マーケティング業界は、デジタル化の急速な進展や消費者行動の変化により、大きな変革期を迎えています。特に、企業が競争力を維持し、成長を遂げるための手段としてM&Aがますます重要視されています。この記事では、マーケティング業界における最新のM&A事情に焦点を当て、業界全体の動向やM&Aがもたらすメリットとリスク、そして注目すべきM&A事例を7つ紹介します。これらの事例を通じて、業界がどのように変化し、企業がどのようにして市場での優位性を確立しているのかを深く掘り下げていきます。
- この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)
マーケティング業界におけるM&Aの現状と背景
マーケティング業界は、デジタル技術の進化とそれに伴う消費者行動の変化により、急速な変革を遂げています。この変化は企業にとって、従来のマーケティング手法を見直し、新たな戦略を構築する必要性を強く感じさせています。特に、デジタルシフトの進展と人材不足が企業にM&Aを促す大きな要因となっており、業界全体でその重要性が増しています。ここでは、マーケティング業界におけるM&Aの必要性と、それを推進する要因について見ていきます。
マーケティング業界の急速な変化とM&Aの必要性
近年、マーケティング業界は急速な変化を遂げています。この変化の大きな要因は、デジタル技術の進化とそれに伴う消費者行動の変化にあります。従来のテレビ、ラジオ、新聞といったマスメディアを中心としたマーケティング手法は、デジタル化の波によってその役割が大きく変わりつつあります。デジタルデバイスの普及やインターネットの高速化により、消費者はいつでもどこでも情報にアクセスできるようになり、その結果、マーケティング活動もデジタルチャネルを中心に展開されるようになっています。
このような市場環境の変化に対応するため、多くの企業がマーケティング戦略の見直しを迫られています。特に、デジタルマーケティングやWebマーケティングの分野でリードする企業は、より広範なデータ分析能力や最新の技術を駆使して、消費者のニーズを正確に捉え、効果的なキャンペーンを実施する必要があります。しかし、これを自社内で全て賄うことは非常に難しく、多くの企業が外部の専門家や技術を取り入れるためにM&A(合併・買収)を積極的に活用しています。
M&Aを通じて他社の持つ専門的な技術やノウハウを取り込むことで、企業は迅速に市場の変化に対応することができます。また、M&Aは単なる技術の取得にとどまらず、新たな市場への参入や既存市場での競争力強化にも寄与します。例えば、Webマーケティングに強みを持つ企業を買収することで、従来のオフラインマーケティングにデジタルの要素を組み込み、顧客へのリーチを拡大することが可能です。このように、マーケティング業界におけるM&Aは、企業が急速に変化する市場環境に適応し、競争優位を維持するための重要な戦略手段となっています。
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デジタルシフトと人材不足が促進するM&A
デジタル化の進展は、マーケティング業界全体に大きな影響を与えています。従来のマーケティング手法に加え、デジタルチャネルを活用したマーケティングが主流となりつつあり、企業はこの変化に対応するために、迅速かつ柔軟にデジタル戦略を構築する必要に迫られています。しかし、これを実現するには、高度な専門知識を持つ人材が不可欠です。
現在、Webマーケティングやデジタルマーケティングに特化した人材の需要が急増していますが、それに対して供給が追いついていないのが現状です。特に、SEO、リスティング広告、データ分析、SNSマーケティングといった分野では、専門的な知識と経験が求められ、これらのスキルを持つ人材は非常に貴重な存在となっています。このような状況下で、多くの企業がデジタルマーケティングの強化を図るため、M&Aを選択肢として考えるようになっています。
M&Aを通じて、企業は必要な人材や技術を一度に獲得することができます。例えば、デジタルマーケティングに強みを持つ企業を買収することで、その企業が持つ専門知識やスキルを自社に取り込み、即座にデジタル戦略を強化することが可能です。また、M&Aは人材確保だけでなく、事業の多角化や新市場への参入を促進する手段としても機能します。特に、クロスボーダーM&Aによって海外の優れたデジタルマーケティング企業を買収するケースも増えており、これにより企業はグローバルな視点でのマーケティング戦略を展開することができます。
