質を均質化し、中小企業が安心してM&Aを進められる環境を構築することにあります。具体的には、登録された業者は「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言し、善良な管理や職業倫理に基づいた支援を行うことが求められています。この登録制度により、中小企業は信頼できる仲介業者を選択することができ、また、登録されていない業者に対する不安も軽減されます。制度の運営により、不適切な仲介行為が発生した場合、迅速な是正が図られています。
「中小M&Aガイドライン」で示される注意喚起
中小企業庁は、「中小M&Aガイドライン」を策定し、M&A仲介業者に対して依頼者の利益を守るための善管理注意義務や職業倫理に基づいた行動を求めています。このガイドラインは、M&A仲介業者が行うべき適切な営業行為の基準を示し、過剰な営業や誤解を招く広告、虚偽の情報提供を防ぐことを目的としています。
具体的な規制として、ガイドラインでは契約締結を断ったにもかかわらず継続される営業行為や、M&Aの成立可能性について誤解を招くような広告・営業が不適切であるとしています。こうした行為が見られた場合、政府は仲介業者に対して停止を要請し、必要に応じて登録の見直しを行うこともあります。
また、ガイドラインは仲介業者だけでなく、企業側にも注意を促しており、営業行為が過剰であると感じた場合や不適切な支援が行われたと疑われる場合には、通報するよう推奨しています。こうした対策により、中小企業がM&A仲介業者の営業から受ける影響を最小限に抑えることが期待されています。
情報提供受付窓口の利用方法
M&A支援機関登録制度では、登録されたM&A仲介業者が行う支援についての不適切な行為に関する情報を受け付けるための「情報提供受付窓口」を設置しています。この窓口は、中小企業者が安心して情報提供を行えるよう、情報提供者の特定を避けながら、不適切事例を他の企業への注意喚起として活用する仕組みです。
情報提供受付窓口では、メールまたは電話で情報提供を受け付けており、具体的な通報先はM&A支援機関登録事務局内に設置されています。情報提供は、秘密保持義務の範囲内で行われるため、通報が直接の不利益に繋がることはありません。中小企業は、営業電話のしつこさや誤った情報提供に対する苦情をこの窓口に届けることで、M&A仲介業者の適正な運営に寄与することができます。
通報が持つ意義は大きく、登録制度の改善や業者の是正を促すことで、中小企業全体が安全にM&Aを進められる環境を整備することに繋がります。政府は、これらの情報を活用し、ガイドラインの遵守状況を定期的に確認し、業者の登録を見直すなどの対策を実施しています。中小企業が抱える不安や問題を軽減し、安心してM&Aに取り組むための支援を強化しています。
M&A仲介業者の信頼性を見極める方法
M&Aの営業電話は、しつこくて迷惑に感じられることが多いですが、そのすべてが悪いわけではありません。適切な仲介業者と出会うことで、企業の成長や事業承継において非常に有益な提案を受けることができる可能性があります。しかし、そのためには信頼できる業者を見極めることが不可欠です。特に、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されていない業者には注意が必要です。この制度は、仲介業者の質を均質化し、中小企業が安心してM&Aに取り組めるようにするためのものです。登録されている業者は一定の基準を満たし、職業倫理や善管理注意義務に基づいた支援を提供することが求められています。したがって、登録制度に登録されていない業者は信頼性に欠ける可能性が高く、M&Aにおいて重要な判断材料となります。このセクションでは、信頼できるM&A仲介業者を見極めるための具体的な方法について紹介します。
信頼できるM&A仲介業者の特徴
信頼できるM&A仲介業者を見極めるためには、いくつかの特徴を確認することが重要です。
まず、仲介業者の実績数と信頼性を確認することが大切です。実績が多い業者ほど、M&Aのノウハウが蓄積されており、質の高い支援が期待できます。取引実績は、その仲介業者のホームページに掲載されている場合もありますが、掲載されていない場合には、直接担当者に問い合わせて確認することをおすすめします。実績数だけでなく、どのような業界や規模のM&Aを手がけているかも重要な判断材料となります。
また、法務・税務・会計などの専門家からアドバイスを受けられるかどうかも信頼性を判断するポイントです。M&Aは法律、税務、会計などの複雑な知識が必要とされるため、これらの専門分野のサポートが受けられる体制が整っているかどうかを確認しましょう。仲介業者が提携している弁護士や税理士、会計士などの専門家の質や経験も、業者の信頼性に直結します。
