M&Aにおけるストラクチャーの種類とは?選定時に注意!

M&Aは、企業の成長戦略や事業再編、または後継者問題の解決策として、ますます重要な経営手段となっています。しかし、M&Aを成功に導くためには、目的に合った適切なストラクチャーを選定することが不可欠です。ストラクチャーとは、M&Aを実行する際の具体的な手法を指し、企業の合併や買収をどのように進めるかを決定する重要な要素です。この記事では、M&Aで一般的に用いられる主要なストラクチャーの種類と、それぞれの選定時に注意すべきポイントについて詳しく解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

M&Aにおける主要なストラクチャーの種類

M&Aを成功に導くためには、目的や条件に合った適切なストラクチャーを選択することが不可欠です。ストラクチャーとは、M&Aを実行する際の具体的な手法を指し、企業がどのようにして他の企業を買収するか、あるいは統合するかを決定する要素となります。M&Aの目的や資金状況、法的要件などに応じて、選択するべきストラクチャーは異なります。以下に、代表的なストラクチャーの種類とその特徴について詳しく解説します。

株式譲渡

株式譲渡は、M&Aにおいて最も一般的に使用されるストラクチャーです。この手法では、売り手が保有する会社の株式を買い手が取得することで、経営権を移行します。株式譲渡の最大のメリットは、その手続きの簡便さにあります。通常、会社全体を丸ごと譲渡するため、売り手が保有する全ての資産や負債もそのまま買い手に引き継がれます。これにより、事業の連続性が保たれ、取引先や従業員との関係も基本的に維持されます。

しかし、株式譲渡にはデメリットも存在します。買い手は、売り手企業が抱える負債や簿外債務、さらには将来的に発生する可能性のある偶発債務も引き継ぐリスクを負います。そのため、買い手は慎重なデューデリジェンスを行い、予期せぬリスクを回避するための対策を講じる必要があります。

TOB(株式公開買付)

TOB(株式公開買付)は、買い手が市場外で広く株主から株式を買い集める手法です。TOBには、友好的TOBと敵対的TOBの2種類が存在します。友好的TOBは、対象会社の経営陣の同意を得た上で実施されるもので、株主に対して一定の価格で株式を買い取ることを提案します。一方、敵対的TOBは、対象会社の経営陣の合意がないままに行われ、買い手が自らの意志で株式を買い集める手法です。

TOBのメリットは、公開市場で株式を取得する際に比べ、迅速かつ確実に一定量の株式を集められる点にあります。また、株価にプレミアムを上乗せすることで、株主の売却意欲を高めることができるため、特に上場企業の買収に適しています。ただし、TOBは法的手続きが複雑であり、株主の同意を得るための戦略的な対応が求められます。

株式交換

株式交換は、買い手が自社の株式を対価として、対象会社を完全子会社化する手法です。このストラクチャーでは、対象会社の全株式が買い手に移転し、その代わりに対象会社の株主には買い手の株式が交付されます。株式交換は、現金を用いずに企業を統合できるため、資金的な負担を軽減できる点が大きなメリットです。

さらに、株式交換には簡易株式交換と略式株式交換という特例があります。簡易株式交換では、買い手が自己株式を対価として利用し、買い手の株主総会の決議を省略することができます。また、略式株式交換は、買い手がすでに対象会社の90%以上の株式を保有している場合に、対象会社の株主総会の決議を省略できる手法です。これらの特例を活用することで、手続きを効率化し、迅速なM&Aを実現することが可能です。

株式交付

株式交付は、2021年に新たに創設された制度で、対象会社の株式を買い手が取得し、その対価として自社の株式を交付する手法です。株式交換とは異なり、株式交付では対象会社の全株式を取得する必要がなく、一部の株式を取得して子会社化することも可能です。この柔軟性により、買い手は資本構成や経営戦略に応じた最適な形でM&Aを実行できます。

株式交付のメリットは、現金を用いずに企業を取得できる点に加え、対象会社の既存株主が売却を希望しない場合でも、そのまま株主として残ることができる点にあります。ただし、株式交付には株式交換と異なる法的手続きや株主総会の特別決議が必要となるため、実施前に十分な準備が求められます。

