M&Aにおける税務とは?かかる税金や節税方法まで詳しく解説!

M&Aは、企業の成長戦略や事業再編の手段として重要な役割を果たしています。しかし、M&Aの成功には、適切な税務対応が欠かせません。税務はM&Aの手法や取引の内容によって大きく異なり、税務リスクを見逃すと後々の経営に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、M&Aに関わる主要な税金の種類、税務リスクの管理方法、そして効果的な節税方法について解説します。

この記事を監修した人:福住優(M&A情報館 代表取締役)

M&Aにかかる税金の種類

M&Aにかかる税金は、個人と法人で異なるだけでなく、選択するスキームによっても大きく異なります。適切な税務対応を行うためには、それぞれのケースに応じた税金の種類とその特性を理解しておくことが重要です。以下では、個人と法人の違い、そして税務上の注意点について解説します。

個人と法人の違い

M&Aにおける税務処理では、個人と法人の違いを明確に理解することが必要です。それぞれの税金の種類と特徴について見ていきます。

個人にかかる税金

個人がM&Aに関与する場合、以下の税金が課せられます。

所得税

所得税は、個人の譲渡所得に対して課税されます。株式譲渡による所得や事業譲渡に関連する所得が対象です。譲渡所得は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額となります。

住民税

住民税は、所得税に基づいて課税される地方税です。所得税と同様に、譲渡所得に対して課税されます。

復興特別所得税

東日本大震災の復興財源として導入された特別税です。所得税額の2.1%が課税されます。

例えば、個人が株式を譲渡した場合、その譲渡所得に対して所得税、住民税、復興特別所得税が課されます。これにより、総合的な税負担は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)となります。

法人にかかる税金

法人がM&Aに関与する場合、以下の税金が課せられます。

法人税

法人の所得に対して課税されます。企業が株式譲渡や事業譲渡を行った場合、その譲渡益が法人税の課税対象となります。

地方法人税

地方公共団体が課税する法人税の一種です。法人税額に応じて計算されます。

法人住民税

法人の所得に基づいて課税される地方税です。都道府県や市区町村ごとに異なりますが、一般的には法人税額に連動して計算されます。

事業税

法人の事業活動に基づいて課税される税金です。法人の所得や資本金などに応じて計算されます。

特別法人事業税

一定の事業規模を持つ法人に対して課される特別な事業税です。法人の所得に対して追加的に課税されます。

法人の場合、税率は規模や所得によって異なりますが、一般的には実効税率で約30%となります。例えば、法人が事業譲渡を行い、1億円の譲渡益を得た場合、その譲渡益に対して約3,000万円の税金が課されます。

税務上の注意点

M&Aの手法によって、税務上の取り扱いが大きく異なります。また、特に海外企業とのM&Aの場合には、国際的な税務リスクが発生するため、十分な注意が必要です。

M&Aの手法によって異なる税務

M&Aには様々な手法があり、それぞれ税務上の取り扱いが異なります。代表的な手法として、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併、株式交換・株式移転があります。