さらに、M&Aは企業間の競争を緩和し、市場の競争環境を整える効果も期待されます。市場における競合他社の買収により、業界全体の競争が激化することを防ぎつつ、事業の成長を図ることができるのです。こうした理由から、デジタルシフトとそれに伴う人材不足は、マーケティング業界におけるM&Aの重要性を一層高める要因となっています。
WEBマーケティング業界のM&A事情
WEBマーケティング業界は、近年ますます重要性を増しています。インターネットの普及とデジタル技術の進化に伴い、消費者の購買行動がオンラインにシフトする中、企業はWEBマーケティングを駆使して効率的にターゲット層にリーチし、ブランド認知や売上を拡大しようとしています。しかし、この分野は急速に進化しており、技術や消費者の行動パターンも常に変化しています。そのため、企業は市場での競争力を維持・強化するために、他社のノウハウや技術を取り込むことができるM&Aを積極的に活用しています。ここでは、WEBマーケティング業界におけるM&Aの事情を掘り下げ、業界特有のトレンドを解説します。
WEBマーケティングとデジタルマーケティングの違い
まず、WEBマーケティングとデジタルマーケティングの違いを理解することが重要です。この2つの用語はしばしば混同されますが、実際には異なる概念です。WEBマーケティングは、インターネット上で行われるマーケティング活動全般を指し、具体的にはSEO(検索エンジン最適化)、リスティング広告、アフィリエイト、コンテンツマーケティングなど、主にWEBサイトやアプリを中心とした施策が含まれます。これらの施策は、企業のWEBサイトに訪れるユーザーを増やし、その中から実際の購入や問い合わせといったコンバージョンを促すことを目的としています。
一方で、デジタルマーケティングは、WEBマーケティングを内包するより広義な概念です。デジタルマーケティングには、WEBマーケティングの要素に加えて、SNS、メール、デジタルサイネージ、モバイルアプリ、さらにはオフラインでのデジタル技術を活用したマーケティング活動(例えば、QRコードを使用したキャンペーンなど)も含まれます。デジタルマーケティングの主な特徴は、オンラインとオフラインを問わず、あらゆるデジタルチャネルを通じて顧客と接点を持ち、それらのデータを統合的に活用してマーケティング施策を最適化できる点です。
この違いを理解することで、WEBマーケティング業界のM&Aがどのように展開されているのかをより深く理解することができるでしょう。
WEBマーケティング業界におけるM&Aのトレンド
WEBマーケティング業界では、デジタル技術の進化とそれに伴う市場環境の変化が、M&Aの動きを加速させています。特に、インターネット広告の市場規模が急速に拡大する中で、大手広告代理店やコンサルティングファーム、さらにはIT企業がこの分野に進出し、既存のWEBマーケティング企業を買収するケースが増えています。
M&Aの主な目的は、人材不足の解消と技術の獲得です。WEBマーケティングは、高度な技術と専門知識を必要とするため、優秀な人材の確保が企業の成長にとって極めて重要です。しかし、業界全体で専門人材が不足しているため、企業はM&Aを通じて即戦力となる人材を確保しようとしています。
また、クロスボーダーM&Aも増加傾向にあります。国内市場に限らず、海外市場でも成長が期待される地域への進出を目指す企業が、現地のWEBマーケティング企業を買収する動きが活発化しています。特に、東南アジアやインドなどの新興市場では、インターネットの普及とともに広告市場が急速に成長しており、この地域でのプレゼンスを高めるためにM&Aが活用されています。
さらに、大手広告代理店がWEBマーケティング企業を買収することで、従来の広告サービスとデジタルマーケティングサービスを統合し、包括的なマーケティング支援を提供する動きも見られます。これにより、クライアント企業に対して一貫性のあるマーケティング戦略を提供し、競争力を強化することが可能になります。