株式移転

株式移転は、複数の企業が新設する持株会社に全株式を移転させることで、グループ企業全体をホールディングス体制に移行する手法です。このストラクチャーは、既存の企業を統合しながらも、それぞれの企業の独立性を維持することができるため、業種や規模が異なる企業の統合に適しています。

株式移転の大きなメリットは、ホールディングス体制の構築により、資本効率の向上や経営資源の集約が可能になる点です。また、新たに設立される持株会社が全株式を取得するため、各企業の株主は持株会社の株式を保有することになり、企業間の株主構成を再編成することができます。ただし、株式移転には法的手続きや債権者保護手続きが必要であり、慎重な計画と実行が求められます。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の一部または全ての事業を他の会社に譲渡するストラクチャーです。この手法では、譲渡する事業内容を特定し、必要な資産や負債、契約などを個別に移転します。事業譲渡は、特定の事業のみを切り出して譲渡できるため、売り手企業が不要な事業を整理し、経営資源を中核事業に集中させる際に有効です。

しかし、事業譲渡には多くの手続きが伴い、譲渡する事業に関連する許認可や契約の再締結が必要となるため、手続きが非常に複雑です。また、事業譲渡に際しては、従業員や取引先との再契約も必要となる場合があり、これがスムーズに進まないとM&A全体に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの手続きを適切に行うことで、事業譲渡のメリットを最大限に活用できます。

会社分割

会社分割は、会社の一部または全ての事業を他の会社に包括的に移転する手法です。会社分割には、既存の会社に事業を移転する「吸収分割」と、新たに設立した会社に移転する「新設分割」の2種類があります。この手法は、事業の再編や再構築を目的とする場合に適しており、特定の事業部門を独立させる際に用いられます。

会社分割のメリットは、事業を切り離すことで、経営効率を向上させたり、特定の事業に資源を集中させたりできる点です。また、分割された事業は独立した法人として運営されるため、リスクの分散にもつながります。一方で、会社分割には労働契約承継手続きや債権者保護手続きが必要となるため、実施には時間と労力がかかります。これらの手続きを円滑に進めるためには、事前の準備と計画が重要です。

合併

合併は、複数の会社を統合し、一つの会社にするストラクチャーです。合併には、存続会社が消滅会社を吸収する「吸収合併」と、新たに設立した会社が複数の会社を統合する「新設合併」の2種類があります。合併は、企業の統合を通じて経営資源を集約し、競争力を強化するための手法として広く用いられています。

吸収合併のメリットは、存続会社が消滅会社の資産や負債を包括的に承継するため、事業の移行がスムーズに進む点です。また、新設合併は、全ての統合企業が新会社に承継されるため、企業の新たなスタートを切ることができます。しかし、合併には株主総会の特別決議や債権者保護手続きが必要であり、また税務面での影響も考慮しなければなりません。合併を成功させるためには、これらの要素を十分に検討する必要があります。

第三者割当増資

第三者割当増資は、特定の第三者に対して新株を発行し、増資を行う手法です。この手法は、資金調達を目的とするM&Aにおいてよく利用されます。第三者割当増資のメリットは、特定の戦略的パートナーに対して株式を発行することで、資本提携を強化しつつ資金を調達できる点にあります。

しかし、第三者割当増資には、既存株主の持株比率が低下する「株式希薄化」のリスクが伴います。このため、既存株主の同意を得ることが重要であり、特に株式の発行価格が市場価格よりも低い場合には、株主総会での特別決議が必要となります。また、第三者割当増資は、M&Aにおいて買い手が経営権を取得する手段としても活用されるため、戦略的な視点での計画が求められます。

ストラクチャー選定の際に考慮すべきポイント

M&Aにおいて、ストラクチャーの選定は非常に重要な決定事項です。適切なストラクチャーを選ぶことで、M&Aの目的達成がスムーズに進む一方で、誤った選択をすると、予期せぬリスクやコストが発生し、M&A全体の成功が危うくなります。ここでは、買い手と売り手のそれぞれの立場から見たストラクチャー選定のポイントについて詳しく解説します。これらの視点を考慮することで、最適なストラクチャーを選び、M&Aを成功に導くことができるでしょう。