株式譲渡

株主が株式を譲渡することで所有権が移転します。譲渡所得に対して課税されるため、個人の場合は所得税と住民税、法人の場合は法人税が課されます。

事業譲渡

会社の事業の一部または全部を譲渡します。譲渡益に対して法人税が課され、個別資産の譲渡については消費税や不動産取得税が発生する場合もあります。

会社分割

会社の権利義務を分割して既存の会社または新設会社に承継させる手法です。組織再編税制の適用により、一定の要件を満たすと課税が繰り延べられる場合があります。

合併

会社が他の会社と合併する手法です。適格合併の要件を満たすと課税が繰り延べられ、税務上のメリットが得られます。

株式交換・株式移転

持株会社を設立し、株式を交換または移転する手法です。組織再編税制の適用により、一定の要件を満たすと課税が繰り延べられます。

これらの手法を選択する際には、それぞれの税務上のメリットとデメリットを考慮し、最適なスキームを選定することが重要です。

海外企業とのM&Aの場合の税務

クロスボーダーM&Aでは、国内企業と海外企業が関与するため、国際税務上のリスクが伴います。特に以下の点に注意が必要です。

移転価格税制

関連企業間の取引価格が市場価格から乖離している場合、税務当局が適正な価格を算定し、課税所得を再評価します。これにより、追加の課税が発生することがあります。

タックスヘイブン対策税制

低税率国に所在する海外子会社の所得が日本国内で課税される場合があります。これにより、租税回避を防止するための規制が強化されています。

二重課税の防止

国際間取引では、同じ所得に対して二重に課税されるリスクがあります。これを防止するため、租税条約や外国税額控除の適用を検討する必要があります。

例えば、日本の企業がアメリカの企業を買収する場合、両国の税法を考慮した上で、適切な税務処理を行う必要があります。特に、移転価格税制やタックスヘイブン対策税制の適用を受ける可能性があるため、事前に詳細な税務デューデリジェンスを実施し、専門家の助言を得ることが推奨されます。

株式譲渡における税務

Man touching security scanning of digital programs. Surveillance of Personal database with Futuristic digital processing of biometric identification fingerprint scanner.

株式譲渡はM&Aにおける代表的な手法の一つです。株式譲渡に関する税務の理解は、譲渡を行う際の税務リスクを軽減し、適切な節税対策を行うために重要です。以下では、株式譲渡の基本から具体的な税金の種類、計算方法、そして節税方法まで解説します。

株式譲渡の基本

株式譲渡は、既存の株主が自らの持つ株式を新たな株主に売却することで所有権を移転する手法です。このスキームは、株主間の契約によって行われ、会社の経営権が移動するため、M&Aにおいて最も一般的な方法の一つとされています。

株式譲渡の際には、売却する株式の数や価格、譲渡条件などを明確にする契約書が作成されます。この契約書は、取引の透明性を確保し、将来的な紛争を防ぐためにも重要です。また、株式譲渡が完了すると、譲渡先の株主が会社の新たな所有者となり、経営に関与する権利を得ることになります。

株式譲渡にかかる税金

株式譲渡にかかる税金は、譲渡人が個人か法人かによって異なります。それぞれのケースについて見ていきましょう。

個人の場合

個人が株式を譲渡する場合、主に以下の税金が課されます。

譲渡所得税

株式譲渡により得た利益に対して課される税金です。譲渡所得は、譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額となります。所得税は、この譲渡所得に対して15%の税率が適用されます。

住民税

住民税も譲渡所得に対して課されます。税率は5%で、譲渡所得に対して一律に課されます。

例えば、個人が株式を1億円で譲渡し、取得費が2,000万円、譲渡費用が500万円かかった場合、譲渡所得は7,500万円となります。この場合、譲渡所得税と住民税を合わせた総税額は、7,500万円の20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)となり、約1,523万円となります。

法人の場合

法人が株式を譲渡する場合、以下の税金が課されます

法人税等

法人の所得に対して課される税金です。株式譲渡により得た利益は法人の課税所得に含まれ、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税などが課されます。法人税率は企業の規模や所得により異なりますが、一般的には約30%です。

例えば、法人が株式譲渡により1億円の譲渡益を得た場合、法人税等の合計税率が30%であれば、約3,000万円の税金が課されます。

株式譲渡の計算方法

株式譲渡における譲渡所得は以下の計算式で求められます。

1. 取得費=取得金額 + 付随費用

2. 譲渡所得金額=譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)

具体的な例で見てみましょう。個人が1億円で株式を譲渡し、取得費が2,000万円、譲渡費用が500万円かかった場合

・取得費:2,000万円

・譲渡所得金額:1億円 -(2,000万円 + 500万円)=7,500万円

・税金:7,500万円 × 0.20315(20.315%)=約1,523万円

これにより、最終的に手元に残る金額は、1億円 – 2,500万円(取得費 + 譲渡費用) – 1,523万円(税金)=約6,977万円となります。

節税方法

株式譲渡に伴う税負担を軽減するための節税方法として、以下の手法が挙げられます。

退職金の活用

株式譲渡を行う際に、譲渡企業の役員や従業員が退職することが想定されます。退職金は、税務上優遇されており、所得控除が適用されるため、退職金を支払うことで税負担を軽減することが可能です。例えば、創業者が退職金として4,000万円を受け取り、残りの譲渡対価を6,000万円とすることで、譲渡所得を減少させることができます。この場合、譲渡所得は6,000万円 – 3,000万円(取得費)=3,000万円となり、税金も減少します。