これらのトレンドから、WEBマーケティング業界は今後もM&Aが重要な戦略手段として活用され、業界全体の再編が進むことが予想されます。このようなM&Aの動きは、企業にとって市場での優位性を確保するための重要な手段であり、今後も注目される分野となるでしょう。
M&Aがもたらすメリットとリスク
M&Aは、企業戦略の一環として広く利用されており、企業の成長を促進するための強力な手段です。特にWEBマーケティング業界では、急速な技術の進化と市場環境の変化に対応するため、多くの企業がM&Aを積極的に活用しています。しかし、M&Aには多くのメリットがある一方で、リスクも伴います。ここでは、M&Aがもたらす主なメリットとリスクについて解説し、企業がどのようにこれらを管理すべきかを考察します。
人材獲得と競争力強化のメリット
M&Aの最も重要なメリットの一つは、優秀な人材の獲得です。特にWEBマーケティング業界では、高度な専門知識と技術を持つ人材が不足しているため、M&Aを通じて即戦力となる人材を一度に確保することができる点は非常に大きな利点です。例えば、SEOやリスティング広告、コンテンツマーケティングなどの特定分野において高いスキルを持つチームや個人を獲得することで、企業の競争力を短期間で大幅に強化することが可能です。
また、M&Aによって競争力を強化できるというメリットも見逃せません。競合企業を買収することで市場シェアを拡大し、競争相手を減らすことができます。これにより、市場でのプレゼンスを高めると同時に、買収した企業の顧客基盤や技術、ノウハウを自社のものとすることで、より一層の成長が期待できます。さらに、買収先のブランド価値や市場での評判を自社のものとして活用することで、マーケティング戦略の強化や新規顧客の獲得にもつなげることが可能です。
事業領域拡大とクロスボーダーM&Aの可能性
M&Aは、企業の事業領域を拡大するための有効な手段でもあります。特に、異なる分野の企業を買収することで、新たな市場や事業領域に進出することができます。例えば、WEBマーケティング企業がデジタルマーケティング全般に対応できるよう、SNSマーケティングや動画コンテンツ制作を専門とする企業を買収することで、自社のサービスラインナップを拡充し、より多様な顧客ニーズに対応することが可能になります。
また、クロスボーダーM&Aの可能性も大きな魅力です。国内市場に限らず、成長が期待される海外市場に進出するために、現地の有力企業を買収するケースが増えています。特に、東南アジアやインドなど、インターネットの普及に伴って急速に成長している市場では、現地企業との提携や買収を通じて市場参入を果たし、グローバルなビジネス展開を図る企業が増加しています。こうしたM&Aは、企業にとって新たな成長の機会を提供するだけでなく、リスクの分散や経営の多角化にも寄与します。
M&Aに伴うリスクとその管理
一方で、M&Aには多くのリスクが伴うことも事実です。まず、買収対象企業の実態を十分に把握できない場合、後になって財務上の問題や法的リスクが表面化することがあります。これにより、買収コストが予想以上に膨らんだり、統合がスムーズに進まなかったりする可能性があります。特に、異なる企業文化やビジネスモデルを持つ企業同士が統合する際には、組織文化の融合が難しく、従業員の士気低下や退職者の増加を招くことがあります。
また、M&A後の統合プロセス(PMI: Post-Merger Integration)がうまく機能しないと、シナジー効果を十分に発揮できないリスクもあります。統合に時間がかかり過ぎると、競争環境が変化し、せっかくのM&Aが期待した成果を上げられない可能性が高まります。このため、M&Aを成功させるためには、事前のデューデリジェンス(企業価値の評価)を徹底し、買収後の統合計画を詳細に策定・実行することが重要です。
さらに、クロスボーダーM&Aでは、法規制の違いや言語・文化の壁がリスク要因となります。現地の法律や商習慣に詳しい専門家を活用し、入念な準備を行うことが求められます。
M&Aを成功させるためには、これらのリスクを適切に管理し、買収前後のプロセスをしっかりとコントロールすることが必要です。リスク管理の体制を整え、迅速かつ柔軟に対応することで、M&Aのメリットを最大限に引き出すことができるでしょう。