買い手の視点からの考慮すべきポイント

買い手にとって、M&Aのストラクチャーを選定する際に最も重要なポイントは、M&Aの目的とそれに伴うリスク管理です。買い手が何を達成したいのか、そしてその達成のためにどのようなリスクを取る準備があるのかを明確にすることで、適切なストラクチャーを選ぶことができます。

1. M&Aの目的を明確にする

M&Aの目的は、ストラクチャー選定の基礎となります。例えば、対象会社の経営権を取得して支配を確立したい場合には、株式譲渡や株式交換、株式移転といったストラクチャーが有力な選択肢となります。一方で、特定の事業部門のみを取得したい場合には、事業譲渡や会社分割が適しています。M&Aの目的により、選ぶべきストラクチャーが異なるため、まずは目的を明確にすることが重要です。

2. 対価の形式と資金調達の検討

買い手は、対価を現金で支払うか、株式を用いるか、またはその両方を組み合わせるかを考慮する必要があります。現金での支払いは迅速な取引完了を可能にしますが、資金調達が必要となり、財務面での負担が大きくなります。一方、株式を対価とする場合、資金負担を軽減できるものの、買い手の株式が希薄化するリスクがあります。このため、買い手は自社の財務状況や資本構成を考慮し、最適な対価形式を選定することが求められます。

3. リスク管理とデューデリジェンスの重要性

買い手は、ストラクチャーを選定する際に、リスク管理を徹底する必要があります。株式譲渡の場合、売り手企業の簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクがあるため、慎重なデューデリジェンスが不可欠です。また、事業譲渡や会社分割では、特定の資産や負債のみを引き継ぐことができるため、リスクの限定が可能ですが、手続きが複雑になる傾向があります。買い手は、これらのリスクを十分に理解し、適切なストラクチャーを選ぶことが重要です。

売り手の視点からの考慮すべきポイント

売り手にとって、M&Aのストラクチャーを選定する際のポイントは、買い手の意向を考慮しつつも、自社の目的や希望を最大限に反映することです。特に事業承継や対価の受け取り方に関しては、慎重な判断が求められます。

1. 事業承継の目的を考慮する

多くの売り手企業にとって、M&Aの目的は事業承継や次世代への引き継ぎにあります。この場合、売り手は自社全体を譲渡するのか、一部の事業のみを譲渡するのかを明確にする必要があります。会社全体を承継する場合、株式譲渡や株式交換、株式交付といったストラクチャーが適しています。一方、特定の事業のみを譲渡する場合は、事業譲渡や会社分割が有効です。売り手は、事業承継の目的に応じて、適切なストラクチャーを選定することが求められます。

2. 対価の受け取り方を検討する

売り手にとって、M&Aの対価は非常に重要な要素です。対価が現金で支払われる場合、資金を即座に得ることができますが、税金の負担が発生することを考慮する必要があります。一方で、株式で対価を受け取る場合、将来的な成長の恩恵を受けられる可能性がありますが、株価変動リスクが伴います。売り手は、対価の形式が自社にとって最も有利になるように検討し、ストラクチャーを選定することが重要です。

3. 既存株主や従業員への影響を考慮する

M&Aによるストラクチャーの選定は、既存株主や従業員に対しても影響を及ぼすため、これらのステークホルダーの利益を考慮することが求められます。例えば、株式譲渡では、既存株主が買い手に株式を売却し、経営権が移行しますが、事業譲渡や会社分割では、従業員や取引先との契約の再締結が必要となり、手続きが複雑になる場合があります。売り手は、これらの影響を十分に理解し、ステークホルダーに配慮したストラクチャーを選ぶことが重要です。

各ストラクチャーにおける手続きと注意点

M&Aの成功には、選択したストラクチャーに応じた正確かつ適切な手続きを進めることが不可欠です。各ストラクチャーには独自の手続きとそれに伴う注意点があり、これらを把握することがM&Aプロセスをスムーズに進める鍵となります。ここでは、代表的なストラクチャーにおける手続きの流れと、注意すべきポイントを解説していきましょう。