経費の控除

株式譲渡に関連する費用(M&Aの交渉費用や弁護士費用など)は、譲渡所得から控除することができます。具体的に算定できない場合には、対価の5%を概算取得費として控除することが可能です。このように、関連経費を適切に計上することで、譲渡所得を減少させ、結果として税負担を軽減することができます。

これらの節税方法を活用することで、株式譲渡に伴う税負担を軽減し、手元に残る資金を増やすことが可能です。税務上の適切な対応を行うためには、税理士などの専門家の助言を得ることが重要です。

事業譲渡における税務

事業譲渡は、企業の一部または全体を売却する方法としてM&Aで広く利用されています。このセクションでは、事業譲渡に関する税務について解説します。事業譲渡の基本から税金の種類、計算方法、そして節税方法までを具体的に見ていきましょう。

事業譲渡の基本

事業譲渡とは、ある会社(譲渡会社)がその事業の一部または全部を別の会社(譲受会社)に売却することを指します。このスキームは、株式譲渡とは異なり、会社そのものの株主が変わるのではなく、会社が所有する事業や資産が移転される形で行われます。

事業譲渡の際には、譲渡対象となる事業や資産の範囲、譲渡価格、譲渡条件などが明確に定められた契約が結ばれます。事業譲渡は、売買の性質を持つ契約であり、譲渡する資産や負債、従業員などの詳細がすべて取り決められます。これにより、譲渡会社と譲受会社の間で明確な責任分担が行われることになります。

事業譲渡にかかる税金

事業譲渡に伴う税金は、主に以下の種類があります。これらの税金を適切に理解し、計算することが重要です。

法人税等

事業譲渡における最大の課税対象は法人税です。譲渡会社が事業を売却して得た譲渡益に対して課税されます。法人税等には、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税、特別法人事業税などが含まれます。譲渡益は、譲渡価格から譲渡する資産・負債の帳簿価額を差し引いて算出されます。

消費税、不動産取得税、登録免許税

事業譲渡には以下の税金も関わってきます。

消費税

譲渡する資産のうち、消費税課税対象のものが含まれている場合には、消費税が課されます。例えば、棚卸資産や設備などが該当します。

不動産取得税

譲渡対象資産に土地や建物が含まれている場合、その取得に対して不動産取得税が発生します。

登録免許税

不動産の所有権移転登記を行う際に課される税金です。譲渡対象に不動産が含まれる場合、その名義変更のために必要となります。

事業譲渡の計算方法

事業譲渡における譲渡益の計算は、以下の手順で行います。

1. 譲渡益の計算

譲渡価格から譲渡する資産・負債の帳簿価額を差し引いて譲渡益を算出します。

2. 税金の計算

譲渡益に対して法人税等の実効税率を乗じて、課税額を計算します。

具体例を用いて説明します。

例えば、ある会社が1億円で事業を譲渡し、譲渡する資産の帳簿価額が6,000万円、負債が2,000万円だったとします。この場合、譲渡益は以下のように計算されます。

・譲渡益:1億円 -(6,000万円 – 2,000万円)=6,000万円

次に、この譲渡益に対して法人税等の実効税率30%を適用すると

・税金:6,000万円 × 30% = 1,800万円

この結果、譲渡会社は1,800万円の法人税等を支払うことになります。

節税方法

事業譲渡において税負担を軽減するためには、以下の節税方法が有効です。

資産調整勘定の活用

譲受会社が事業譲渡により取得した資産のうち、譲渡価額を上回る部分を「のれん」として計上し、こののれんを資産調整勘定として5年間で均等償却します。これにより、譲受会社はのれんの償却費を法人税の算定上損金に算入することができ、税負担を軽減することができます。

例えば、譲受会社が1億円で事業を取得し、そのうちのれんとして2,000万円が計上された場合、この2,000万円は5年間で均等に償却され、年間400万円が損金として計上されます。