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マーケティング業界の最新M&A動向
マーケティング業界は近年、急速に変化し続けており、その中でもM&A(企業の合併・買収)は重要な役割を果たしています。特にデジタル化の進展に伴い、企業は市場環境に適応し、競争力を維持するために、他社との統合や買収を積極的に進めています。ここでは、マーケティング業界における最新のM&A動向について、特にテレビ広告からデジタル広告へのシフトと、IT業界からの新規参入による業界再編の進展に焦点を当てて解説します。
テレビ広告からデジタル広告へのシフト
かつて、マーケティング業界における広告の主力はテレビ広告でした。テレビ広告は長い間、企業のブランディングや商品プロモーションにおいて重要な役割を果たしてきましたが、近年、デジタル広告がその地位を急速に奪い取っています。2019年には、ついにインターネット広告の市場規模がテレビ広告を超え、マーケティングの主戦場はデジタルへとシフトしました。
このデジタル広告へのシフトは、消費者のメディア消費行動の変化によるものです。インターネットの普及とスマートフォンの台頭により、消費者はテレビよりもオンラインでの情報収集やエンターテインメント消費に時間を費やすようになりました。これにより、企業も消費者が集まるオンラインプラットフォームでの広告出稿を増やし、デジタルマーケティングの重要性が飛躍的に高まっています。
このような市場の変化に対応するため、マーケティング企業はデジタル広告に特化した企業を積極的に買収しています。例えば、大手広告代理店がデジタル広告企業を次々と買収することで、デジタルマーケティングにおける競争力を強化し、オンライン広告市場での存在感を高めています。また、デジタルマーケティングにおける専門知識や技術を持つスタートアップ企業を買収することで、最先端の広告技術やデータ分析能力を取り入れ、自社のサービスを強化する動きも見られます。
さらに、デジタル広告の市場規模が拡大する中で、動画広告やSNS広告など、新しい広告フォーマットへの対応が求められています。これに伴い、動画制作やコンテンツマーケティングに強みを持つ企業が買収の対象となるケースも増えています。こうしたM&Aの動きは、デジタル広告市場の多様化と細分化が進む中で、企業が競争力を維持し、成長を続けるための戦略的な手段となっています。
IT業界の新規参入と業界再編の進展
マーケティング業界におけるもう一つの重要な動向は、IT業界からの新規参入とそれに伴う業界再編です。IT業界の企業が持つテクノロジーやデータ分析の能力が、マーケティング業界においてもますます重要視されるようになり、これが業界全体の構造に大きな影響を与えています。
IT企業は、デジタルマーケティングの領域において強みを発揮しやすく、特にデータドリブンなマーケティング手法を活用するための技術力が求められるようになっています。これにより、IT企業がマーケティング業界への参入を果たし、既存のマーケティング企業との競争が激化しています。この動きの一環として、IT企業がマーケティング企業を買収するケースが増えており、これによりマーケティング業界全体が再編されつつあります。
例えば、アクセンチュアやデロイトなどの大手コンサルティング会社が、デジタルマーケティング企業を買収し、そのサービスラインナップを拡充する動きが活発化しています。これにより、これまでITやコンサルティングに特化していた企業が、マーケティング分野においても強力なプレーヤーとなり、業界の競争構造が変化しています。
さらに、大手広告代理店もIT企業やテクノロジー企業との提携や買収を通じて、デジタル領域での競争力を高めようとしています。これにより、広告業界とIT業界の境界が曖昧になり、両者が融合する形で新たなビジネスモデルが生まれつつあります。このような業界再編の動きは、今後さらに加速することが予想され、マーケティング業界全体の構造を根本から変える可能性を秘めています。
総じて、IT業界の新規参入とそれに伴う業界再編は、マーケティング業界に新たな競争の波をもたらしています。企業はこの変化に適応し、デジタル技術を駆使したマーケティング戦略を展開することで、持続的な成長を目指しています。このような動きは、マーケティング業界におけるM&Aのトレンドを理解する上で欠かせない要素となっており、今後も注目される分野であることは間違いありません。