株式譲渡・TOBの手続きと注意点

株式譲渡は、M&Aにおける最も一般的な手法で、売り手が保有する会社の株式を買い手が取得することで、経営権を移転します。この手続きでは、売り手と買い手が株式譲渡契約を締結し、株式の移転と対価の支払いが同時に行われます。株式譲渡の大きな特徴は、債権者保護手続きが不要である点です。つまり、売り手企業の負債や債務も一括して買い手に引き継がれるため、取引が迅速に進められます。

一方で、買い手は売り手企業の簿外債務や偶発債務も引き継ぐリスクがあるため、デューデリジェンスを慎重に行うことが求められます。株式譲渡は、株主の数が少ない非上場企業において特に有効ですが、株主が多数いる場合には株主間の合意形成が重要な課題となります。

TOB(株式公開買付)は、株式譲渡の一形態で、買い手が市場を通さずに公開買付けを行い、広く株主から株式を買い集める手法です。TOBには、対象企業の経営陣の同意を得た上で実施される友好的TOBと、同意を得ずに実施される敵対的TOBがあります。TOBの手続きでは、買い手は買付け価格や募集株式数、買付期間を公告し、これに応じた株主から株式を買い集めます。

TOBは、債権者保護手続きが不要であり、迅速に株式を集められる一方で、買付価格の設定が重要です。買付価格は通常、株主に売却を促すために市場価格よりも高額に設定されるため、買い手にとってはコストが高くなる可能性があります。また、敵対的TOBの場合、対象企業の防衛策により、買収が困難になるリスクもあるため、事前に対応策を講じることが必要です。

株式交換・株式交付の手続きと注意点

株式交換は、買い手が自社の株式を対価として、対象会社の全株式を取得し、対象会社を完全子会社化する手法です。株式交換の手続きでは、まず買い手と売り手の双方が株式交換契約を締結し、その後、対象会社の株主総会で特別決議が行われます。特別決議では、対象会社の株主の2/3以上の賛成が必要であり、これを満たすことで株式交換が成立します。

株式交換において重要な注意点は、反対株主の株式買取請求権です。株式交換に反対する株主は、株式買取請求権を行使し、株式を公正な価格で買い取ってもらうことができます。買い手は、この請求に対して適切に対応する必要があり、これが予期せぬコスト増加につながる可能性があります。

株式交付は、2021年に新設された制度で、対象会社の株式を取得し、その対価として自社の株式を交付する手法です。株式交付は、株式交換と異なり、対象会社を完全子会社化する必要がないため、柔軟なM&Aが可能です。株式交付の手続きでは、買い手が株主総会の特別決議を行う一方で、対象会社の株主総会の決議は不要です。

株式交付の注意点として、対価に株式を含める必要がある点が挙げられます。買い手は、対象会社の株主に対して株式を交付する義務があるため、株価変動リスクを考慮しなければなりません。また、株式交付は比較的新しい手法であるため、実施前に法的要件や手続きについて十分な確認が必要です。

株式移転の手続きと注意点

株式移転は、複数の企業が新設する持株会社に全株式を移転させ、ホールディングス体制を構築する手法です。この手法は、既存の企業を統合しつつ、それぞれの独立性を維持する目的で用いられます。株式移転の手続きでは、まず株式移転計画を策定し、各企業の株主総会で特別決議を行います。この決議には、株主の2/3以上の賛成が必要です。

株式移転における重要な注意点は、債権者保護手続きの実施です。株式移転により、企業の資本構成が大きく変わるため、債権者保護手続きが必要となる場合があります。また、株式移転は、金融商品取引法に基づく各種手続きも必要であり、特に上場企業の場合、開示義務や取引制限に注意が必要です。

さらに、株式移転の結果、株主は新たに設立される持株会社の株式を保有することになるため、株主構成の変化や、それに伴う議決権の変動についても考慮する必要があります。これらの手続きと影響を慎重に検討し、適切な計画を立てることが重要です。

事業譲渡の手続きと注意点

事業譲渡は、会社の一部または全ての事業を他の会社に譲渡する手法で、特定の事業を切り出して譲渡できる点が特徴です。事業譲渡の手続きでは、まず売り手と買い手が事業譲渡契約を締結し、その後、譲渡企業の株主総会で特別決議を行います。特別決議では、株主の過半数の出席と、その出席者の2/3以上の賛成が必要です。