さらに、アドバイザーの専門性と経験値も見極めるべきポイントです。M&Aの成否はアドバイザーのスキルに大きく依存します。大手仲介業者であっても、担当者の経験や専門性が不足している場合、適切な提案やマッチングが行われない可能性があります。担当者の業界経験やM&Aの成約実績を確認し、自社のニーズに合ったアドバイザーを選ぶことが重要です。
最後に、報酬体系が明確で良心的かどうかも見逃せない点です。報酬体系が不透明な場合、予期せぬコストが発生するリスクがあります。例えば、「完全成功報酬制」を採用している仲介業者であれば、M&Aが成立するまで費用が発生しないため、リスクが少ないと言えます。一方で、着手金や中間報酬が発生するケースもあるため、報酬の支払いタイミングや基準を事前に確認し、納得した上で契約を結ぶことが重要です。
営業電話が有益な場合の見極め方
M&Aの営業電話が全て迷惑というわけではありません。中には企業にとって有益な情報を提供してくれる場合もあります。営業電話が有益かどうかを見極めるためには、まずその内容が自社に合った提案をしているかどうかを確認しましょう。具体的な業種や事業規模に応じた提案をしている場合、その仲介業者はしっかりと市場調査を行った上でアプローチしている可能性が高いです。
また、詳細なヒアリングがあるかどうかも重要なポイントです。信頼できる仲介業者は、ただ一方的に提案を押し付けるのではなく、まず企業のニーズや課題を詳しく聞き取ることに重点を置きます。このヒアリングのプロセスを通じて、企業の立場や目標に最適なM&Aプランを提示するための準備を行います。逆に、ヒアリングが不十分で、すぐに契約を迫るような業者は避けるべきです。
さらに、強引ではない誠実な営業スタイルも信頼性を見極める上で大切な要素です。営業が過度に強引だったり、不安を煽るような手法を取る業者は信頼に値しません。逆に、企業のペースに合わせて冷静に情報を提供し、十分な時間をかけて検討させてくれる業者は信頼できる可能性が高いです。
具体的な質問で信頼性をテストする
M&A仲介業者の信頼性をテストするためには、具体的な質問を投げかけてみることが効果的です。まず、実績に関する質問をすることで、その業者がどれだけの経験を持っているかを確認できます。「これまでにどのような業種や規模のM&Aを担当したことがありますか?」といった質問をすることで、業者の経験の幅と深さを見極めることができます。また、「最近の成約事例を教えてください」と尋ねることで、直近の実績を確認することもできます。
次に、提供するサービス内容の確認も重要です。M&Aのプロセスは複雑で、多くのステップが含まれます。仲介業者がどの段階でどのようなサポートを提供しているのかを具体的に聞き出し、その内容が自社のニーズに合っているかを確認しましょう。例えば、「契約後のアフターサポートはどのような形で提供されていますか?」といった質問をすることで、業者の支援体制を理解することができます。
最後に、契約後のサポート体制のチェックも忘れずに行いましょう。M&Aのプロセスは契約が締結された後も続きます。統合プロセスやPMI(Post-Merger Integration)など、契約後のサポートがしっかりしているかどうかは、M&Aの成功を左右する重要な要素です。「契約後にトラブルが発生した場合の対応はどうなっていますか?」といった質問を投げかけることで、その業者が長期的なサポートを提供する姿勢を持っているかどうかを確認することができます。
これらの具体的な質問を通じて、M&A仲介業者の信頼性を効果的にテストし、自社にとって最適なパートナーを見つけることができるでしょう。信頼性の高い業者と連携することで、M&Aのプロセスを円滑に進め、企業の成長や事業承継の目標を達成するための強力な支援を受けることが可能となります。
M&A(合併・買収)は、企業が成長戦略の一環として採用する重要な手法ですが、そのプロセスは複雑で、多くのリスクとチャンス…
M&A仲介の営業電話を断るための方法と注意点
M&Aの営業電話が頻繁にかかってくると、業務に支障をきたすだけでなく、社員のストレスの原因にもなります。そのため、適切かつ失礼のない方法で営業電話を断ることが重要です。無駄な時間を削減しつつ、企業のイメージを損なわないように対応するために、いくつかの効果的な断り方と対処法を理解しておくことが求められます。このセクションでは、M&A仲介の営業電話を断るための基本的な方法や、しつこい電話への対処法、断るべき仲介業者の特徴について詳しく解説します。