マーケティング業界のM&A事例7選
マーケティング業界では、近年のデジタル化やグローバル化の進展に伴い、企業間のM&Aが活発に行われています。これにより、各企業は専門的なノウハウやリソースを統合し、競争力を強化することが狙いとされています。ここでは、マーケティング業界で注目されるM&A事例を7つ紹介し、それぞれの背景や目的について解説します。
1. 株式会社新大陸ホールディングスとOff Beat株式会社のM&A
2024年1月、株式会社新大陸ホールディングスは、動画マーケティングを手がけるOff Beat株式会社を子会社化しました。このM&Aの背景には、動画マーケティングの需要が急速に拡大していることが挙げられます。特に住宅業界向けのWEBマーケティングを主力とする新大陸ホールディングスにとって、動画コンテンツの重要性が高まる中、クリエイティブ制作能力を強化する必要がありました。
Off Beatは、クリエイティブな動画制作に強みを持ち、YouTubeやTikTokなどのプラットフォームを活用したマーケティング支援を行っています。新大陸ホールディングスは、これらの能力を取り込むことで、より包括的なWEBマーケティング支援を提供できるようになり、クライアントへのサービス価値を高めることを目指しています。
このM&Aにより、新大陸ホールディングスは、住宅業界のみならず、より広範な業界に対しても動画を活用したマーケティングソリューションを提供する力を強化しました。これにより、競争力を高め、成長を加速させることが期待されています。
2. 株式会社クロス・マーケティンググループと株式会社トキオ・ゲッツのM&A
2023年5月、株式会社クロス・マーケティンググループは、エンタメコラボ専門エージェンシーの株式会社トキオ・ゲッツを子会社化しました。このM&Aは、クロス・マーケティンググループが、マーケティングリサーチを核としたプロモーション支援をさらに強化するために行われました。
クロス・マーケティンググループは、従来から生活者のインサイトを深く理解するリサーチサービスを提供してきましたが、エンタメや知財コンテンツの活用には限界がありました。一方、トキオ・ゲッツは、エンターテインメント業界におけるコラボプロモーションやイベント企画に豊富な実績を持つ企業です。
このM&Aにより、クロス・マーケティンググループは、エンタメコンテンツを活用した新たなプロモーション手法を取り入れ、クライアント企業に対してより多様なプロモーション支援を提供できるようになりました。これにより、マーケティング業界における地位をさらに強化しています。
3. テモナ株式会社とAIS株式会社のM&A
2022年1月、テモナ株式会社は、AIS株式会社を株式取得により子会社化しました。テモナはサブスクリプションビジネスに特化したクラウド型システムを提供しており、顧客のビジネス成長を支援する中で、広告運用やマーケティング支援のニーズに対応することが求められていました。
AISは、リピート通販の領域に特化したWeb広告事業を展開しており、美容・健康関連の商材での顧客獲得に強みを持っています。テモナは、AISの持つノウハウを取り込むことで、自社のクライアントに対してより広範なマーケティング支援を提供し、取引拡大や解約率の低減を狙っています。
このM&Aは、サブスクリプションビジネスのバリューチェーンを拡充し、顧客満足度を高めるための重要なステップとなっており、テモナの成長戦略において大きな意味を持っています。
4. 株式会社オーリーズとQetic株式会社のM&A
2022年3月、株式会社オーリーズは、メディア・ウェブサイト構築やウェブマーケティング事業を展開するQetic株式会社を子会社化しました。オーリーズは、広告運用を中心としたマーケティング支援を行う広告代理店で、インハウス支援サービスに強みを持っています。
Qeticは、自社メディアの運営経験を活かし、ウェブサイト構築やアートディレクション、イベント企画など、多岐にわたるマーケティングサービスを提供しています。オーリーズは、Qeticのクリエイティブ能力を取り込むことで、自社のマーケティング支援におけるクリエイティブ領域を強化し、クライアントの商品やサービスの「コンセプト」領域にも対応できるようにしました。