事業譲渡の際に注意すべき点として、許認可の再取得や従業員や取引先との再契約が挙げられます。事業譲渡によって事業を承継する場合、許認可が自動的に移転しないケースが多く、新たに取得する必要があります。また、従業員との雇用契約や取引先との契約も、新たに締結し直す必要があり、これがスムーズに進まないとM&A全体に影響を与える可能性があります。

さらに、競業避止義務にも注意が必要です。事業譲渡の場合、売り手は一定期間、譲渡した事業と同一の事業を行うことが禁止されているため、譲渡後の事業活動に制約が生じることがあります。これらの手続きや義務を十分に理解し、適切に対応することで、事業譲渡の成功を確実にすることができます。

会社分割・合併の手続きと注意点

会社分割は、事業の一部または全てを切り離し、他の会社に包括的に移転する手法です。会社分割には、既存の会社に事業を移転する吸収分割と、新たに設立する会社に移転する新設分割があります。会社分割の手続きでは、まず分割計画を策定し、分割企業の株主総会で特別決議を行います。この決議には、株主の2/3以上の賛成が必要です。

会社分割においては、労働契約承継手続きが重要な注意点となります。分割に伴って事業が移転される場合、従業員の雇用契約も新たに承継先企業に移転する必要があり、この際に従業員への事前通知や同意が求められます。また、分割計画が債権者に不利益をもたらす場合、債権者保護手続きが必要となるため、事前に適切な対応を講じることが求められます。

合併は、複数の会社を統合し、一つの会社にする手法です。合併には、存続会社が消滅会社を吸収する吸収合併と、新たに設立された会社に統合する新設合併があります。合併の手続きでは、合併契約を締結した後、関係する各社の株主総会で特別決議を行います。この決議では、株主の2/3以上の賛成が必要です。

合併においては、労働契約承継手続きや債権者保護手続きに加え、合併情報の公開が求められます。合併によって影響を受ける利害関係者の保護を図るため、合併情報を適切に開示し、異議申立の機会を提供することが必要です。また、合併後の新会社における経営統合やシナジー効果の実現も、合併の成功に向けた重要な要素となります。

第三者割当増資の手続きと注意点

第三者割当増資は、新たに発行する株式を特定の第三者に引き受けてもらい、増資を行う手法です。この手法は、資金調達を目的とするだけでなく、M&Aにおける経営権の移行手段としても利用されます。第三者割当増資の手続きでは、まず取締役会が株式の募集要項を決定し、割当先や株式の割当数を決定します。通常は、取締役会の決議のみで実施できますが、有利発行の場合には株主総会の特別決議が必要です。

第三者割当増資において注意すべき点は、株式の希薄化です。新たな株式発行によって既存株主の持株比率が低下するため、株主間の利益調整が重要となります。また、株価が市場価格よりも低く設定される場合、有利発行と見なされ、株主総会での特別決議が必要となります。この際、株主間の合意を得るための十分な説明が求められます。

さらに、第三者割当増資は、買い手企業が発行会社の経営権を取得する手段としても利用されるため、支配権の移行に伴うリスクも考慮する必要があります。取締役会や株主総会での適切な手続きと、戦略的な計画が不可欠です。

まとめ: ストラクチャーの選定がM&Aの成否を分ける!

M&Aの成否は、適切なストラクチャーの選定に大きく左右されます。本記事で解説したように、各ストラクチャーにはそれぞれの特徴や手続き、リスクがあり、買い手と売り手双方の目的や状況に応じた選定が求められます。たとえば、株式譲渡やTOBは経営権の迅速な移行に有効であり、株式交換や株式交付は資金調達を抑えつつ支配権を獲得する手段として活用できます。また、事業譲渡や会社分割は特定の事業を選別して譲渡する際に適しており、合併や第三者割当増資は企業の統合や資金調達に役立ちます。

M&Aを成功に導くためには、目的を明確にし、選定するストラクチャーの特性やリスクを十分に理解することが不可欠です。企業ごとの状況や目的に最も適したストラクチャーを選び、慎重に手続きを進めることで、M&Aの目的を達成し、企業の成長や再編を実現することができるでしょう。M&Aの専門家と協力しながら、最適な戦略を構築し、成功への道筋を描きましょう。

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