グループ法人税制の適用

完全支配関係にある法人間で事業譲渡を行う場合、一定の要件を満たすとグループ法人税制が適用され、譲渡損益が繰り延べられます。これにより、グループ内での資産移転に対して即時に課税されることを避けることができます。

例えば、親会社が子会社に対して事業を譲渡し、親会社と子会社が完全支配関係にある場合、グループ法人税制の適用により、譲渡益の課税を将来に繰り延べることが可能となります。

以上のように、事業譲渡における税務は複雑であり、多岐にわたる税金の種類と計算方法を理解することが重要です。また、適切な節税方法を活用することで、税負担を軽減し、事業譲渡をより効果的に進めることが可能となります。税理士などの専門家の助言を得ながら、慎重に対応することが推奨されます。

会社分割・合併における税務

会社分割や合併は、企業の再編成を行う上で重要な手法です。これらの手法を用いることで、企業は効率的な経営や戦略的な事業再編を実現することができます。しかし、これらの手法に伴う税務上の取り扱いを理解することが不可欠です。以下では、会社分割や合併の基本から、それに伴う税金、そして具体的な節税方法について解説します。

会社分割の基本

会社分割は、企業がその権利義務の一部を既存の会社または新設会社に承継させる手法です。会社分割には主に2つの種類があります。吸収分割と新設分割です。

吸収分割

吸収分割では、分割する会社(分割会社)がその権利義務の一部を既存の会社(承継会社)に承継させます。この際、分割会社はその権利義務を引き継ぐため、組織再編の一形態として利用されます。吸収分割は、既存の企業間での資産・負債の移転をスムーズに行うための手法として広く用いられています。

新設分割

新設分割では、分割会社がその権利義務の一部を新たに設立する会社(新設会社)に承継させます。この手法は、新たな事業部門を独立させたり、戦略的な子会社を設立するために用いられます。新設分割は、分割会社が新設会社に対して株式を交付する形で行われるため、企業の組織再編を効果的に行うことができます。

合併の基本

合併は、2つ以上の会社が1つの会社になる手法です。合併には主に2つの種類があります。吸収合併と新設合併です。

吸収合併

吸収合併では、合併する2つの会社のうち一方(存続会社)が他方(消滅会社)のすべての権利義務を引き継ぎます。消滅会社は法人格を失い、存続会社に統合されます。吸収合併は、存続会社が消滅会社のすべての資産・負債を引き継ぐため、組織再編を迅速に進めることができます。

新設合併

新設合併では、合併する2つの会社が共同で新たな会社(新設会社)を設立し、その新設会社にそれぞれの権利義務を承継させます。この手法は、両社の対等な統合を実現するために用いられます。新設合併は、既存の会社が消滅し、新設会社がそれらを継承する形で行われるため、新たな企業体として再スタートを切ることができます。

会社分割・合併にかかる税金

会社分割や合併においては、組織再編税制が適用されることがあります。この税制は、企業の再編が税務上適格と認められるかどうかによって、課税方法が異なります。

組織再編税制の適用

組織再編税制は、会社分割や合併が純粋に事業目的で行われる場合、特定の要件を満たすことで課税を繰り延べる制度です。これにより、再編行為が取引とみなされず、税金の負担が軽減されます。

完全支配関係と親子会社関係

組織再編税制が適用されるためには、完全支配関係や親子会社関係が維持されることが重要です。

完全支配関係

一方の会社が他方の会社を100%支配している場合。この場合、株式以外の対価が交付されず、再編後も支配関係が続くことが条件です。

親子会社関係

一方の会社が他方の会社の50%以上の株式を所有している場合。この場合、主たる資産・負債の移転や従業員の継続雇用など、追加の要件が必要です。

節税方法

会社分割や合併における税務負担を軽減するためには、以下の節税方法が有効です。

税制適格要件の活用

税制適格要件を満たすことで、会社分割や合併における課税を繰り延べることができます。具体的な要件としては、完全支配関係の維持、資産・負債の承継、従業員の継続雇用などが挙げられます。これにより、再編行為が実質的に取引とみなされず、課税が発生しないため、企業の負担を軽減することができます。