基本的な断り方とそのポイント
M&Aの営業電話を受けた際の基本的な断り方には、いくつかのポイントがあります。まずは、要件をはっきりさせるために、具体的な質問を投げかけることが大切です。例えば、「どのような内容のお話でしょうか?」や「どの企業が弊社に興味を持っているのですか?」といった質問をすることで、相手の意図を明確にすることができます。これにより、不要な営業電話を早い段階で見極めることが可能になります。
断る際には、丁寧かつしっかりとした態度で対応することが重要です。たとえば、「現在、M&Aの検討をしておりませんので、今回はご遠慮させていただきます」といった具体的な断りの言葉を使うことで、相手に明確な意思を伝えることができます。あいまいな返事をすると、再度電話がかかってくる可能性があるため、不要である旨をはっきりと伝えましょう。
また、社長や担当者に直接取り次がないための対応策として、「代表者にはそのような営業電話は取り次がないようにしております」といった会社の方針を伝えることも効果的です。これにより、個人の判断ではなく、企業全体の方針として営業電話を断っていることを伝え、相手に納得してもらいやすくなります。
しつこい電話への対処法
M&Aの営業電話がしつこく続く場合には、さらに強力な対処法を考慮する必要があります。まず一つの手段として、着信拒否を利用することが挙げられます。特定の電話番号からかかってくる場合は、その番号を着信拒否リストに追加することで、今後の営業電話をブロックできます。ただし、相手が複数の番号を使っている場合や、非通知でかけてくるケースもあるため、その場合には他の対策も併用する必要があります。
IVR(自動音声応答)の導入も有効な手段です。IVRシステムは、電話がかかってきた際に自動で応答し、担当者に繋ぐ前に要件を確認するプロセスを設けることができます。多くの営業電話は自動音声の段階で断られるため、担当者の対応負担を大幅に減らすことができます。自動音声で「営業のお電話はお断りしております」といったメッセージを設定することも有効です。
さらに、中小企業庁が設置しているM&A支援機関に係る情報提供受付窓口を利用することも検討してください。この窓口では、しつこい営業や不適切な行為に関する苦情を受け付けており、問題のある仲介業者に対して注意喚起や是正措置が取られることもあります。通報の際には、具体的な電話内容や相手の業者名などの詳細を提供することで、より効果的な対応が期待できます。
断るべきM&A仲介業者の特徴
M&A仲介の営業電話の中には、断るべき業者も存在します。こうした業者の特徴を理解することで、不要なリスクを回避することができます。
まず、一方的で強引な営業をする業者には注意が必要です。こちらのニーズや状況を考慮せずに、一方的に話を進めようとする仲介業者は、信頼性が低い可能性があります。強引な営業に押されて契約してしまうと、後々不利な条件での取引を強いられるリスクが高まります。
次に、十分な情報を提供しない業者も断るべきです。例えば、「社長にしかお伝えできません」や「非常に良い条件が提示されています」といった漠然とした表現で具体的な内容を伏せる場合、その業者は誠実さに欠けているかもしれません。M&Aの取引は大きな決断を伴うため、信頼できる情報をもとに判断することが求められます。情報提供が不十分な業者とは距離を置くべきです。
さらに、営業トークに誤解を生じさせる言い回しを使う業者も避けた方が良いでしょう。例えば、「御社ならすぐにでも資本提携が可能です」といった表現は、実際には多くの条件が伴う場合がほとんどです。このように、相手の期待を過剰に煽るような言い回しをする業者は、信頼性に欠け、後々問題が発生する可能性があります。
まとめ:信頼できない業者は断る勇気を持とう
M&A仲介業者からの営業電話には、迷惑と感じるものもあれば、有益な情報を提供してくれるものもあります。しかし、その信頼性を見極めるためには慎重な対応が求められます。中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されていない業者は信頼性が低い可能性が高いため、基本的に断る方針で問題ありません。断る際には、失礼にならないように丁寧な対応を心がけ、着信拒否やIVRシステムの導入といった手段も有効です。信頼できるパートナーを選び、企業にとって本当に価値のある提案を受けるために、営業電話への対応を適切に行いましょう。営業電話がすべて悪いわけではありませんが、判断の基準を持ち、必要な場合には断る勇気を持つことが大切です。