このM&Aにより、オーリーズはマーケティング支援の幅を広げ、クライアントに対してより付加価値の高いサービスを提供することが可能となりました。特に、クリエイティブとデータドリブンな広告運用の融合により、クライアントの事業成長に大きく寄与することが期待されています。
5. 博報堂DYホールディングスとソウルドアウト株式会社のM&A
2022年2月、博報堂DYホールディングスは、デジタルホールディングス傘下のソウルドアウト株式会社を完全子会社化しました。博報堂DYは、インターネット広告に注力しており、特に地方企業や中小企業を対象としたネット広告市場での成長を目指しています。
ソウルドアウトは、主に中小企業向けのネットマーケティング支援を行っており、地域に根ざした企業のデジタル広告運用において豊富な実績を持っています。このM&Aにより、博報堂DYは地方や中小企業向けのデジタルマーケティング支援体制を強化し、国内全域における市場シェアを拡大することを目指しています。
この買収は、博報堂DYがインターネット広告分野での地位をさらに強固なものとし、デジタルホールディングスとのシナジーを生かして、クライアント企業の多様なニーズに対応するための戦略的な一手となりました。
6. 楽天グループ株式会社と株式会社LOBの吸収合併
2021年10月、楽天グループ株式会社は、子会社である株式会社LOBを吸収合併しました。LOBは、インターネット広告の効率化を図るツール「PERTH」を開発・提供している企業で、楽天のマーケティング支援において重要な役割を果たしていました。
楽天は、LOBの吸収合併により、広告運用の効率化とコスト削減を図るとともに、楽天グループ全体のマーケティングサービスを強化しました。この合併により、楽天はECやフィンテック、モバイルキャリア事業など、幅広い分野でのマーケティング支援能力をさらに向上させ、クライアント企業に対してより効果的なマーケティング戦略を提供できるようになりました。
このM&Aは、楽天グループが持つ多様なビジネス領域を統合し、シナジーを最大限に活用するための戦略的な動きであり、今後の成長を支える基盤となるでしょう。
7. 株式会社プリンシプルとEBOOST CONSULTINGのM&A
2021年8月、株式会社プリンシプルは、米国のデジタル広告エージェンシーであるEBOOST CONSULTINGを子会社化しました。プリンシプルは、日本企業の北米市場進出を支援するために、シリコンバレーを拠点とする子会社
を通じて、デジタルマーケティングサービスを提供してきました。
EBOOST CONSULTINGは、米国市場においてソーシャルメディア広告やアマゾン広告の運用に強みを持ち、現地の企業に対して高い成果を上げています。このM&Aにより、プリンシプルは北米市場におけるサービス提供力を大幅に強化し、日本企業の海外進出支援において競争力を高めました。
この買収は、プリンシプルが北米市場でのプレゼンスを拡大し、現地のビジネス文化に適応したマーケティング戦略を提供するための重要なステップとなっています。今後も、グローバルなマーケティング支援を強化するために、さらなるM&Aが進められる可能性があります。
これらの事例からもわかるように、マーケティング業界におけるM&Aは、企業が競争力を強化し、市場での地位を確立するための重要な手段となっています。各企業は、それぞれの強みを生かし、戦略的にM&Aを活用して成長を続けています。
まとめ:マーケティング業界の動向を踏まえたM&A戦略を立案しよう!
マーケティング業界におけるM&Aは、企業の成長と競争力の強化を支える重要な戦略であり、業界全体に大きな影響を与えています。デジタル化の進展や新規参入企業の増加により、競争が激化する中で、企業は人材獲得や事業領域の拡大を目指してM&Aを積極的に活用しています。しかし、M&Aにはリスクも伴うため、適切な管理と戦略的な計画が不可欠です。
この記事で紹介した事例からもわかるように、各企業は自社の強みを生かしながら、M&Aを通じて新たな可能性を追求しています。今後も、マーケティング業界においてM&Aが果たす役割はますます重要になるでしょう。