例えば、親会社が完全子会社と合併する場合、合併前の支配関係が維持され、合併後も親子関係が続く場合には、適格合併として課税が繰り延べられます。

繰越欠損金の引継ぎ

適格再編の場合、消滅会社の繰越欠損金を存続会社に引き継ぐことが可能です。これにより、将来の課税所得から繰越欠損金を控除することができ、税負担を大幅に軽減することができます。

例えば、消滅会社が過去の事業活動で生じた欠損金を保有している場合、その欠損金を存続会社が引き継ぐことで、合併後の利益に対する課税を減少させることができます。

以上のように、会社分割や合併における税務は複雑であり、適切な対応が求められます。税制適格要件を満たすことで、税務負担を軽減し、企業再編を効果的に進めることができます。税理士や弁護士などの専門家の助言を得ながら、慎重に対応することが重要です。

M&Aに関する最新の税制改正

M&Aにおける税務は常に変化しており、最新の税制改正を理解することは非常に重要です。特に、逆さ合併や三角合併に関する税制改正は、M&Aの実務に大きな影響を与えるため、詳細に把握しておく必要があります。ここでは、これらの税制改正の概要と適格要件の変更点、さらにその他の重要な税制改正について解説します。

逆さ合併と三角合併

逆さ合併と三角合併は、企業再編の手法として重要な位置を占めています。最新の税制改正では、これらの手法に関する適格要件が見直され、より柔軟に対応できるようになりました。

税制改正の概要

逆さ合併とは、親会社が子会社に吸収される形の合併を指します。この手法は、子会社が存続会社となり、親会社が消滅会社となるため、従来の合併の常識とは逆の方向で行われます。逆さ合併は、子会社が重要な許認可や特定の事業資産を保有している場合に有効です。

三角合併とは、合併に際して消滅会社の株主に対して存続会社の親会社の株式を交付する方法を指します。これにより、消滅会社の株主が存続会社の株式ではなく、その親会社の株式を受け取ることになります。

適格要件の変更点

最新の税制改正では、逆さ合併および三角合併に関する適格要件が緩和されました。従来、逆さ合併に関しては、支配関係継続要件が厳格であり、非適格株式交換として扱われるケースが多く見られました。しかし、税制改正により、合併直前までの支配関係を満たすことで、適格株式交換と認定されるようになりました。これにより、企業はより柔軟に再編戦略を立案できるようになりました。

三角合併に関しても、従来は存続会社とその親会社との間に直接の100%支配関係が必要でしたが、改正後は間接的な100%支配関係が認められるようになりました。これにより、企業はグループ内での合併をよりスムーズに進めることができます。

その他の重要な税制改正

最新の税制改正には、逆さ合併や三角合併に関する変更点以外にも、M&Aや事業承継に影響を与える重要な改正が含まれています。以下では、その中でも特に注目すべき2つの改正について説明します。

個人版事業承継税制

個人版事業承継税制は、事業承継に伴う相続税および贈与税の納税を猶予する制度です。この税制は、個人事業主が事業を次世代に引き継ぐ際の税負担を軽減することを目的としています。

具体的には、事業承継を行う個人事業主が一定の条件を満たす場合、相続税や贈与税の納税が猶予されます。この制度は、後継者が事業を継続する意思を持ち、承継後も一定期間事業を継続することが条件となります。これにより、中小企業の事業承継が円滑に行われ、地域経済の活性化につながることが期待されています。

特別法人事業税の創設

特別法人事業税は、一定規模以上の法人に対して課される新たな税金です。この税制は、企業の規模に応じた公平な税負担を実現することを目的としています。

特別法人事業税は、法人税に追加して課されるもので、企業の事業規模や所得に応じて課税されます。これにより、大規模な企業が適正な税負担を担うことが求められ、中小企業との税負担の公平性が図られます。

例えば、特定の事業年度において一定の所得を超える法人に対しては、その超過分に対して特別法人事業税が課されることとなります。この税制は、企業の規模によって異なる税率が適用されるため、詳細な計算が必要です。

M&Aで注意すべき税務リスク

M&Aは企業にとって成長戦略の一環として重要な手段ですが、そのプロセスには多くの税務リスクが伴います。これらのリスクを適切に管理し、最小限に抑えることが成功の鍵となります。ここでは、過去の税務処理のリスク、受贈益や寄附金の認定リスク、そして専門家への相談の重要性について解説します。

過去の税務処理のリスク

M&Aを実施する際に最も大きなリスクの一つが、過去の税務処理に関する問題です。買収対象企業(売り手企業)の過去の税務処理に誤りや不正がある場合、それが後になって明らかになると、買収後の企業に大きな影響を与える可能性があります。

税務調査による追徴課税のリスク

税務調査は、過去の税務処理の正確性を確認するために行われます。もしも売り手企業が過去に税務上の誤りや不正を犯していた場合、税務調査によってこれが発覚し、追徴課税が発生することがあります。追徴課税は、過去の未納税額に加えて延滞税や加算税が課されるため、その金額は非常に大きくなる可能性があります。

例えば、過去の売上高を過少に申告していた場合、その差額に対して追徴課税が行われます。これにより、買収後に多額の税金を支払うことになり、企業のキャッシュフローや財務状況に重大な影響を及ぼすことがあります。

受贈益や寄附金の認定リスク

M&Aの取引において、適正な価格での取引が行われない場合、税務上のリスクが発生します。特に、取引価格が適正価格を大きく下回る場合や、過大な寄附金とみなされる場合には、受贈益や寄附金として税務上認定される可能性があります。

適正価格と税務リスク

取引価格が適正価格よりも低い場合、税務当局はその差額を受贈益として認定することがあります。受贈益は企業の収益として扱われ、課税対象となります。一方、適正価格よりも高い価格で取引が行われた場合、その差額は寄附金とみなされ、買収企業において損金不算入となる可能性があります。

例えば、親族間での株式譲渡において、通常の市場価格よりも低い価格で取引が行われた場合、税務当局はその差額を受贈益として課税します。これにより、買収後の企業が追加の税負担を強いられることになります。

専門家への相談の重要性

M&Aに伴う税務リスクを最小限に抑えるためには、税理士や弁護士などの専門家の助言を受けることが不可欠です。専門家の知識と経験を活用することで、複雑な税務問題に対処し、適切な税務戦略を立案することができます。

税理士や弁護士の活用

税理士は、税務の専門知識を持ち、企業の税務リスクを評価し、適切な対応策を提案する役割を担います。M&Aの過程では、デューデリジェンスを通じて売り手企業の税務状況を詳細に調査し、潜在的な税務リスクを特定することが重要です。税理士の助言を受けることで、事前に問題を発見し、適切な対応策を講じることができます。

弁護士は、M&Aの契約書作成や交渉の過程で重要な役割を果たします。税務リスクに関連する条項を契約書に明記し、売り手企業の責任を明確にすることで、将来的なリスクを回避することができます。また、税務調査や訴訟が発生した場合には、弁護士の専門知識を活用して適切な対応を行うことが重要です。

例えば、ある企業が他社を買収する際に、税理士と弁護士の協力を得て詳細なデューデリジェンスを実施し、過去の税務リスクを特定したとします。その結果、買収契約において適切な保証条項を設け、将来的な追徴課税リスクを売り手企業に転嫁することができました。このように、専門家の助言を受けることで、税務リスクを効果的に管理し、M&Aの成功を確実にすることができます。

以上のように、M&Aに伴う税務リスクは多岐にわたりますが、過去の税務処理のリスク、受贈益や寄附金の認定リスク、そして専門家への相談の重要性を理解し、適切な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。税理士や弁護士の専門知識を活用し、慎重に対応することが成功の鍵となります。

まとめ: 税務知識を武器にM&Aを成功させよう

M&Aは企業の成長や戦略的再編のために重要な手段ですが、その過程での税務リスクを適切に管理し、節税対策を講じることが成功の鍵となります。本記事で解説した通り、株式譲渡や事業譲渡、会社分割・合併など、それぞれの手法に伴う税務の基本とリスクを理解することが重要です。また、最新の税制改正に対応し、専門家の助言を積極的に活用することで、複雑な税務問題に対処し、最適な戦略を立案することができるでしょう。

1分査定を試す

1分査定を試す

相談する

相談する